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初心者から上級者まで!鉛筆デッサンのための最適なツール選び

  どうも。鉛筆画家の中山眞治です。沈丁花の香りが、春の訪れを感じさせますね。元気でお過ごしでしょうか。^^

 さて、デッサンに挑戦するすべてのアーティストへ。この記事では、鉛筆選びから削り方、ホルダーや消しゴムの選択、さらにはイーゼルとイスまで、デッサンに必要なツールとその使い方を網羅的に解説します。
 
 筆勢や筆圧のコントロール方法も学べるので、技術の向上も目指せます。あなたのデッサン作品を、格段にレベルアップさせるための全知識をご提供します。
 
 それでは、早速見ていきましょう!

1 画材の基礎知識:デッサンに必要な全て                
 

第1回個展出品作品 静物Ⅱ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

(1)  鉛筆選びの秘訣:デッサンに最適なものは?


a 鉛筆の種類と特徴:デッサンの質を左右する選択 


筆者の使っている鉛筆類 100円ショップで購入した書類入れを使っています


 最初に揃えるべき鉛筆の種類では、鉛筆の硬軟の特徴からご説明します。 どの鉛筆でも良いのですが、スッテドラー・三菱ユニ・ファーバーカステル・トンボなど1本170円~200円くらいです(スッテドラーの場合)。

 筆者の場合は、9H~9Bまではステッドラーやファーバーカステル、10Hと10Bは三菱ユニを使っています。
 
 ステッドラーは、比較的「カリカリ」とした描き味です。三菱ユニとファーバーカステルは、「しっとりとした」描き味で、画面上にも乗りが良いです。

 筆者はステッドラーを主体に取り組みを始めましたので、そのままかれこれ30年間も使っています。
 
 また、初心者の人は手始めに、2H・H・HB・B・2B・3B・4B(合計7本)くらいあれば充分です。鉛筆デッサンをやってみて、続けられるようでしたらば、徐々に増やしていけばよいのではないでしょうか。

 ただし、この場合には、同じメーカーの商品で上記の7本は選びましょう。メーカーによって、若干トーンの乗り具合が異なるからです。

 ある程度、一つのメーカーの商品を使い慣れてから、他のメーカーの商品を選ぶようにしましょう。

 尚、鉛筆ホルダーも2~3本用意しておけば、鉛筆を使い切ることができます。

b 鉛筆の削り方完全ガイド:理想的な描き味を得る技術

 筆者の場合、鉛筆削りで削れなくなるほど短くなった際には、鉛筆ホルダーに接続して、100円ショップで購入してきた「果物ナイフ」で削っています。

 削り方は、細かく言えば色々ありますが、最初はあまり細かいことは気にしないでください。
 
 あなたが、鉛筆デッサンを描くことに慣れて来ましたら、モチーフの背景へトーンを入れていくときには、鋭く削った状態で描き込んだり、あるいは、神経質に鋭くしなくても、効果的な線が描ける場合もあります。

 削り方は、鉛筆画を描いていくうちに分かってきます。描き始めのデッサンの際には、芯を長めにして取り組むことが描きやすい場合もありますが、普通に削った状態で充分制作できます。
 
 尚、ナイフで鉛筆を削る場合には芯が長くなりがちになりますが、それは同時に折れやすくもなりますので、逆に、長くし過ぎるのはあまりよろしくありません。

c 鉛筆ホルダーの使い方と選び方:鉛筆を使い切れる強い味方


鉛筆ホルダーが2~3本あると短くなった鉛筆を最後まで使い切れます


  上記画像の鉛筆ホルダーは30年使っていますが、使用頻度が多いにもかかわらず長持ちしています。筆者は全部で5本持っていますが、あなたも使う気になった場合には、当初2~3本あれば充分でしょう。 

 短くなった鉛筆は、この鉛筆ホルダーで常に使いやすいグリップを確保できますし、削る際にも便利です。

(2) 消しゴムの選び方と使い方:ミスを効果的に消すコツ


 鉛筆デッサンや鉛筆画で使う消しゴムは、主体は「練り消しゴム」です。既述しました「筆者の使っている鉛筆類」の鉛筆の上の4つのかたまりがそうです。
 
 1つ500~800円くらいで、最初は1個あれば充分です。練り消しゴムは、幅広い先端にして画面を拭き取ったり、細くマイナスドラーバーのような形状にして使うことができます。
 
