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レノファなスタジアムの話(24)続・スタジアムは誰のもの?

(冒頭画像はWikipediaからお借りしました)

前回、その前の回と、スタジアム建設の計画が停滞していて、そこにJリーグが(ライセンスの関係で)申し入れを行っている、という話をしました。

秋田の場合も鹿児島の場合も「県と市の軋轢」みたいなところがキーワードになっている部分がありますが、一般的にはスタジアム計画の停滞には「(スタジアム建設を進めたい)行政と、反対運動を起こす人たちの間の軋轢」みたいな話が前面に出ることが多いです。

そこで今回は、下記の話の続編として、「スタジアム反対運動の正体」を探っていければと思っています。

実は今回の記事、実質的には「なぜ日本共産党は全国のスタジアム建設に反対し続けているのか」というのが正しい表題かもしれません。

日本共産党とサッカースタジアム

サッカースタジアム新設の話を全国で聞くにつけ、日本共産党がほぼ一貫して「建設に反対」を唱えているという話は、その界隈では比較的知られた話だったりします。

目についたものをざくっと並べただけでこんな感じ。
(意見に関して公平を期すために、全て日本共産党及び議員本人の公式サイトからリンクを張っています)

で、反対理由をそれぞれ並べてみると

  • 京都:アユモドキをはじめとする自然環境の保護

  • 金沢:多額の費用をかけて移設・新築しなければならない緊急性・必要性がない

  • 広島:市の財政運営の中でのバランスが必要

  • 横浜(三ツ沢):スタジアム建設に伴う既存施設の廃止による機能低下

といったところ。

その他の事案も含めて、日本共産党がスタジアム建設に反対する理由を改めて整理してみると、

  • 自然保護、住環境が乱されることへの抵抗

  • 既存施設の廃止に伴う行政機能の低下

  • 高額な建設費支出への反対

といったあたりになるのかな、なんてことを考えるわけです。

サッカーばかりが目の敵でもない

で、サッカーファンの方々の中には「日本共産党はサッカーばかり目の敵にしている」とお考えの方も少なくないようですが、反対しているのはサッカースタジアムばかりでもないようです。

※上から、豊橋公園アリーナ〈Bリーグ・三遠ネオフェニックス〉、青森市総合体育館、草薙総合運動場このはなアリーナ〈Vリーグ・ジェイテクトSTINGS〉への反対意見

で、それぞれの理由はサッカースタジアムの時と大差がないので割愛しますが、結局の所は日本共産党は環境問題などを建前にしてプロリーグに参戦するチームの本拠地整備に当たっては何らかの反対運動を起こしている、というのが実態のように見えます。

反対派の方々の「考え方」

そういった反対運動なんかを俯瞰的に見るにつけ、そもそもの反対運動の根底にこういった思想があるんではないだろうか、なんてことを思うわけです。

  • 新しい箱物は税金の無駄遣い

  • プロスポーツの為の施設≒特定の私企業が儲けるための施設を、なぜ公金を投入して整備しなければならないのか

前者に関しては、施設が何を持って税金の無駄遣いと判断するのかが鍵になるのですが、いわゆる「箱物批判」というのは、建設時のコストのみならず、完成後の利活用の度合いで決まってくるものなので、プロチームに使ってもらうためのスタジアム・アリーナを整備するというのは明確な利用目的の決まっていない施設を作るのとは意味合いが全く異なると考えます。

後者に関しては正直意見の分かれるところもあるかも知れません(全額行政負担となる施設に賛否があるのは確かです)が、Jリーグはその理念として以下のようなことを掲げています。

一、日本サッカーの水準向上及びサッカーの普及促進
一、豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与
一、国際社会における交流及び親善への貢献

そもそも、JリーグもBリーグもその本部組織の法人格は「公益社団法人」、すなわち公共への利益をもたらすことを活動の目的としているわけで、単なる私企業の「興業」とは意味合いが異なります。
なので「プロスポーツの拠点施設=特定の私企業が儲けるための施設」というロジックで考えることが違うのではないか、と思います。

党本部はどう言っているのか

で、これらの反対運動を主張しているのは、だいたいは党の都道府県委員会などの地方組織。では、党本部はどんなことを言っているのだろうと検索してみましたが、特定の施設の是非に関して直接言及しているものは見当たりませんでした。

