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特集 ヨルダン川西岸パレスチナ人の真実(キャッチ!世界のトップニュース240411)

望月 麻美(もちずきまみ):
特集「ワールドEYES」。
今日は、イスラエル軍の軍事侵攻によるガザ地区での人道危機の陰に隠れ、半ば見過ごされている問題を掘り下げます。

髙𣘺 彩(たかはしあや):
こちら「ヨルダン川西岸」のパレスチナ暫定自治区です。
イスラエルのテロからの自衛という主張のもと分離壁で隔てられた「ヨルダン川西岸」では、パレスチナの人たちがイスラエル軍やユダヤ人入植者によって殺害される事件が相次いでいます。

髙𣘺:
「国連の先月下旬(3月27日)の報告によりますと、去年10月7日以降ヨルダン川西岸などで438人のパレスチナ人が殺害されました。

望月:
統計を取り始めた19年間で過去最悪のペースです。
ヨルダン川西岸のパレスチナ人に何が起きているのか現地を取材しました。

イスタンブール支局長 佐野圭崇

佐野:
ヨルダン川西岸のパレスチナ暫定自治区ラマラ近郊です。
私がいるところから300m程離れたところに男性が撃たれたオリーブ畑が広がっています。

オリーブ畑

佐野:
イフラス・サレフさん。
去年10月、ユダヤ人入植者による銃撃で夫のビラルさんを亡くしました。

イフラス・サレフさん:
自分たちの土地で家族と農作業していただけなんです。

(報告:佐野 圭崇 イスタンブール支局長,田村 佑輔 エルサレム支局長)

先祖代々受け継いできたオリーブ畑

佐野:
その日も先祖代々受け継いできたオリーブ畑でビラルさんは子どもたちと収穫作業をしていました。

ビラルさんの親戚:
ビラル、ビラル。
ビラルを道路まで運べ。

佐野:
武装した入植者がオリーブ畑に侵入して発砲。
ビラルさんは胸を撃たれたといいます。

事件現場
武装したユダヤ人入植者

佐野:
畑のある地区はイスラエル軍の管理下にあり、パレスチナの救急車は入ることができません。
親戚たちが自家用車でビラルさんを病院へ運びましたが、ビラルさんは病院で死亡が確認されました。

佐野:
ビラルさんを撃った入植者は2日間の拘束の後、釈放。
半年がたった今も、責任の追求は行われていないとイフラスさんは言います。
夫が受け継ぎ、守ってきたオリーブ畑への立ち入りは今もイスラエル軍によって規制され、実現していません。

イフラスさん:
(オリーブ畑には)行けません。
四方を入植地に囲まれていて監獄の中で生きているようです。
誰も入植者の横暴を止められず、私たちのことを守ってくれません。

佐野:
ガザ地区での戦闘が始まった去年10月以降、ヨルダン川西岸ではビラルさんのように命を落とす人が急増しています。

佐野:
背景にはイスラエル政府が自衛のためとして、イスラエル市民に銃の携帯を推奨する政策を強めていることがあります。
今年2月、イスラエルの閣僚がヨルダン川西岸を訪問し、入植者も武器を手に取る必要があると訴えました。

イスラエル ベングビール国家治安相:
たくさんの武器を配布します。
パレスチナ住民の移動の自由よりも(イスラエル人の)命が優先されます。

佐野:
イスラエル政府の政策はパレスチナの人たちを経済的にも追い込んでいます。

佐野:
ベツレヘム近郊に住むマルワン・オデさんです。
30年以上、検問所を通ってイスラエル側に通い、建設現場で働いていました。
その暮らしは去年10月7日に突然終わりを迎えました。

オデさん:
あの日からすべてが変わってしまいました。

佐野:
イスラエル政府が治安上の懸念を理由におよそ13万人とされるパレスチナ人の労働許可証を取り消し、イスラエル側への立ち入りを認めない措置をとったのです。

労働許可証

佐野:
仕事を失ったオデさんは今、長男が営む靴屋の手伝いをしています。

長男が営む靴屋
長男の靴屋を手伝うオデさん

佐野:
しかし、ヨルダン川西岸の経済状況は悪化して客は激減し、貯金を取り崩しながらの生活を余儀なくされています。

オデさん:
いま生活は厳しいです。
来月以降はもっと大変になるでしょう。
多くの労働者が収入を失っています。

佐野:
イスラエルは政策転換に踏み切りました。

佐野:
不足した安い労働力を確保するため、作業員をアジアから呼び込む方針を打ち出したのです。

イスラエルの建設現場

佐野:
このうち、インドとは去年11月4万人の労働者の受け入れで合意

(ミリ・レゲブ運輸・道路安全相のフェイスブックより)
ミリ・レゲブ運輸・道路安全相:
戦争が始まった時に私は言いました。
パレスチナ人への依存を断ち切り、外国人労働者を連れてくるべきだと。
私たちは農業や建設、インフラ整備に10万人のインド労働者を連れてくることができます。

佐野:
こうしたイスラエルの一方的な措置はパレスチナ人の憤りを募らせ、かえってイスラエルの治安に重大な影響を及ぼす可能性があると専門家は指摘します。

イスラエル国家安全保障研究所ヨハン・ツォレフ上席研究員:
仕事がなければ家にいるしかなく不満がたまっていくでしょう。
お金を持つテロ組織に簡単に取り込まれてしまうのです。