 特に「ハイライト(一番明るいところ)」を仕上げの際に、より白くするときに重宝します。指で練って先端を鋭くした状態で使用できますのでとても使いやすく、消しカスが出ませんので取り扱いしやすいのです。
 
 筆者が、なぜ4つの練消しゴムを使っているのかというと、古い練り消しゴムは、面積の大きい部分や、特にたくさんの濃い色を修整する場合の拭き取り用です。

 使っていくうちに鉛筆を吸収して色が黒くなっていきますので、作品のハイライトに使う練消しゴムは、一番新しいものを使っています。
 
 そして、力を入れて消すような際には、「普通のプラスチック消しゴム」を使うこともあります。

 また、形状が鉛筆のような「アメリカ製のGRAPHICS DIVISION MULTILITH ERASER 40-2547」も使っています。この消しゴムは、画面に食い込んだ鉛筆痕でさえも消す(削り取る)ことができます。

(3) 擦筆テクニック:陰影と質感を出す方法

 擦筆とは、描き込んだ鉛筆を上からこすり、ぼかし効果を得る道具です。しかし、筆者は「画面が汚れる」ので使わないようにしていますが、微妙な陰影を用いる際の、人物の顔の陰影などで使う人も多いようです。

 しかし、ぼかし効果が必要な場合には、ティッシュペーパーで、優しくこすって代用することもできます。

参考:【特殊画材】擦筆(さっぴつ)を使ってリンゴを鉛筆デッサンしてみた! 使い方と注意点 (youtube.com)

(4) 定規を使った精密なデッサン:30cmから1mまでの活用法


筆者が使用している1mの定規です

 絵画教室では指導しないでしょうが、直線が必要な場合には定規を使ってしまいましょう。

 水平線や垂直線では、描き始めの当初では、完璧なこれらの線を引くことは難しいからです。シャープな線を描くには、定規を使うことが一番手っ取り早いのです。

 そして、これは、どこの絵画教室でも教えないでしょうが、例えば、デッサンをしてみて、どうしてもうまく描けない場合があります。具体的に、例えば、あなたがウイスキーのボトルを描いたとします。

 しかし、左側の輪郭線と右側の輪郭線が左右対称にならずに、何度やってもうまくいかない場合もあるでしょう。

  そのような場合には、そのボトルのデッサンへ縦に中心線を引き、中心線からうまくかけた輪郭線との距離を測り、うまくかけていない側の輪郭線へ測った距離の「点」を薄く打ちます。

  これを上から下まで行うと、左右対称な点が打てますので、あとはそれを結ぶだけです。

 ここで気を付けないといけないことは、強く点を打ってしまうと、なかなか後から練り消しゴムを使っても消えないばかりか、画面に凹みを作ってしまうので注意しましょう。
 
 尚、これをやるときには、自宅で行いましょう。絵画教室の先生方は、フリーハンドによる制作にこだわっている人が多いので、絵画教室で平然とこの作業を行うと、先生の逆鱗に触れてしまう可能性があります。

 これを気にかけずにおこなっていて、ふと振り返ったらそこに「真っ赤な顔」をした先生が立っていたら怖いですよね。^^

大魔神

(5) 分度器の使い方:角度を活かしたデッサンのコツ

 筆者は、分度器を、描き込んだモチーフの角度に合わせた線を描き込む場合に使っています。本来は、あまり絵画教室などではすすめていないでしょうが、筆者の場合には「なんでもあり」です。

 必要になる線を入れるためには何でも使いましょう。これも自宅でやりましょう。^^

(6) コンパスを使った円の描き方:正確な形の秘訣


 これも、絵画教室の先生が聞いたら「顔を真っ赤」にして怒るでしょうが、自宅で球体を描くときには、コンパスを使ってしまいましょう。

 球体を完璧に描けるよになるまでには時間がかかりますので、フリーハンドで試みるのはこの段階では時間の無駄です。このような球体のデッサンは、描いていくうちにうまくなります。^^
 
 筆者は、F130号に引く「円」のために、手持ちの「コンパス」では小さくて使えないので、「鍋の底や洗面器」を使って「円」を描き込んだこともあります。
 
 尚、コンパスを使うときの注意点は、中心部分になる「画面に刺さる部分」にはできるだけ、刺さる穴が小さく浅くなるように気を付けてください。この画面に空いた穴は、いつまでも目立つことがあるのです。
 
 そして、F100に円い地平線を描いた時には、鉛筆をL字型に木材へ固定して、その木材の下側にビニールひもを結び、必要となる中心点と接続し、コンパスの要領で地平線を描いたこともあります(下記の作品がそうです)。

