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どうしても断捨離れないもの。

4月、慣らし保育が始まり、保育所で必要な物を収納するスペースを確保するべく、息子が昼寝している間に断捨離を決行する。
子の成長に伴い幾度となく行われる断捨離であるが、毎回捨てられない物がひとつだけある。

長女が退院する時に着せたセレモニードレスだ。

うちの長女は予定日ちょうどに産まれたのだが、2192gの低体重児だった。
小さくて、抱くと羽みたいに軽くて、とても我の強い新生児だった。
長女は授乳の時間になっても飲みたくなければ頑として口を開けず、その結果なかなか体重が増えなかった。
もちろん居残り決定。私が退院した次の日から搾乳した母乳を冷凍して産院に通う日々が始まった。
朝10時と夜の7時の1日2回、夜は夫も一緒に行って面会スペースでミルクをあげる。
長女は気分じゃないと飲まない上に吸う力も弱いためか、ミルクを飲み終わるまで、毎回の授乳に1時間ほどかかる。しかも、ちょっとでもミルクが冷めたらもう飲まない。
ただ、お腹にいる時からパパっ子な長女は、夫があげる時だけは比較的スムーズにミルクを飲んだ。それも朝より少し多めに飲んでくれる。でもその分吐き戻すので体重が増減し、なかなか安定して増えなかった。

1週間が過ぎ、相変わらず飲まない長女、一向に増えない体重、決まらない退院日…こんなにも元気なのにどうして退院出来ないのか。
退院する日に着せようと買ったセレモニードレスを見つめながら、小さく産んでしまった自分を責め、夫に泣いて謝り、搾乳しては冷凍して「今日も退院決まらなかった…」と肩を落として産院から帰宅する日々。

長女が産まれてから12日目、日に日に病んでいく私を見兼ねた夫が半休を取って「出掛けよう」と言った。私がいつも心の浄化をしたい時に行くのが下鴨神社で、ちょうど御手洗祭がやっているし、そこなら夜の授乳も間に合うように帰って来れるからと連れて行ってくれた。
下鴨神社でかき氷を食べ、“早く退院できますように”とお参りをして子ども守りを買って帰ってきた。
そしてその4日後、長女の退院が決まった。
長女が産まれてから16日目であった。

院長先生に「こんなに長かったのは初めてじゃないかな」と笑われ、師長さんに「こんな頑固な子は初めてだわ。大体の子は根負けして口を開けるのに…」と感心(?)されるほどミルクを飲まなかった長女は、並んで寝ている新生児の中で1番小さいのに居残りベイビーの貫禄すらあった。
念願のセレモニードレスを着せたが、2450gの長女にはブカブカで。
「めっちゃ大きいなぁ」と夫と笑いながら3人揃って家に帰った。

小さく産んでしまった自分を責めた日も
毎日通った産院までの道のりも
一生懸命ミルクを飲んでいた長女も
そばで寄り添い励ましてくれた夫も
全て詰まった長女のセレモニードレス。

ちょっとシミになってても、着せる子がいなくても、どうしても手放せない。
長女のセレモニードレスだけは断捨離れない。

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