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『午前0時のラジオ局』優勝!

今回のビブリオバトルは横浜の日本新聞博物館(ニュースパーク)と名門書店・有隣堂が主催。ビブリオバトルの女王・市川紀子さんの司会で『メディア』をテーマに開催され、6冊がエントリーしました。

1 『深夜0時のラジオ局』(村山仁志)
2 雑誌『エトセトラ / コンビニからエロ本がなくなる日」 』
3 『想像ラジオ』(いとうせいこう)
4 『フィルターバブル』(イーライ・パリサー)
5 『どもる体』(伊藤亜紗)
6 『大江戸妖怪かわら版』(香月日輪)

という編成になりました。

まず、一番くじをひいて『アチャー』と叫んでしまった私ですが、『深夜0時のラジオ局』でのエントリーに全く迷いはなく、この作品の中に村山さんが(きっと)意図せず盛り込んだ『情報とは幽霊だ。オールドメディアにはそれを成仏させる力がある』というメッセージ、つまり、SNS時代の新聞、放送メディアの悩みに光を与えるようなメッセージに集中してアピールしようと思いました。

二冊目は雑誌で『コンビニからエロ本がなくなる日」 』という特集。単にエロ本の販路が狭まるという話ではなく、自動販売機から受け継がれてきた直情的なエロ本が、ジャンルまるごと消滅するかもしれないと言う驚き。物事を主題ではなく事態で捉え直す素晴らしいアプローチ。

三冊目は『想像ラジオ』。まさかラジオからもう一冊、しかも巨匠いとうせいこうサンの作品が現れようとは!一番くじをひいた自分の不運に一瞬泣きそうになりましたが、ラジオを通して生と死を問いかけると言う点では(演出こそ対照的ですが)かなり共通する『痛みの記憶』が作品または作者にあるんだろうなあ、などと妄想してしまいました。

四冊目はゴリッと社会派で『フィルターバブル』。インターネットの便利ツールとして普及したさまざまな情報フィルターが、個人の属性情報を細かく整理して、逆に人の選択肢をフィルタリングしはじめていると言う事態を、長期取材をもとに検証する一冊。情報から『想い』を剥ぎ取り、ネット上に魂の抜けた浮遊霊を大量に生み出した張本人のひとりはフィルターだったのかもしれませんな。

五冊目は『どもる体』。メディアとしての身体に光を当てる一冊。この選本で、このビブリオバトルは一気に『超メディア論』の場になりました。メディアツールとしての身体と言う視点と、身体表現としての発話行為の視点。つまり、機能と運用の両面を『吃音』から一気に捉えると言う、視点が大変素晴らしい一冊でした。

そして六冊目に何が来るかと思っていたら『大江戸妖怪かわら版』。なんとなく幽霊とカブるなぁ、しかも妖怪相手の新米記者の物語とは、ネタとして隣り合わせな感じだなあ、と思いながら楽しく聞いていたら、質疑応答の最後に『作者の香月日輪さんは2014年にお亡くなりになりました。ですからもう、このシリーズの先は読めません』と言う衝撃的な一言。会場に静かなざわめき。あー、観客ぜんぶ持って行かれたなあ!と、思いました。何より私が最後の一言で読みたくなってしまいました。

以上プレゼンテーションが終わり、投票の結果、かなりの僅差で『午前0時のラジオ局』がチャンプ本に選ばれました。馬主の村山さん、名馬の優勝、おめでとうございます !

いい馬が揃い、ほとんど一、二票差の勝負だったようです。ニュースパークでのビブリオバトルらしい高度で開かれた内容だったと思います。

出口には今日紹介された本が積まれ、即売が行われていました。結構よく売れたのかしら。

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