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ジョルジィ・リゲティ ピアノのための練習曲集第一巻(1985年) その4

 当初リゲティは「バルトーク」ってタイトルを考えてたとの情報あり。8分の3+2+3拍子のオスティナートが一貫しながらメロディは意図的にずらしたフレージングやアクセント、ニュアンスを要求され、あたかもドン・チェリーなんかのフリージャズのインプロヴィゼーションを、あるいはサヴァールさん達のLas Rutas de la Esclavitudに参加してたアフリカの音楽のノリかたを精密に記譜してるように見える。ダイナミックスの幅も広い要求されてます(ppppppppからffffff)。
 エマールさん三回の録音は壮絶。初回のエラート録音(1988年)は初めの方なんとなくぎくしゃくした感がありますがどんどん切れ味が上がってゆく、ただ音色の魅力には乏しい。二度目ラ・ショー・ド・フォン録音(1995)は完璧って思わせる、音色の魅力がましてダイナミックスの幅が拡大し鮮やか。ところが三回目、アルバム “African Rhythms”のために2002年同じラ・ショー・ド・フォンでの再録は想像を超えて更に凄い。二度目より近い音像で音色がより直接的になった上に、自在にいとも楽々と自然に演奏し切った感じがする。
 レヴィナスさんは最初の方にリズムのつんのめりがあったりして、本質的にアナログ感覚の強い奏者、音楽家なんだなと感じました。デジタルに割り切れないタイプ。最後近くの強奏時のペダルの深さがらしい所。
 ヴェルビエ音楽祭での2008年ライブ録音でユジャ・ワン。オスティナートはあくまでスラーで記譜されているのにスタッカートに聞こえます。その上「常にバックグラウンドに」という指示に反するくらい音量バランスが大きすぎるのも気になる。結果技巧面のひけらかし感が強まってしまう。曲全体としてダイナミックスの幅も狭い。残念。

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