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大宮ネットカフェ立てこもり事件公判傍聴記・2022年7月12日(被告人・林一貴)

2022年7月12日
さいたま地裁第二刑事部
202号法廷
事件番号・令和3年(わ)第868号
罪名・逮捕監禁致傷(変更後の罪名、逮捕監禁致傷、強制性交等致傷)
被告人・林一貴
裁判長・佐々木一夫
書記官・大浦晃司

9時10分の締め切りまでに、35枚の傍聴券に、41人以上来た。
入廷前に、荷物預かり、金属探知機によるチェックが行われた。その後、傍聴人は法廷前に並ばされた。並んでいる傍聴希望者は、記者らしき人が十数名いた。
検察官三人が、専用のドアを通って、法廷内に入っていく。若いショートカットの女性であるアラ検事、髪の短い青年、七三分けの青年の三人。
TVカメラが法廷から出てくる。
眼鏡をかけた痩せた中年男性の横田弁護士と、がっしりした体格の30代ぐらいの男性である岡田弁護士も、法廷内に専用のドアを通って入廷する。横田弁護士は、今日は青い半袖のワイシャツであり、岡田弁護士は、変わらず白い長袖のワイシャツであった。
その直後、10時の開廷予定であったが、10時30分に開廷が遅れると、職員からアナウンスされた。唐突である。どのような事情があるのか?説明はされなかった。その後、法廷前の列から離れる人が半数ほど。開廷までの間、しきりに、職員が法廷を出入りしている。
10時10分に、法廷内の撮影を行うとのことで、ビデオカメラが法廷の中に入っていった。
10時15分、傍聴人たちは入廷を許される。またも、10席ほどが空席であった。傍聴席の無駄遣いはやめてほしい。
記者席は13席指定されており、12席が埋まる。
書記官は、髪の短い、がっしりした体格の中年男性である。
裁判長は、白髪で浅黒く、痩せており、眼鏡をかけた初老の男性である。裁判官は、ショートカットの中年女性と、髪が短めの浅黒い30代ぐらいの男性である。
開廷前、2分間の法廷内の撮影が行われる。撮影が終わり、裁判官たちは奥へと引っ込む。撮影には弁護人が映っていないことも多いが、この裁判では、珍しく、検察官、弁護人の双方がそろっていた。なお、被害者参加代理人の女性弁護士は、撮影後に入廷した。
被害者参加代理人の弁護士は、ショートカットに眼鏡をかけた中年女性である。検察官は、記録を広げて目を通している。
撮影が終わると、被告人の入廷となる。被告人は、前を向いて入廷した。丸坊主であり、前頭部に残っている毛はわずかである。がっしりした体格。目はぎょろっとしている。黒い長袖のジャージの上下であり、茶色いサンダル履き。入廷し、すぐに解錠する。腕を組んで、被告席に座る。
そして、裁判員が入廷し、林一貴被告の第四回公判は、10時30分と予定よりも大幅に遅れて開廷した。

裁判長『開廷遅れて申し訳ない。被害者による意見陳述から。書面による意見陳述。代理人弁護士、朗読を』
被害者参加代理人の弁護士が、証言台の前に立ち、意見陳述書の朗読を始める。

<意見陳述>
代読いたします。
いつも通り、清掃していました。廊下で犯人にTVの具合が悪いと言われ、確認のため、部屋に入りました。首を絞められ、意識遠のく中、何が起こったか解らなかった。現実の事と思えなかったが、刃物を突き付けられ、「抵抗しなければ殺さない」と言われ、どうなるかと思った。
ブランケットをかぶせられ、死を覚悟した。声を荒げた時、このまま殺されると思った。いう事を聞くしかない。32時間、ただただ、恐怖と絶望しかなかった。今ここで死んだら、家族、職場の人はどうなる。一生頭に残るのかな。それは申し訳ない。一生懸命、生きることを考えたが、恐ろしかった。
彼氏と念願の同棲生活をしていて、とっても幸せだった。しかし、事件後には、男性にふれられるのも受け入れられない。彼氏ともお別れした。一人で外出できない。狭い所にいられない。坊主頭の男性が怖い。首に巻くものが苦手になった。後ろから肩叩かれると怖い。医師からPTSDと診断された。どこまで不幸になるのか。未来が全く見えない。
犯人に私の人生を壊された。なぜ私なのだろう。嘘だと思わずに部屋に入ったこと、悔やんでも悔やみきれない。家族も辛い思いをしている。母はずっと寄り添ってくれ、家計面でも迷惑をかけた。みんなの生活まで狂わせた。どこまで私たちはつらい思いをしなければならないのか。
事実が明らかになれば、世間の人に、被害内容が解ってしまう。逮捕監禁致傷どまりで、裁判してほしい思いもあった。しかし、数年で出てくると考えると恐怖しかなく、同じ犯罪を繰り返している、犯人許せない。家族と何度も何度も話し合った。一緒に戦い、一日も長く犯人を刑務所に入れてもらおうと考えることができた。
犯人は、当初は認めて争わないと聞き、安心していた。しかし、直前で、やはり争うと言い出し、証人として出なければいけなくなった。なぜ犯人に振り回されなければいけないのか。犯人に、怒りしかない。同じ人間とは思えない。
私のような犠牲者を出さないため、一生刑務所に入れておいて。安心して生活できるようにしてほしい。
以上。

被告人は、意見陳述の間、腕を組んで被告席の椅子にもたれかかり、冷ややかな眼差しを注いでいた。
続いて、検察官による論告求刑が行われる。アラ検事が論告に立つ。

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