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ジョルジィ・リゲティ ピアノのための練習曲集第一巻(1985年) その2

 解放弦、ヴァイオリンであれば通常低い方からG(ソ)、D(レ)、A(ラ)、E(ミ)、完全五度間隔。第二曲は徹底して五度音程で構成されています。他の有名曲でこの響きが生かされているのは、ベルグのヴァイオリン協奏曲の冒頭、

そしてアンリ・デュティユー(1916/1/22 - 2013/5/22)のヴァイオリン協奏曲「夢の樹」から間奏3、

こちらはオーケストラとソリストがチューニングする様を曲そのものの中に取り入れています。ベルクもデュティユーも一発ギャグ、もとい一回性の高いアイディアの曲が結構ある。
 したがって第二曲は「五度のための」と題しても良さそうで、ドビュッシーが作曲しなかった練習曲を代わりに実現したようなもので、実際エマールさんのきらびやかな演奏ではその感が強い。ラ・ショー・ド・フォン録音に加え、この曲にはカーネギーホールリサイタルでのライブもあり、聴衆を前にしての高揚なのか一気阿世感が強くスリリング。
 やっぱり対照的な演奏がレヴィナス、まずテンポ感が緩やかな上にかなり伸び縮み、アゴーギグあり。同じ曲に聞こえない感は「無秩序」を遥かに上回る。振り返ってみればレヴィナスは第一曲でも微妙なアゴーギグがあり、人によってはそれを技巧的限界と捉える向きもあるかもしれんが、私はそうではなくて彼の意図的なフレージングなのだと感じる。
 作曲家としての作品と、彼の演奏スタイルの間には、ペダルの多用による響きの追求というのが相通づる所でしょうけど、どうも歌い回しというか語り口には古風な感もありギャップが。尤もこういうギャップはよくある話で、アルトゥール・シュナーベルがその代表格でしょね。
 残念ながら他の有名ピアニストの単発録音は見当たらず。ドビュッシー好きがもっと取り上げてもいいのに。


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