国画会展 入選作品 誕生2002-Ⅱ F100 鉛筆画 中山眞治

(7) イーゼルとイスの選び方:快適なデッサン環境を整える


 鉛筆デッサンの最初は、絵画教室のイーゼルとイスを使うことになります。上記写真は、筆者が自宅でF30までの大きさの作品を制作する際に使用しているイーゼルです。

筆者の現在使っているイスです

 F30で制作するときに使っている、この画像のイスは、ホームセンターなどで「踏み台」として、安く販売されています。
 
 ところで、あなたの家の近くや、通勤途中に絵画教室はありませんか?絵画教室へ行けば、当然イーゼル及びイスやモチーフがあります。

 筆者がこまごまと記事に書いてみても、伝えきれないことがたくさんありますので、これらの初歩的なことは、絵画教室の先生に直接教えてもらいましょう。
 
 あなたが自宅でも描く場合には、あなたの自宅にあるイスの高さに合わせてスケッチブックを置くポジションを決めるとよいです。

 机とイスがあれば、従来使っている机の上にスケッチブックを立てかけられるように、段ボール箱などを上手に使えば制作を始められます。あるいは、机の上にノートを置くようにして描くこともできます。
 
 しかし、なぜ段ボール箱などの話をするのかと言いますと、続けていけるかどうかわからないときには、極力出費を避けて取り組むことが無難だからです。

 買えば2万円以内のものですが、できるだけ続けていく決心ができた時に購入しましょう。
 
 そして、もしも、小型のイーゼルを購入した場合には、比較的背が低い(前掲画像のイーゼルの全高は900mm)ので、その高さに合わせたイスを、あなたの自宅の「風呂イスや雑誌を積み上げて代用」してもよいのです。

2 鉛筆の使い方:基本から応用までの全技法


第1回個展出品作品 葡萄 1996 F6 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆デッサンのトーンの入れ方は、基本的に画面上のモチーフ全体を描いて、少しづつ描き進んでいくようにします。個別のモチーフだけを丹念に描き進むのではありません。

 全体の様子を見ながら、全体を少しづつ仕上げていくようにします。そして、面を埋めるような作業の場合には、「クロスハッチング」でおこないます。

 例えば①右上から左下へ引く線②左上から右下に引く線③ヨコに引いていく線④縦に引いていく線、この4種類の線を基本とします。これをクロスハッチングと言います。
 
 縦の線や、左上から右下へ引く線が引きにくい場合には、スケッチブックの向きを変えれば問題なく引けるはずです。

 鉛筆デッサンや鉛筆画の場合には、この4種類の線を丹念に繰り返し入れていくことで、画面上に透明感さえ生まれてきます。ただし、丹念に行う必要があるので根気と体力が必要になります。^^
 
 また、強く描き込みすぎると、画面を痛めますので力任せにクロスハッチングせずに、落ち着いて淡々と根気よく、優しめの一定の筆圧で4種類の方向の線で面を埋めていきましょう。

3 筆勢と筆圧の基本:デッサンの質を高める重要ポイント


第1回個展出品作品 人物Ⅳ 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

(1) 筆勢のコントロール方法:表現の幅を広げる技術


 素早く引いた線を筆勢のある線と言います。表面が滑らかで平らな対象は、筆勢がないと、うまく表現できません。また、動きやスピード感を表す場合、筆勢のある線を使うと効果的です。

 出典:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 石原崇 氏 筆勢がない例
 出典:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 石原崇 氏 筆勢がある例

(2) 筆圧の調整技術:細かいニュアンスを出すためのコツ


 鉛筆の線の強弱や濃淡は、描くときにスケッチブックや紙面にかける鉛筆の圧力の加減であらわします。

 通常、堅い対象は強い筆圧で描き、柔らかい対象は筆圧を弱くして描きます。鉛筆デッサンや鉛筆画は、筆勢と筆圧の2つを使い分けながら進めることになります。

出典:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 石原崇 氏 筆圧が弱い例
出典:東京武蔵野美術学院・監修 鉛筆デッサン 石原崇 氏 筆圧が強い例

4 鉛筆画に最適なスケッチブックの選び方:紙質が作品を左右する


 鉛筆デッサンや鉛筆画では、用紙の目(凹凸)のはっきりしている画用紙・水彩紙・木炭紙が、鉛筆の粒子を凹部と凸部の両方につけることができるので、鉛筆のグラデーションを出しやすくデッサン用として適しています。

