KazumaAkiba

"映画の魔法にかけられて" 映画についての記事をアップしていきます

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最近の記事

新作映画『モンタナの目撃者』レビュー

久々にスクリーンで会うアンジェリーナ・ジョリー。良心的な副保安官を演じるジョン・バーンサル。謎の殺し屋コンビを演じるニコラス・ホルトとエイダン・ギレン。この顔ぶれが良い。これだけ多彩な人が集まれば、もうなんでもできるような気がする。加えて、監督を務めるのが『ボーダーライン』(2015)、『最後の追跡』(2016)の脚本家であり『ウインドリバー』(2017)の監督・脚本のテイラー・シェリダン。アメリカの地方の現実や、緊張感あるサスペンス描写に定評がある実力派である。有名俳優がこ

    • 新作映画『アナザーラウンド』レビュー

      昨年各地の映画賞で話題になっていた頃から、気になっていた作品。しかもアカデミー賞授賞式でのトマス・ヴィンターベア監督のスピーチが今でも忘れられないのだが、この映画の撮影開始4日目に監督の愛娘が交通事故で命を落としたという。彼女は本作で、主人公の娘役として映画デビューを飾るはずだった。悲しみに暮れる中、マッツ・ミケルセンをはじめ周りの温かなサポートにより、娘のためにも作品を完成させなければという思いで作り上げられた本作。そうした作品の背景も踏まえて、興味が湧かずにはいられなかっ

      • 新作映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』レビュー

        イーグルスが1976年にリリースした同名アルバムに収録されている"ホテル・カリフォルニア"。 非白人がアメリカで周りと打ち解けるきっかけ作りにはうってつけの名曲だ。それだけアメリカの社会や文化に浸透し、かつ世界的にも知られている有名曲。それがまさか2021年に、マーベルの新作映画で引用されるとは。イーグルスは永久不滅だ。今夜はこの名曲を聴きながら、映画のしあわせな余韻に浸ることにしよう。 【ストーリー】アメリカ・サンフランシスコで暮らす普通の若者ショーン(シム・リウ)、親

        • 新作映画『ジャングル・クルーズ』レビュー

          皆さんは、『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(2003)を初めて映画館で観たときの興奮を覚えているだろうか。大海原を駆け巡る海賊たちの大冒険、そしてキャプテン・ジャック・スパロウやキャプテン・バルボッサをはじめとする魅力的なキャラクターたち。さらにはディズニーランドの名作アトラクションが原作ということで、牢屋で鍵を加えた犬や「ヨーホーヨーホー」のあの曲など、アトラクションの名場面が散りばめられた夢のような映画であった。あれから18年、またもやディズニーランドの

        新作映画『モンタナの目撃者』レビュー

          新作映画『フリー・ガイ』レビュー

          何度も公開が延期され、ようやくこの夏に劇場公開がされた映画『フリーガイ』。しかも宣伝では"劇場でのみ公開"という点が強調され、最近のディズニーの劇場公開と同時配信というスタイルを暗に皮肉っている。予告編である程度のストーリーと作品のテーマが見えてしまいそうだが、実際に鑑賞してみると予想のさらに一歩先を突いた、ただの娯楽では終わらないなかなかよくできた作品だった。 【ストーリー】毎日変わらないモーニング・ルーティーン、いつものブルーシャツとネクタイを締めて出勤するガイは、フリ

          新作映画『フリー・ガイ』レビュー

          新作映画『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』レビュー

          1969年、ニューヨークのハーレムで行われた"ハーレム・カルチュラル・フェスティバル"。真夏の強い日差しの下にも関わらず、のべ30万人以上の観客が参加し当時最高峰の黒人ミュージシャンたちのパフォーマンスを見届けた。しかし、その様子を記録したフィルムは誰の目にも触れることがなく眠り続け、50年以上が経った今遂に世界が目撃することになる! 【レビュー】夏の暑さも相まって、最高潮にヒートアップした音楽ライブ。もしこれがこのまま永遠に封印されたままだったとしたら、人類史にとって悲劇

          新作映画『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』レビュー

          ディズニー映画『ラーヤと龍の王国』レビュー

          今年の3月5日に劇場公開とディズニープラスでの配信が開始された本作。ただ劇場も限られていたので、見逃している人も多いだろう。私自身もようやくこのタイミングで見ることができたのだが、ディズニーアニメーション映画の新境地を開拓した素晴らしい作品だったので紹介したい。 【ストーリー】かつてクマンドラで龍と人間が共に暮らし、人々は争うこともなく心を一つに平和に過ごしていた。ある時、ドルーンと呼ばれる恐ろしい怪物が出現し、恐怖をエサに増幅しながら人間たちを次々と石に変えていく。残され

          ディズニー映画『ラーヤと龍の王国』レビュー

          新作映画『サマーフィルムにのって』レビュー

          映画に憧れ、自分の作品を撮りたいとがむしゃらになっていたあの頃。小学4年の時に総合学習でグループに分かれてビデオカメラで何か撮ろうとなった時、自分が提案したのが時代劇だった。祖父と一緒に小さい頃から「暴れん坊将軍」を観ていて、チャンバラやあの世界観に憧れていたのだ。そんな子どもの頃、あるいは学生時代の気持ちを瑞々しく活写し、かつての記憶を蘇らせてくれる作品が松本壮史監督『サマーフィルムにのって』だ。 【ストーリー】時代劇が大好きで、中でも勝新太郎に憧れる女子高生のはだし。自

