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スポーツ競技としてのストリートダンスが持つ大きな可能性と問題点について

今回は日本医師会公認健康スポーツ医である著者が、

今後応援していきたいと考えているスポーツ競技、ストリートダンスについてお話させていただきます。

ストリートダンス?それってスポーツなの…?

そういった疑問を抱くであろう、普段ストリートダンスになじみのない皆さんに向けて

●今現在のストリートダンスシーンの盛り上がり

●スポーツ競技としてのストリートダンス

●ストリートダンスが抱える今後の問題点

についてなるべくわかりやすくお伝えしようと思います。

この記事を読み終わった後には、

今後ストリートダンスがどのようにスポーツの世界に参加し、貢献していけるか

きっとわかると思いますので、ダンサーの皆さんはもちろん、スポーツが好きな方は是非ご一読お願いします。

1.ストリートダンスの発展

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みなさん、日本にダンスブームが到来しているという空気を感じませんか??

学生時代からストリートダンスに親しみ、社会人になった今も踊り続けている著者も

「最近は日本でも老若男女ダンスが広く認知されてきているな〜」

と日々感じています。

テレビをつければダンスを取り入れたキャッチ-なCMが流れ、若者の間ではTikTokが流行するなど、ダンスはメディア業界やSNS上でも欠かせないコンテンツとなってきています。
(星野源の『うちでおどろう』は社会現象にもなりました!)

具体的な数字を用いて説明しますと、現在日本のストリートダンス競技人口は600万人と言われています!

2012年には学校でのダンスの授業は必修化され、

2018年にはついにユースオリンピック競技大会に初めてブレイキン(ストリートダンスのジャンルの1つ)が導入されました!

2024年パリ開催予定のオリンピックでも、ブレイキンがオリンピック競技となるのか注目されています。

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ここまでの流れを受けて、今後もストリートダンスの競技人口は増加していくと予想されますね。

2.医学的に見たストリートダンスが持つ可能性

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さて、「ダンスは体にいいらしいよ。」と皆さん聞いたことがあると思います。

これまではそういった経験則で語られることの多かったダンスですが、

近年の科学や医療の進歩によって様々な機械や手法を用いて解析することが進められています。

そして解析が進んでいくなかで医学的にもダンスが身体におよぼす影響は実に大きく、ダンスは運動機能や脳の機能の発達や病気の治療にも適していることがわかりました。

また、ダンスを踊るだけでなく、ネット上でダンスを視聴することにも良い効果があることが証明されてきました。

動きがそろっているものを見ると、脳はすごく気持ちいいと感じるので、視聴者の幸せホルモンセロトニンの分泌に大きく関与しています。

今、医学の世界においてもダンスの必要性は急上昇しています

ダンスは各専門家が熱心に取り組んでいる大きなテーマの一つとなってきているのです。

3.ストリートダンスが抱える問題点

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近年スポーツ競技としても盛り上がりを見せ、医学的にも効果が証明されつつあるストリートダンス

しかし、スポーツ競技としては歴史が浅いことにも関連して、大きな問題点が1つ存在します。

それは、ストリートダンサーに対する医学的なサポートが足りていないことです。

例えばサッカーや野球などのメジャーなスポーツでは、

それぞれのスポーツを経験したことのあるような医師や療法士、トレーナーが中心となって、

プロ選手はもちろん若手選手や子供たちまで怪我の予防から治療までしっかりとフォローされています。

一方でストリートダンスを専門とした医療従事者はその競技人口に対して圧倒的に少ないので、専門的な治療やサポートがされていないのが現状です。

日本のストリートダンスの傷害調査について調べた論文によると、

障害の発生率は0.56 / 1000 player-hours(2000人のダンサーが1時間踊ったら1人は怪我をするという事!)とかなり高いと報告されています。
受傷部位としては足関節,足部が最も多いという事がわかっています。

また、ストリートダンスそれぞれのジャンルごとに多い受傷部位は異なっているので、

サポートする側のスタッフには医学的な知識はもちろんストリートダンスのジャンルについても詳しい知識を持っておく必要があるといえます。

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インストラクターやそれを目指すストリートダンサーたちにとって、ストリートダンスは命がけです。

著者は、真剣に取り組むからこそ生じてしまった障害や外傷によって思うようなパフォーマンスが出来なくなってしまった方々をたくさん見てきました。

体を酷使するストリートダンサーも、他の競技の選手同様もっと全力でサポートできる医師になりたい!

そんな思いを込めて著者は日本医師会公認健康スポーツ医の資格を取りました。

4.スポーツ競技としてのストリートダンスの今後

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今後ストリートダンス界が大きくなっていくうえで欠かせない医学的なサポート。

著者自身もダンサーに向けた健康維持やケガ予防のオンラインレクチャーをはじめとする勉強会を開催してまいりましたが、まだまだその必要性については周知できていないのが現状です。

著者自身の影響力は本当に小さいものです。

ですが、この記事を読んで共感してくださったダンサーの方々やレッスンを持つインストラクター、ダンススタジオを運営するオーナーの方々が

ダンサーに対する医学的サポートの必要性をシェアしてくだされば、

ダンサーを支援する大きなムーブメントがきっと起きると信じています。

また、スポーツを愛するすべての方々が、ストリートダンスが持つ大きな可能性について知ってくださればストリートダンサーを守っていく運動に協賛してくださるのではないかと願っています。

すこしでも今回の記事を読んで共感してくださった方は、本記事をシェアしていただけると嬉しいです。



救急の現場を少しずつ知ったうえで、一般の方々との感覚のズレが少ない今だからこそかける文章を心がけて。 皆様のサポートは、多くの方々に届くような想いが書けるよう、自己研鑽にあてさせていただき記事として還元できたらと考えています。 共感いただけた方は何卒よろしくお願いいたします。