  それとは逆に、凹凸のないようなケント紙(つるつるした紙)は、鉛筆の粒子の上に粒子を重ねることになるので、グラデーションは出しにくいですが、丹念に調子をつける細密描写には適しています。

  初心者の人は、高価ではないF6やF10くらいの、画面はケント紙などでは鉛筆が乗りにくいですが、逆に凹凸が大きいと描きにくいことにもなりますので、「中目」の粗さのスケッチブックがおすすめです。

  F6(1,000~2,000円 20枚綴り) F10(3,000~4,000円 20枚綴り)参考:世界堂 オンラインショップ                                画材・額縁・文房具通販の世界堂オンラインショップ (sekaido.co.jp)

5 フィキサチーフの使い方:鉛筆デッサンや鉛筆画を長持ちさせる保存手段


画像は徳用サイズですが、携帯用の小さなものから販売されています

  鉛筆デッサンや鉛筆画は、完成すると定着材を噴霧する必要があります。そうでなければ、画面がこすれれて、せっかくの作品が台無しになってしまうからです。  

 フィキサチーフとは、商品の表示を見ると、「木炭・コンテ専用定着液」と記載されています。

 つまり、画面がこすれると台無しになる、鉛筆・木炭デッサンやコンテ及び鉛筆画などの定着液として、幅広く利用されている商品です。1000円前後から購入できます。
 
 尚、フィキサチーフはかけ過ぎると、黄ばむ・タレルなどの問題が起こる場合がありますので、噴霧の際の適切な距離・適温・適量の使用を心がけましょう。

 適温とは、冬場などの寒い時には、洗面器やバケツにお湯を入れて、温めて使わないと適切な噴霧を得られないからです。

6 まとめ


青木繁記念大賞展 郷愁2001-Ⅱ F100 鉛筆画 中山眞治


 今回の、「初心者から上級者まで!鉛筆デッサンのための最適なツール選び」では、ご覧になっていただきましたように、大きく費用の掛かるものはあまりありません。

 しいて言えば、絵画教室に通う費用くらいでしょうか。参考例では、大雑把に月に4回行って1万円~1万五千円くらいです。
 
 また、あなたが自宅でも制作する気になり、小型のイーゼルを購入する際には、2万円以下で購入できます。安価なものであれば、1万円以内で購入することもできるでしょう。
 
 鉛筆デッサンや鉛筆画は、身近な文具から始めることができて、老若男女どなたでも、いつからでも気軽に楽しめます。尚、あなたが新たに鉛筆画に没頭できるとした場合、次のような効果が期待できます。
 
・お金があまりかからない
・没頭できる趣味になれば、おのずと浪費が減り節約ができて投資に充てられる
・一人でも楽しめる
・いつでも(何時でも)できる
・天候に左右されない
・老後に備えた節約になる
・全く別世界の友人が新たにできる(老若男女)
・異性との出逢いにも連動できる場合がある
・異性とのデートでも展覧会や美術館の常設展を有効に活用できる
・趣味からプロへの道も開ける可能性がある
・展覧会などで自分の作品の発表ができる
・画家になった場合作品を販売できる可能性がある
・画家になった場合作品の描き方をネットで販売できる可能性がある
・国内や海外旅行の目的に展覧会・美術館訪問を加えることができる
・年老いても続けられる
 
 あなたは、もしも画家になりたいのであれば、筆者のように過去に全く絵を描いたことがなくても、自分自身の中の埋もれている「可能性」を目覚めさせる努力さえできれば実現できます。
 
 逆に、美大を出たために、余計な知識が身についてしまったり、大して才能のない講師について、その講師を超えられず頭でっかちな屁理屈ばかりこねても、まったく意味などありません。
 
 自分自身で納得できる、完成度が高く、人を惹きつけられる作品をどのように制作するかを考えることが大切です。まずは、基礎を学んだあとに自身でいろいろ試行錯誤して、思い切って展覧会にどんどん出品しましょう。
 
 やってみなければ解らないことはいくらでもあります。おじけづかないで、のびのびと楽しんでやっていきましょう。

 個展や県展・全国公募展へ出品するのは、はっきり言って最初は「ドキドキもの」ですが、大胆に行くことも人生必要です。振り返ってみると、意外に大きな壁ではありませんよ!
 
 ではまた!あなたの未来を応援しています。
 

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