          新作映画『サマーフィルムにのって』レビュー

          新作映画『ザ・スーサイドスクワッド/"極"悪党、集結』レビュー

          冒頭、おなじみワーナー・ブラザースのロゴマークと共に聴こえてくるのはアメリカのカントリー歌手ジョニー・キャッシュによる1955年の名曲"フォルサム・プリズン・ブルース"。フォルサム州立刑務所に投獄された男の気持ちを歌い上げた曲だ。 "列車がやってくるのが聞こえる あの角を曲がって 俺が太陽を拝めなくなってから もうどれくらい経つだろう フォルサム刑務所に閉じ込められ 時間だけが引き延ばされる だがあの列車は知らんぷりで走り続ける サン・アントニオに向かって" (以

          新作映画『ザ・スーサイドスクワッド/"極"悪党、集結』レビュー

          映画『クルエラ』レビュー

          ディズニーが1961年に制作した映画『101匹わんちゃん』に登場する悪役、クルエラ。特殊能力を持たない人間にも関わらず、マレフィセントやアースラーなどと並びディズニー・ヴィランとして人気を博す。1996年には『101』として実写化され、クルエラ役を名優グレン・クローズが演じた。そのためクルエラというキャラクターについてはすでにアニメ・実写で描かれて来たわけだが、彼女自身が主役になった映画は今回が初めてになる。それが、今年劇場公開・ディズニープラス限定公開されたクレイグ・ギレス

          映画『クルエラ』レビュー

          新作映画「トゥモロー・ウォー」レビュー

          映画を観ながら、どうしても声を出さずにはいられない時がある。「いけ、やっつけろ!」「がんばれ、負けるな!」手頃なクッションや枕を敵だと思って夢中で打撃を加えた結果、部屋に埃が舞う。でもそんなこと気にしない。だって自分は今、映画の主人公と一緒に世界を救うために戦っているのだから。手にしたリモコンで狙いを定め、引き金をひく。命を散らした仲間のために、主人公の代わりに涙を流す。 いくら感情的になって騒いでも誰にも迷惑がかからないのが、自宅鑑賞の良いところ。そして家の小さなテレビ画

          新作映画「トゥモロー・ウォー」レビュー

          注目映画『あの夜、マイアミで』を観てほしい理由

          Amazon Primeで配信中『あの夜、マイアミで』(原題One Night in Miami)は、ブラックカルチャーのレジェンド4名がマイアミのホテルに集い語り合った、奇跡のような一夜を描いた戯曲の映画化作品だ。実際に1964年2月、カシアス・クレイ(のちのモハメド・アリ)の世界王者獲得を祝うために4名が集まったという史実に着想を得て、会話の内容はすべて創作されている。本年度アカデミー賞では助演男優賞、脚色賞にノミネートを果たしており、その他にも数々の映画賞で高く評価され

          注目映画『あの夜、マイアミで』を観てほしい理由

          『博士と狂人』名優ふたりの新たな代表作の誕生

          メル・ギブソンとショーン・ペン。 長年活躍してきた映画スターであり、名優のふたりが共演する時が来るなんて、誰が想像しただろうか。しかもふたりとも、暑苦しいくらいのパワフルな演技が強みであり、常軌を逸した役柄ばかりを演じてきた個性派でもある。同じ画面にふたりが顔を並べるだけで相当な圧力だろうと期待しながら、ついに映画館で鑑賞の時を迎えた。 作品紹介 本作は、メル・ギブソンが長年映画化を望んできた企画だと聞く。映画会社との衝突などもあり、なんとか完成に漕ぎつけた意欲作だ。 19

          『博士と狂人』名優ふたりの新たな代表作の誕生

          記憶に残る俳優たち1 【ショーン・ビーン】

          大好きな映画に登場する俳優について紹介する文章を書きたいなと思った時に、まず浮かんだのがショーン・ビーンであった。現在、六本木をメインに開催中の東京国際映画祭に出品されている、『ポゼッサー』の予告編を観て久々に姿を見た事もきっかけではある。だがそれ以上に、私がメジャーな大スター以外で「役者としてこの人が好き」と初めて認識したのがショーン・ビーンであったと記憶している。 出会いはLOTRのボロミア役 おそらく、彼にとって最も世界に名の知れた作品は2001年の『ロード・オブ・

          記憶に残る俳優たち1 【ショーン・ビーン】

          創作についてつぶやき#1

          こんにちは。 「創作には限界がある」そんな風に思うこと、ありませんか? 自分も映画の原案を考えている時などに、最初は良いアイデアだなと思いつつも、すでに同じようなものが作られていて今更作る意味がないんじゃないかという負のスパイラルに落ち込むことが多々あります。 あるいは、それで収入が得られるかもわからないし、観てくれる人がいるかも分からない。やること自体に社会的意味があるのかという疑問に対して、答えられないとき。創作自体の意義を感じられず、頭が真っ白になってしまう。

          創作についてつぶやき#1

          普遍的な人間ドラマを描き続けるピクサーの変わらぬ精神を宿した『2分の1の魔法』

          延期を経てようやく日本でも8月21日より公開を迎えた、ディズニー・ピクサー最新作の『2分の1の魔法』。公開初日に映画館で鑑賞し、変わらないピクサーのポリシーに感動したので書かせていただきます。ネタバレはしませんのでご安心ください。 ピクサーの制作方針“Pixar's stories rise out of the life experiences of the people who work on our films and we always want those fil

          普遍的な人間ドラマを描き続けるピクサーの変わらぬ精神を宿した『2分の1の魔法』