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ウサギと猫の島巡り① ~🐇~

2020/11/9



瀬戸内海には島が三千近くも存在すると言われているが、今回の旅はそれらの中でも自分が特に気になっていた大久野島と、青島、直島、小豆島の4島を4日間かけて巡るものとなっている。同じ瀬戸内海といってもそれぞれの島が離れているので、移動費が半端無くかかった。

1日目の目的地はウサギがたくさん生息することで有名な広島県竹原市の大久野島。広島空港から乗合タクシーとバスを乗り継いで船の出る忠海港まで向かった。フェリー乗り場の近くまで来るとごちうさのラビットハウスのような可愛らしい店があり、そこで乗船券を買うことができる。雰囲気に圧倒されてウサギよりも先にその店の中が気になったのだが、時間が来たのでフェリーに乗船。港を出るとわずか15分ほどで大久野島に到着した。



船を降りて桟橋を渡ると、遠目からでは分からなかったが島の道路や茂みのあちらこちらにウサギがいるのが分かる。この日はあまりよく眠れずテンションが低かった自分も、その光景を目にした瞬間に一気に胸が高まった。到着時は人が多かったので、先に島を一周する道を反時計回りに歩きながらウサギたちを観察することにした。

自分は小学一年生くらいの頃にウサギを飼っていたが、改めて近くで見てみると、一口にウサギと言っても個体によって性格は様々であることが分かる。ポケモントレーナーのようにこちらを見つけると寄って来るウサギもいれば、エサを持ってないと気づいた瞬間自分の持ち場へそそくさと帰っていくウサギ、そもそも人間の持ってくるエサなど目もくれずにじっとしているだけのウサギなどもいる。エサなんて一切持ってこなかったため、期待して寄ってきたウサギがとぼとぼと戻っていく姿を見るとなんだか申し訳ない気持ちになったのだが、道端に落ちてた薄切りのニンジンを拾って与えてみても、それを口にする者はいなかった。何で食べなかったのか未だに不思議なのだが、今まで見てきたマンガや絵本で覚えた「ウサギはニンジンが大好物である」という常識はとりあえずここで壊される。



ちなみに前述の通り大久野島はウサギの島として有名であるが、実は毒ガスの島としての歴史もある。戦時中はここで毒ガスを秘密裏に製造しており、それによって亡くなった人もいるようだ。島には時代に取り残されたような廃墟や砲台の跡があり、その物々しい雰囲気に思わず口をつぐむことだろう。ウサギの島という可愛らしいイメージがある傍ら、戦争の面影を間近で感じ取れる場所でもあるのだ。島を一周する道路の脇には、蔦の生い茂ったレンガと石壁に囲まれた広い空間もある。ここも戦争と関係があるのかもしれないが、手付かずの状態が何年も続いたようなその空間は、まさに天空の城ラピュタのようだった。



しばらく進むと道が開け、「休暇村大久野島」が現れる。島内ではおそらくここが寝泊まりや食事のできる唯一の施設だ。ちょうど良いタイミングでお腹も空いてきたのでここのレストランにて「たこ天カレー」を注文。ゲソ天とはまた違った食感があって癖になりそうだった。

その後も島内のウサギたちを観察し続け、気づいたら島を一周していた。いい時間だったのでフェリーで忠海港へ戻ったのだが、小さいながらにして魅力満載の離島だったと思う。自転車でまわる人も多かったが、島は比較的小さく、徒歩だと途中寄り道しても2時間くらいで戻ってこれるので、余裕があれば歩いて見てまわるのもいいだろう。



忠海に戻って先程のオシャレな店を見た後、電車に乗って呉に向かった。この路線は線形が悪いためか電車が自転車並に遅く感じたのだが、所々で見られる瀬戸内海の景色はとても素晴らしい。ちなみに何故呉まで行くのかというと、この日の宿泊地である愛媛県松山市行きのフェリーが出ているからだ。竹原方面から松山へ行く場合は、広島市まで行くよりも呉からフェリーに乗った方が安い。なんなら高速バスより安い。しかも、この航路のフェリーの中でも「シーパセオ」という種別のものは、その辺のフェリーとは比べ物にならないくらい綺麗である。外観も立派なのだが、中に入るとここはオフィスルームかって思うくらい整っている。リクライニングシートの座り心地は格別で、2時間ほどの船旅でも全く疲れを感じない。デッキには4,5人が座れる円形のテーブルがあり、ここで友達同士で酒でも飲みながら過ごしてみたいとも思った。呉の街並みを背にフェリーは進んでいき、音戸大橋の下をゆっくりくぐると海原に出た。



すっかり夜になって船は松山観光港に到着。伊予鉄で松山市の中心部へ行きホテルへ向かったのだが、街中を路面電車がひっきりなしに行き交う光景はとても新鮮だった。おそらくバスより多かったんじゃないかと思う。寝不足と旅の疲れでヘトヘトだったので、ホテルに着いたらさっさと夕飯を食べて、翌日の「猫の島」に備えて就寝した。明日も早い。

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