望月:
取材した佐野記者にイスラエルとヨルダン川西岸の今後などについて訊きました。

〈イスラエルの対応〉
佐野:
ヨルダン川西岸での暴力行為や土地への立ち入り制限などは本来、到底許されるものではありません。
国連は、イスラエルの入植という行為自体を国際法違反だとしています。
しかし、国連安全保障理事会ではアメリカが拒否権を発動し、イスラエルの動きを止めることができないという状態が続いてきました。
ネタニヤフ政権も極右政党との連立を維持するため入植を推し進める立場で、専門家はこの流れを止めることは困難だとしています。

イスラエル国家安全保障研究所ヨハン・ツォレフ上席研究員:
(連立政権の)極右派は常にパレスチナ人を罰したいと思っています。
戦争が終わり人質が解放されてから(イスラエル政府は)方針転換を考えるようになるのです。

佐野:
パレスチナの労働者受け入れについては、イスラエルの治安機関は再開すべきだと訴えていますが、ネタニヤフ首相の態度はかたくなだとも報じられています。

髙𣘺:
イスラエルとハマスの戦闘が始まってから半年がたちますが、ヨルダン川西岸の人々はハマスをどのように見ているのでしょうか?

ヨルダン川西岸入植地
ベツレヘム
ベツレヘム

〈住民の思い〉
佐野:
ハマスを支持する人たちが多くいます。
先月、地元のシンクタンクが行った調査によりますと、ヨルダン川西岸では、ハマスの攻撃を支持する人の割合は今も7割に上っています。
背景には、国際法に違反するユダヤ人入植者の数が今も増え続けていることがあります。
先月にはイスラエル政府がヨルダン川西岸の一部の土地の国有化を一方的に発表しました。
さらに入植地を拡大するものとみられています。
国際社会から見捨てられたと感じているヨルダン川西岸の人たちにとって、パレスチナ問題の存在を想起してくれるのはハマスしかいないという思いがあると指
摘されています。
それほどまでにヨルダン川西岸の人たちは追い詰められているのだと思います。
夫を亡くしたイフラスさんと親戚は、事件以来、一度も先祖代々の土地であるオリーブ畑に立ち入ることができていません。
私たちも遠くから畑を撮影しました。
その奥には入植地が整備され、そこから畑に出入りする入植者の姿も確認できました。
パレスチナの人たちの絶望感の一つの要因は国際社会の無関心です。
ガザ地区での惨状があまりに甚大で、西岸での問題にまで関心が届かない状況を
利用して、イスラエルが入植という名の不法行為を加速させている、そんな印象も受けます。
パレスチナの人たちは法の支配を掲げる国際社会の介入を待っています。

髙𣘺:
イスタンブール支局佐野支局長でした。
そして、望月さんもヨルダン川西岸を取材したばかりですが、どのような様子でしたか?

ヨルダン川西岸
ヨルダン川西岸
エルサレム

望月:
私もラマラに行ったんですけれども、ヨルダン川西岸にはなんのチェックもなく行けるんですが、エルサレムに戻る時にはイスラエル軍がいる検問所を通過しなければなりませんでした。
そして、分離壁が高くそびえ立ち、目と鼻の先のエルサレムがとても遠くに感じました。
また、イスラム教徒にとって大切な金曜日の集団礼拝も取材しました。

金曜日の集団礼拝の様子

望月:
エルサレムの旧市街にあるイスラム教の聖地アルアクサ・モスクに礼拝に行くためには、ヨルダン川西岸のパレスチナ人は1日訪問許可証を取得しなくてはならないうえ、許可される数は、例年より大きく制限されていました。

アルアクサ・モスク(Wikipediaより)

望月:
ベツレヘム周辺の検問所では、礼拝に向かうパレスチナ人たちが行列を作り、中には訪問を許可されない人もいました。

ベツレヘム周辺の検問所前
ベツレヘム周辺の検問所の様子1
ベツレヘム周辺の検問所の様子2
ベツレヘム周辺の検問所の様子3
ベツレヘム周辺の検問所の様子4

望月:
イスラエルは治安維持のためとしていますが、大切な聖地を訪問するにも検問を受けなくてはならない状況に理不尽さを感じました。

インタビューに応じたパレスチナ人男性1
インタビューに応じたパレスチナ人男性2
インタビューに応じたパレスチナ人男性3

望月:
そして、取材中印象に残っているのは、複数のパレスチナ人に問題はこれまでも
ずっと続いてきたのに、なぜ今回は日本人はこんなにも関心を抱いているのかと感謝とともに質問されたことです。
佐野記者も指摘していましたが、国際社会の関心の薄さが現状を招く一端を担ってきたという事実を突きつけられました。

(以上で番組部分終わり)

(クリエイターのコメント)
大手メディアなどは報道しないが、イスラム武装組織ハマスによるテロ攻撃及びイスラエルの住民たちの拉致・暴行もイスラエル側の自作自演の可能性があると指摘されており、イスラエルはその工作をきっかけにパレスチナ人のジェノサイドを行っているのではないかと考えるのが自然である。イスラエル、パレスチナと関係を持つ国々により一刻も早く和平が実現することを祈るばかりである。また、パレスチナ人に対するジェノサイドや経済的困窮及び飢餓などの人道危機に陥れることを計画し、実行を主導したイスラエルの指導者たちは弾劾されるべきである。

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