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道徳とガリレオ

小学校5年生くらいのころ道徳の授業で、「女性は総理大臣になっても良いのか?」という議題でクラスで議論をすることがあった。
自分は「なっても良い」と思ったので、「なっても良い側」に手を挙げた。それぞれ教室の左右に分かれる事になり、ふと周りをみると自分の近くには自分含めて3人しかいなかった。クラスは全員で25人だったので、3対22で議論することになった。驚いた。自分が絶対多数派だと思っていたし、たった3人でクラスの皆と議論しなければならないのかと震えた。

まず相手側の活発な女子が手を挙げて発言する。
「総理大臣になるのに男とか女とか関係無いと思いまーす」

あれ?

そしてその隣に居た男子も発言する。
「僕も同じ意見でー、別に女の人が総理大臣になってもいいと思いまーす」

お?

議長である担任の先生がこちら側にも話を降る。すると僕の横に居た浜井がデカくて甲高い声で発言した。
「えっとお、だって総理大臣って男がなるもんやと思いまーす」

あ、完全に逆の方に居る。間違えて「なってはいけない側」にいたようだ。ちゃんと話を聞いていなかった。どうしようかと思ったがしょうがない、僕は浜井の意見が終わると同時に
「ごめん、間違えてた。俺そっちやった!」
と反対側に移動した。すると浜井の横に居た、同じくちゃんと話を聞いていなかったのであろう男子も
「俺もやわ!俺こっちちゃう!」
と僕に続いて移動した

完全に浜井は取り残された。そこから浜井は1対24で戦う事になった。
「えっとお、なんかそういうイメージだからですぅー」
「だって男の方がなんか、強いっていう感じがしてぇー」
「だってぇーなんかなんとなくこっち手ぇ挙げただけでー」

浜井は基本的に漠然としたものだけで戦った。正直浜井は負けていたし、最後の方は声も小さく、ほぼ白旗を挙げている状態だった。しかし今思えば浜井は格好良かった。浜井の意見の良し悪しを置いておくと、あのクラス全員相手に自分の意見を貫いた浜井こそある種、道徳的に学べる物があった。

地球を中心に太陽が動いていると考えていた時代に、太陽を中心に地球が動いている地動説を唱えたガリレオに浜井は通ずるものがある。
浜井が唱えていたのは天動説だが。

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