#2 すべての項目で5点をとる必要があるのか?

タイトルの質問に対して”No”と答えます.今回は,自分の強みをさらに強くして弱みを中和せる意味について述べます.

液晶テレビを買うとき,どれにしてよいのか迷い,途方に暮れました.選択肢が多いからです.メーカー,ブランド,それから画面サイズも決めなればなりません.意外とタフな作業です.

私はテレビのようにライバルの多い家電を選ぶとき,kakaku.comの売れ筋ランキングを確認します.ランキング上位の商品は,少なくとも悪くはない商品であると判断できるからです.

それと同じことをする人は少なくないでしょうから,売れる商品はどんどん売れ,売り上げ1位の商品はどんどん売り上げ1の商品となります.

さて,自分自身の問題として,仕事やプライベートで家電のように厳しい戦いの場に自分の身を置いてよいのかということです.

ここで,2つのデジカメを取り上げます.上はフジフィルム,下はシグマの製品です.ご覧いただきたいのは,それぞれの購入者の評価における「満足度と各評価項目の星の数」です.上のカメラはバッテリー以外の評価項目(デザインは無評価)で星5つです.逆に下のカメラはデザインと画質,ホールド感は星5つと4つですが,それ以外は決してよいとはいえない星の数です.

しかし,満足度は上が星4つ,下が星5つとなっています.

画像4

画像2

画像3

画像4

kakaku.comより

なぜこんなことが起こり得るのでしょうか?
下のカメラは,デザインと画質が,他の項目を補っていると受け取れます.つまり,デザインと画質がライバル商品と比べて突き抜けていて,それ以外の項目なんてさほど気にならない状態になっているものと推察されます.
逆に上のカメラは,すべての項目で星5つを目指しているように見えます.バッテリーの星の数が少ないので,そこに評価者の目が向いてしまったのかもしれません.

マネジメントの父のピーター・ドラッカーは次のように語っています.
「(組織が)成果をあげるためには,人の強みを生かさなければならない.弱みを気にしすぎてはならない.強みこそが機会である.強みを生かすことは組織に特有の機能である.
成果をあげるためには,強みを中心に据えて異動を行い,昇進させなければならない.人事においては,人の弱みを最小限に抑えるよりも,人の強みを最大限に発揮させなければならない」

これは組織での話ですが,個人にも当てはめることもできます.
我々はこれまでの人生において,家庭・学校教育の中で,自分の弱みを克服することばかりに時間やエネルギーを注ぐよう指導・アドバイスされてきました.

しかし,ドラッカーはそうではなくて,自分の強みをもっと強くするよう主張しています.さらには,そうすることによって強みでもって弱みを中和せよとも述べています.

これを上述のデジカメに当てはめると,下のデジカメの強みであるデザインと画質でもって,バッテリー,機能性や液晶の弱みを中和させていると捉えることができます.

したがって,すべての評価項目で星5つは必要ないと考えることが現実的です.自分の大部分を評価づける項目以外は捨てなければなりません.ただし,それを実行するには勇気が必要ですし,ジレンマが生じます.

私事ですが,研究者という商売上,国内外にライバルがいます.その状況の中で,自分の研究成果を論文誌に掲載してもらい,研究費を配分してもらわなければなりません.
私の強みは「問題を作り出す着眼点」であると考えています.
誰かが作った問題を解く研究だと,世界中に手ごわいライバルがいますし,大きい研究チームにマンパワーで負けてしまいます.しかし,問題を新たに作ることができれば,問題設定は大らかで済みますし,最先端の実験機材は必要ありません.

優秀な人であればすべての項目で星5つを目指してもよいでしょう.しかし,凡人が血みどろの戦いの中に身を置いても結果は知れています.その血みどろ戦地の外に身を置く必要があります.我々には,時間やエネルギー,お金などの資源の制約があります.それら限られた資源を使って成果を上げるためには,ごく少数の強みに資源を投入し,テコの原理を使うしかありません.自分の強みでもってテコの原理を効かせ,十分な成果が得られたなんて経験をしたら,もうやめられなくなります.

ドラッカーは次のことも指摘しています.
「多くの人が自分の強みが何なのかを理解していない」
と.

自分が気づいていない自分の強みを知る具体的な方法はいろいろあります.そのいくつかを紹介します.
・MBTI
・エニアグラム
・ストレングスファインダー
・ドラッカーのフィードバック分析
最初の2つが簡単にできてお勧めです.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?