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データ戦略の会社が考える「ブランディングの効果測定」

前回の記事「データ戦略の会社が考える「マーケティングとブランディングの違い」〜どちらもデータで測れるという話」 は多くの人に読んで頂けたようです。やはりマーケティングとかブランディングはふわっとした話になりがちで、売上げやユーザー数など、ビジネスのKGIとの繋がりで捉えている会社はまだ少ないということなのかもしれません。

今日はその続編で、ブランディングの効果測定について話します。前回に引き続き取締役/CMOの竹中 @Nobu_TAKENAKA(P&Gマーケ出身)と共同作成でお送りします。

定義と前提条件の確認

まずは定義の確認から(スーパーショートバージョン)

・ブランディング ⊂ マーケティング
・「マーケティング」顧客の行動を変化させることに関わる活動の総称
・「ブランディング」顧客の行動を起こすため、顧客の認識を変化させることに関わる活動の総称

この定義に従うと、ブランディングで計測すべきは「顧客の行動の変化に繋がる、顧客の認識の変化」となります。

そして多くの場合、売上げに関わる顧客の行動は、大きく言うと

トライアル * リピート * 単価

に大別されます(実はそれぞれ全く別の要素ではなく、相互に関係があるのですが、それはまた別の機会に)。もちろん、プロダクトや業態によってはリピートの頻度が非常に重要だったり、単価の内訳が無料と有料だったりすると思いますが、大きく言うとこの3点になります。

また、そもそものデータ計測手法の前提として、以下のものがあります。

・マーケティングにおけるターゲット(価値を交換する上で、選択した相手)を計測の対象としていること
・サンプルに大きな偏りがなく、十分に確からしいサンプル数*が確保できていること
・時系列で比較する場合は、同じ調査手法を繰り返し適用できていること

*補足すると、統計的には、調査対象とする母集団と取得するサンプル数、得られた回答の比率(何%がその選択肢を選んだか)によって、どの程度の標本誤差が生じるかを計算することが出来ます

ブランディングの効果測定指標

この前提に基づいて、

・認知
・Top of mind awareness*
・購入意向
・相対購入意向

*Top of mind awareness: 純粋想起で一番最初に出てくるブランドのこと。例: シャンプーと聞いて一番最初に思い浮かぶブランドは何ですか?と聞いた時に一番最初に出てくるブランド

などが、売上げと高い相関を示すことが多いです。一方、調査でよくありがちな「好感度」「目新しさ」「おしゃれ」「機能的に優れている」などが売上げに対して上記の指標よりも高い数値を示すことは稀です。一方、例えば「好感度」が上がっても全く売上げが伸びないことはしばしばあります。

上級編として、上記のような直接売上げに繋がる指標より相関としては弱い間接的な指標を計測することに意味があるケースもあります。

それは、ブランドとしてユーザーから選ばれる「理由」として、「特定の強い連想を形成する戦略を取っていて、その戦略の進捗度合いを計測する場合」が挙げられます。例えばファブリーズなら消臭力、パンテーンなら髪のダメージ補修力といった具合です。これらは、ただなんとなく「好感度」「おしゃれ」「機能的に優れている」等という指標を計測するのとは全く違った意味があります。

これらの戦略が上手くワークしている場合には、

・KGIである売上げと、KGIを伸ばすために必要な顧客の行動であるトライアル
・顧客の行動であるトライアルと顧客の認識である購入意向
・顧客の認識である購入意向とブランド戦略である選ばれる理由(例:ファブリーズにとっての消臭力)

にそれぞれ統計的に意味のある関係性が見られます。ある程度安定した市場だと、適切なデータ量があれば認知や購入等のブランド指標が一定値伸びたときに、それが売上げに対して定量的にどの程度貢献するかを推定することも可能になります。

余談ですが、選ばれる理由として意味があると思っていた指標が伸びていたのに、購入にはなんら関係なかったということもあり得ます。その場合はブランド戦略自体を見直すことになるケースもあります。

計測手法の設計

上記のような指標について、データでの計測を継続的に行い指標の変化を分析することで、上記のような指標間の関係性を分析したり、実施した施策の効果を検証して施策の精度を改善することが可能です(とはいえ、組織がこうしたデータドリブンな取り組みに慣れていない場合は、浸透するまでに時間がかかることもあります)。

一方で、プロダクトや業態によってデータ計測に関するコストも変わります。例えば上記のようなデータを計測する際に、全国主要都市でのアンケート調査が必要なプロダクト(全国展開している消費財など)もあれば、ターゲットがもう少し絞られていて簡易なアンケートで実施できるプロダクト(特定用途に絞られたSaaSなど)もあります。実務上は、こうした「データ計測」に必要なコストを踏まえて、

・どの頻度で(Monthly/Quarterly/Yearly)、
・どのような指標を、
・どのような手法で取得するか、
・その時のコストは、

といった論点を検討することになります(例:広告予算全体が5000万円なのに、計測に500万円というのは不合理です。こうした場合は計測手法や頻度を見直すか、本当に必要な指標に厳選するなどを考える必要があります)。

ブランド計測の意義

重要なことは、短期的、例えば1年以内の売上げだけを考えるのであれば

「顧客の行動」(i.e. トライアル、リピート、単価等)

だけを見ていてもよいのですが、継続的に売上げを伸ばし続けるためには、

「顧客の認識」i.e. 認知を持っている人、購入意向を持っている人

を同時に増やし続ける必要があります。そうでないと「顧客の行動」を起こすための活動、例えばオフラインで購買がおきる商材であればチラシや山積み、オンラインで購買がおきる商材であれば獲得型広告等のパフォーマンスが落ちてくるからです。この視点は、任期が決まっているブランドマネージャや事業責任者が短期的な売上げに予算を全振りして、その期間だけ売上げを伸ばしてトンズラすることを防ぐ上でも重要です。

だからこそ、直近の会計年度の売上げを達成しつつ、3年~5年スパンでの持続的な成長に向けたブランド形成が出来ているかを把握したい消費財ブランドや、アプリのダウンロード数を数十万から数百万、1千万以上と増やしていきたいアプリ等では、これらの「顧客の行動」に加えて「顧客の認識」= ブランドを計測することにも意味があるのです。

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