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【本の感想】『給食が教えてくれたこと 「最高の献立」を作る、ぼくは学校栄養士』

今回、紹介する本は松丸奨さんが書いた『給食が教えてくれたこと 「最高の献立」を創、ぼくは学校栄養士』です。

あらすじ

「給食」と聞くと、みなさんはどのようなイメージをもちますか。お気に入りのメニューや、友達と一緒に楽しく食べたことを思い出して、なつかしい気持ちになる方も多いのではないでしょうか。

実は、徹底的な衛生管理のもと子どもたちに栄養バランスの取れた食事を提供する日本の給食は、海外の教育関係者からも高く評価されています。

そんな小学校の給食現場で、学校栄養士として活躍する松丸奨(まつまる・すすむ)さん。「子どもたちに最高の給食を届けたい」という想いで、日々奮闘されています。

小学生のころ、給食が苦手だった松丸さんは、あるきっかけで学校栄養士になることを夢みるように。男性の栄養士が今以上に少なかった当時、さまざまな壁に直面しながらも、持ち前の情熱と行動力でそれらを乗り越え、夢を実現されます。2013年には男性栄養士として初めて全国学校給食甲子園で優勝し、現在その活躍は世界にも広がっています。

情熱・行動力・人柄で学校栄養士として道を切り拓いていく松丸さんのエピソードが詰まったこの書籍は、子どもだけでなく、それぞれのフィールドで頑張っている大人にも勇気を届けてくれます。

エピソードの中には、

☆身近だった給食にはこんな工夫があったのか、栄養士や調理師のみなさんはこんなに苦労をされてつくっているのかといった給食の奥深さ。

☆実際に一食いくらで給食がつくられているのか、食材をどのように調達されているのかといった現場で活躍されている松丸さんならではの裏話。

☆令和の世界の食料事情・SDGsの考え方。

など、いろいろな観点で食についての興味が広がるお話も盛り込まれています。ぜひお手にとっていただけると幸いです。

本の感想

栄養士というと女性のイメージが強い。
本書では、男性の学校栄養士が子どもたちのために美味しい給食を届けるための奮闘が描かれている。

家庭では女性がご飯を作るけれど、レストランで調理するのは男性が多い。
それを知っているはずなのに、栄養士=女性のイメージがあるため、著者の松丸奨さんも男性でできるのという偏見の目で見られる。
私も職場で出会った栄養士の方は女性が多かったけれど、男性も中にはいた。

そんな偏見の目にも負けず、松丸奨さんは努力し続ける。
給食をもっと美味しく作るために様々な努力を続けたことが書かれている。
給食を作るうえで、栄養価の基準や予算が決められている。
その数字の中で、美味しいを諦めずに作るのは相当難しいと思う。
子どもが好きそうなメニューばかりを毎日出せない。
美味しくするために食材にお金をかけられない。
与えられた数値で調味料を入れないといけないから、味が薄くなってしまう。
などなど、凝ったものを作るにも数が多いから、時間がかかりすぎてしまわないようにしないといけない。

そのために松丸奨さんは実際に、調理員さんにまかせるだけでなく家で給食センターと同じ環境で作り、試行錯誤をしている。
調理員さんにお願いするためには自分で実際に動いて、感じたことを伝えないといけない。
それは分かっていても、なかなかできないことだと思う。
けれど、調理員さん目線にも立って給食を作る栄養士さんって素敵だと思った。

また食材を手に入れるために実際に農家へ行って、自分の目でその農家でとれる野菜を見に行っているのを知り、なんて勉強熱心なんだろうと思った。
子どもたちの笑顔を見るためにどうしたらいいのだろうと考え、そのためにはなにをしたらいいのか考え、実際に行動に移す。
この人が作る給食を食べることができる子どもって幸せだろうって思いました。

印象に残った言葉

できない献立なんて、きっとありません。
作りたい、という思いがあるなら、どうすればできるかを考えればいいだけ。
献立の常識はやぶれます。

42p

なら、その景色を見るために仕事をするんだよ。仕事をすれば、子どもたちの笑顔が見られる。それがうれしいと思えるなら、この仕事は向いているよ。みんなの笑顔が仕事の成果だなんて、素敵じゃないか。大丈夫、一年後には、きみは成長している。そのさらに一年後には、わからないことはぐっと少なくなっている。それが経験なんだ。きっと大丈夫だ

82p

この土地で作ったおいしい野菜なんだから、この土地に住む人たちに食べてもらいたいじゃないか。高級で手がとどかないものじゃなくてさ、みんなに愛される野菜にしたいんだよ。きみを見ていたら、給食で子どもたちに食べてもらうっていうのも、同じことだ思ってさ

120p

栽培にちょっと手間がかかるくらい、大したことないよ。自分の栽培技術を上げればいいんだから。種も貴重と言われてはいるけれど、自分で育てて種も収穫すれば、種代もかからない。だからふつうの野菜と同じ値段でいいんだよ。すべては食べてくれる人のため。それをかなえられるかは、自分次第だよ

120p

江戸時代に飢饉が起こって人々が苦しんでいたとき、のらぼう菜だけはすくすくと育ち、人々はそれを食いつないで飢えをしのいだそうです。
まさに人々を救った、ヒーローのような野菜です。

121p

給食なのに、ではありません。給食だから、です。給食は子どもたちの人生を支えているものです。だから、本気でやるんですよ

142p

長年外国で生活していた子に、日本の「当たり前」が通じないのは当然です。
食や栄養について学ぶ「食育」は、日本以外の国ではめずらしく、海外の子どもたちは自分の食べているものが体にどう影響するのか、知らないこともめずらしくはありません。

151p

世界には、食べたくても食べられない人たちがたくさんいるんだよ。だから苦手なものでもがんばって食べてみてね

155p

手に入るなら、それだけは必ず食べるんだよ。動く力になるから。ちゃんと食べれば、人生は変わるから。食べることで、きみたちのしたいことが実現できるようになる。だから、食べることをあきらめないで

157-158p

「残さず食べる」というただそれだけのことが、きみ自身の力となり、世界をよりよい方へと導く力となる。そのことに気づいてほしいと思います。

167p

最後に

学校栄養士の仕事は目に見えて分かるものではない。
毎月、届く献立表を見るぐらいしか接点がないのではないだろうか。
献立をたてるまでに様々な努力をしていることがこの本を通して、知ることができた。

また、この本を通して知ったのは「全国学校給食甲子園」の存在だ。

地場産物を活かした献立で勝負する。
栄養士が活躍する場が設けてあることを知った。

また、日本に限らず海外へ行って食育の大切さを著者が伝えたと聞き、子どもたちに食べることの大切さ、楽しさを伝えるためにいろいろなことを経験して還元しているんだなと思った。

きっとどの職業も誰かのためを思ってしていると思う。
そのためには何ができるかを考えていきたい。
難しいこともある。
けれど、無理なことばかりに目を向けるのではなく、どうしたらできることに近づけるのかを考えられるようになりたい。

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