ただし、「日本共産党の政策」としてこんなものが出てきました。

①スポーツ基本法にあるようにスポーツは「国民の権利」であり、その保障は国の責務です。現在、公共スポーツ施設の老朽化や深刻な減少がすすんでいます。しかし、国はその対策を放棄している状況です。国費によるスポーツ施設整備費は〝雀の涙〟の年間40億円ほどです。施設整備計画の策定とともに、予算の大幅な増額と地方自治体の負担軽減に力を注ぎ、多くの国民がスポーツに親しめる環境を整えます

「日本共産党 2021 総選挙政策 分野別施策 61.スポーツ」より抜粋

2021年の総選挙の時の政策集ですが、これを読む限りはスポーツ施設の整備そのものに関してはかなり前向きなんです。
但し、その後にこういう言葉も続きます。

②「誰もが気軽に使えるスポーツ施設」をめざし、利用料金の適正化、指導員やスタッフの増員などの充実をすすめます。

地域のスポーツ活動の拠点である学校開放施設を増やし、用器具の充実、シャワーや夜間照明の整備、スポーツ指導員の配置など、その充実をはかります。

「日本共産党 2021 総選挙政策 分野別施策 61.スポーツ」より抜粋

つまり「するスポーツ」の施設はどんどん充実させましょう、とは言っているんですね。一方で「見るスポーツ」の施設に関しては全く触れられていない
一方で、直前に行われた東京オリンピックに関してこんなことを言及しています。

第2は、商業主義の過度な依存を改めることです。IOCの財源の7割はテレビ放映権料が占めています。東京大会強行の背景にテレビマネーがあると報じられています。夏季大会では、テレビ局の意向により競技スケジュールの変更や酷暑の中での開催が強要され、主役である選手を苦しめています。商業主義への依存体質の克服はIOCと五輪改革の急務となっています。

「日本共産党 2021 総選挙政策 分野別施策 61.スポーツ」より抜粋

つまり何が言いたいか。
これを読んで考えてみるに、日本共産党が「ビジネスとしてのスポーツ」或いは「スポーツビジネス」そのものに否定的な考えを持っていると感じられます。
プロスポーツというのはどこかでビジネス的な観点が否定できませんから、「ビジネスとしてのスポーツ」につながる施設の建設(或いはそこに向けての設備の充実)に反対する、という発想が出てくるのではないかとみることが出来そうです。

国の「スタジアム・アリーナ改革」に関して日本共産党の政策として言及している部分は見つけられなかったのですが、上で触れたように、民間資金を活用する前提のスタジアム等の整備に関しても否定的な意見を議会で述べている人がいるところをみると、党としての考え方はやっぱりそういうところなのね…と感じるところです。

考えてみれば、日本共産党はスポーツくじの導入にも「スポーツ振興に逆行する」として強く反対していましたし、スポーツは青少年の健全育成のものであって、そこにビジネス(商業主義)を絡ませること自体がまかり成らん!という姿勢なのではないか、と見て取れます。

よく、サッカー界隈の方の意見として「日本共産党はサッカーが嫌い」という意見が散見されますが、私個人の意見としては、日本共産党は「サッカーが嫌い」なのではなく「プロスポーツが嫌い」なのだと思っています。
(じゃあ、日本共産党がプロ野球や大相撲にネガティブな意見が少ないのはなぜかと聞かれると困るのですけど、そこらへんは「支持層との関係」なんじゃないですかねぇ…?とだけ答えておきます)

ただ、「ビジネスとしてのスポーツ」の全否定って、明らかにスポーツの競技力(選手個人も、チームも、その環境も全て)の低下を招くのではないか、ってのはすぐに想像がつきそうなものなんですけどね。
かつてのソビエト連邦や中国のように、選手強化を全て国家で管理しろ!とでも言うのであれば別でしょうが…
(今でもそんなことをやっている国は皆無だし、ステートアマが亡命してプロスポーツ選手になったという事例も山ほどあるし)

ちょっと脱線しましたが、日本共産党という政党(政治組織)がそういう基本的考え方を持っている限り、日本共産党とプロスポーツとはどこまで行っても相性が悪いんだろうねぇ…としか言い様がないですね。

というわけで、この話はここまで。
次回からは最近整備された(あるいは整備中)の球技専用スタジアムの話に触れたいと思います。

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