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ウサギと猫の島巡り② ~🐈️~

2020/11/10

小さい音量の音楽をかけて寝たら前日よりはよく休めたが、この日も朝の4時50分くらいに起床。まだ暗いうちにホテルを出てJR松山駅まで歩いた。昨晩は路面電車の甲高い金属音が鳴り響いていた国道も、この時間は何台かの車が通る音しかしない。これほど早朝に出発する理由は、この日のメインとなる「猫の島」へ行くために、5時52分発の電車に乗る必要があったからだ。この時点でもまだ暗かったが、列車が伊予灘の近くまで来ると朝日に照らされた島々が見え始め、これから行く島はどれだろうかと車窓から探していた。


松山を出て1時間半後、船乗り場の最寄り駅である大洲市の伊予長浜で下車。駅から港は歩いてすぐの距離にある。船はかなり小型だったが、自分以外に6名ほどしか乗船客がおらず、かなり空いていた。港から島までは30分ほどかかるが、途中波に当たるなどしてかなり揺れるので、酔いやすい人は薬を飲んでおくべき。

8時35分頃、猫の島こと青島に遂に上陸。この島の猫たちはとても人に馴れており、路地に来ると早速何匹かの猫たちが出迎えてくれる。島には猫のエサ場があり、この島に何度も訪れている方が大量のエサを皿に開けると、たくさんの猫たちが待ってましたと言わんばかりに姿を現した。その方曰くこの日の猫の数は普段よりずっと少ないらしいのだが、自分にとってこれほど多くの猫たちを一度に見るのは初めてのことである。しかも、こんなにたくさんいるのに猫同士の喧嘩は滅多に起こらない。エサが多いのもあるかもしれないが、島の猫は基本的に取り合ったりせず、怒ったりもしない性格なので、とても平和な光景だった。



島はとても小さく、今は感染症対策として住宅地へは入れなくなっているため、移動範囲がかなり限られている。つまりこの島での主な過ごし方は、猫と戯れる、ただそれだけ。猫を抱く人や、猫の絵を描く人(後で知った事だがその人は猫のダヤンの作者だった)、猫の写真を撮る人など、過ごし方は人それぞれだ。



青島の小さな港町もまた非常に長閑で、日中はぽかぽかした陽気と静寂に包まれる。エサを食べて満腹になった猫たちはその辺で日向ぼっこをし、来島者の何人かも道の脇で猫と一緒に微睡んでいた。こんなに多くの猫がいるのに寝転がれるくらい道が綺麗だし、臭いも全くしないのだ。ベンチに座っていると猫が一匹、また一匹と跳び乗ってきて、膝上や体の周囲をあっという間に囲まれる。これじゃ動けないと思ったが、猫の温かさとモフモフ感に負け、堪忍してそのまま自分も一眠りした。この島はとても小さく、船の時間上7時間半も滞在しなければならないため、来る前はどう過ごそうかと考えを巡らせていたが、そんなことは今となってはどうだっていい。暖かい日差しの中、微かな波の音を聴きながら猫たちと寄り添って眠っている、ただそれだけで許されるのだ。どんなにだらけていても咎める者は誰もいない。皆そうして過ごしているのだから。猫は人間の温かい膝の上が好きらしいが、我々もまた膝の上の猫に癒されるというwin-winな状態である。日々の悩みやストレスも、この時間は完全に解放されるだろう。猫は見返りを求めないし、我々も彼らを可愛がるだけ。そんなある意味自然に近い状態が、実は一番幸せなんだと思った。少なくともこの島に来た人たちは皆、単に癒されるというよりは各々の幸せな時間を過ごしてるようだったし、猫たちもまた同じように見えた。なぜ人々は猫に惹かれるのか、ずっと犬派だった自分にも理解できた気がする。こうしてぬくぬくとしていると時が立つのも忘れ、7時間半という長い時間もあっという間に過ぎていった。


猫たちと別れ、16時過ぎに島を出発。日が暮れる頃に長浜港へ戻ってきた。せっかくなので「赤橋」で知られる長浜大橋を見てから電車で松山へ帰還。夜は道後温泉のライトアップを見たり不知火ジュースを飲んだりして1日を締めくくった。



ちなみに、前日に訪れた大久野島は交通の便が充実していて行きやすいが、青島の場合は島への船が1日に2往復しか出ていないことと、人数制限があること、そして欠航リスクが高いということもあって、行くのが格段に難しくなる。東京から来る場合、日帰りはおろか1泊2日でも困難(というか多分無理)なので、もっと長い日程をとって行くのをお勧めする。とはいえ欠航になったら島に行くことすら出来ないので、そうなったときのために別の旅行プランも考えておこう。また、島に店や自販機は無いので、食料はあらかじめ用意しておきたい。



ウサギと猫の島を訪れる旅はこれにて終了だが、これはまだ前半。3日目からは「アートの島巡り」をテーマに、香川県の直島と小豆島をまわる旅が始まる。

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