【本の感想】『夜空にひらく』
今回、紹介する本はいとうみくさんが書いた『夜空にひらく』です。
あらすじ
アルバイト先で暴力事件を起こし、家庭裁判所に送致されたのち試験観察処分となった、鳴海円人。
補導委託先に選ばれたのは、煙火店(花火の製造所)を営む、深見静一の家だった。
深見と深見の母まち子、住み込みで働く双子の花火師、健と康と同じ屋根の下で暮らすうちに、円人は自分の居場所を見つけていく。
本の感想
はじめのうち、円人の感情が読めなくて怖い人なのかなと思いながら読んだ。
自分がやったわけではない罪を疑われたあげく、バイトを辞めさせられ、その上、それは大学生がついた嘘だと分かりイラッとしたのは分かる。
きっと説明したところで信じてもらえないという気持ちだったのだろう。
家庭環境がお世辞にもいいとは言えない場所で育ったから、自分の気持ちを伝えて理解してもらうという考えにもしかしたら至らなかったのかもしれない。
そんな円人だが、深見さんの職場で生活していくうちに人間らしさを手に入れる。
双子の日置兄弟にまち子さんと深見さん。
彼らと一緒に過ごし、コミュニケーションをとることで円人の様子が変わってきたことが分かった。
きっと誰にも迷惑をかけない生き方をしよう。
一人でだって生きていける力が欲しいと心の底から望んでいた円人だけど、人といる温かさを知る。
彼がすさんだ心から解放し、再生していく姿を見てこれからの成長が楽しみになった。
りっぱな花火職人になったときには、祖母を招待して花火を見せるに違いない。
印象に残った言葉
最後に
人は誰しも間違える。
この物語では円人が主人公として動いていくけれど、深見さんの今後も気になるところだ。
深見さんの家族の立場だったら、加害者を受け入れる補導委託先をよしとするだろうかと考えた。
まだ深見さんのような過去があったわけでもないし、補導委託先として受け入れたこともないから実感がわかない。
けれど、許せるのだろうか。
怖くはないのだろうか。
どうしても、こちらからの想像で相手を見てしまう気がした。
そういう意味では、受け入れようとする深見さんはスゴイと思った。
今後、深見さんは元奥さんと和歌さんと少しずつでも話し合って和解していけたらと思った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?