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私の秘境駅探訪記3選(糠南、奥大井湖上、土合)

今となっては「秘境駅」という概念も普及し、あまつさえ観光資源として維持されたり観光列車が催行されたりしていますが、「秘境駅」ブームのきっかけを作った「秘境駅訪問家」の牛山隆信さんの書籍は私も何冊か購入して読んでいます。

牛山さんのエピソードで個人的に印象的なのは、宗谷本線にかつてあったとされる神路駅の跡地に訪れる際に、何を思ったか天塩川を自力で渡川して訪れようとして川の激流に流され溺れかけ、死の淵からやっとの思いで生還したばかりだというのにその日の宿泊地に秘境駅の糠南駅のコンテナ野宿を選んだお話。
本当の革命家・先駆者の人は、常人の価値観で推し量ってはいけないのだなと心から思います。

秘境駅には何か心を惹きつけ踊らせるものがあるので、私も機会があれば訪れてみたいなという気持ちはありますが、なかなかそれだけを目的に旅をするというのも難しいのため、私が訪れた箇所はかなり限定的です。

この記事では、私が訪れた秘境駅を3つピックアップして記事にしてみます。全部有名所なので、あまり新鮮味・面白味はない記事かもしれません。

宗谷本線 糠南駅・問寒別駅・雄信内駅

問寒別駅〜糠南駅〜雄信内駅
糠南駅

木製のホームの上に雑に置かれたヨドコウ物置、周りは民家が見当たらない一面の田園風景。
ビジュアルがインパクトがあるため「秘境駅の代表格」として取り上げられることの多い糠南駅ですが、隣駅の問寒別駅から車で10分程度、歩いても30分でつく距離にあり、道路のアクセスが便利でかなり訪れやすい秘境駅です。稚内からでも1時間ちょいでたどり着くことができます。
であれば秘境とは何なのかという話にもなりそうですが、周囲には人が住んでいる形跡が全くなく、なぜここに駅を作ったんだろうというミステリーとともに多くの人に親しまれている駅だと思います。

物置の中は待合室になっており、時刻表や運賃表、雪国らしく雪掻きの道具などが置かれていました。来場者が多いためかとてもきれいに整備されていて、駅メモや、持ち帰り可能なポスターなどが置かれており、「秘境」という響きから感じる怖さみたいなものとは皆無です。
ただ、周りには人の気配はなく、鉄道施設以外に文明的なものの存在が見当たらない、とても静かなせいせいした空気感の秘境駅です。

ちなみに、糠南駅ばかりが注目されますが、両隣の駅もそれぞれ独自の雰囲気を持っていて、訪れる価値のある駅だと思います。

問寒別駅はこのあたりの中心拠点なのですが、駅舎の佇まいは独特な存在感で、ホームへも何も遮るものがなくフリーアクセスできるアクセシビリティに配慮された作りになっています。線路は2線分のスペースがあり昔は栄えていたんだろうなと感じさせます。

問寒別駅

反対側の稚内方面側にある雄信内駅は、駅舎が歴史情緒ある作りでかつての賑わいを感じさせるのですが、幌延町公式サイトでも記載されていた通り現在は駅周辺がゴーストタウン化した、ということで一部界隈で話題になっている駅です。

雄信内駅

いずれの駅も車でのアクセスは特に不便ではなく行きやすい場所にありますが、それでも人の気配が無い「秘境駅」扱いとなってしまうのが、道北のおかれている現状なのかな、とは感じます。
ここで取り上げた3駅(糠南、問寒別、雄信内)はいずれもJR北海道により廃止の検討が進められていると報じられており、早ければ2024年春には廃駅となる可能性がありますが、それも経済合理性的にはやむ無しかなと感じます。

ということで、意外と近いうちに今の風景が失われるかもしれないので、訪れたいと思っている方はいまのうちに訪れるべきかなと思います。
ロマン的には鉄道で訪れたいですが、現実的には稚内からレンタカーで車で訪れるのが一番便利だと思います。

大井川鐵道 奥大井湖上駅・尾盛駅

閑蔵駅〜尾盛駅〜奥大井湖上駅
奥大井湖上駅

大井川流域を走る大井川鐵道は、昔はダム工事や林業などの用途で使用されていた鉄道路線だと思いますが、現在はほぼ観光路線として維持されている路線かなと思います。沿線は極めて急峻な山間を縫うように走っており、それが故に「秘境駅」の宝庫のような場所です。
奥大井湖上駅は、駅名に「湖」とあることもあり湖にぽつんと浮かぶ小島のようなビジュアルの駅で、見た目にも大変風光明媚な人気のある駅です。実際は湖でも島でもなくて大井川が大きく蛇行してこのような見た目になっているようです。

橋は徒歩で歩くこともできます

奥大井湖上駅には「ハッピーハッピーベル」と名前がついた鐘がありますが、見るべきものはそれくらいで、やはり絶景のほまれ高い風景を遠景で望みたくなります。駅を降りてから陸橋を歩いて渡り、遊歩道の階段を登っていくと、お目当ての風景にたどり着くことができます。

現地の地図。川根本町観光協会のサイトより引用

大井川鐵道の本数はとても少なく、奥大井湖上駅も1日5往復しか停車しないため鉄道で訪れると帰路に1〜2時間待ちという形になりがちです。
そのため車で訪れる人が多いようですが、絶景スポットの近くには駐車場が少なく数も限られているためか、周囲への違法駐車が目立ち問題になっているようです。

私が訪れた際は以下のルートで訪れましたが、これが正解ルートかどうかは判断がつかないところです。

静岡駅からレンタカーで接岨峡温泉駅の近くの長島公園に移動(駐車)
接岨峡温泉駅からバスで閑蔵駅に移動
閑蔵駅から大井川鐵道で奥大井湖上駅まで移動
徒歩で長島公園まで移動
車で静岡駅まで移動

奥大井湖上駅周辺には特色ある駅が多く、接岨峡温泉駅は近くに「川根本町資料館やまびこ」という展示施設があり地域の事について学べますし、外界と完全に断絶されたレベルの高い秘境駅と名高い尾盛駅なども訪れる価値があります。尾盛駅は特に大井川鐵道でないとほぼアクセス不可能なため、この辺に訪れたならばやはりできれば大井川鐵道には乗車するのが楽しいかなと思います。

接岨峡温泉駅
川根本町資料館やまびこ
閑蔵駅
尾盛駅のたぬき

しかし、現在は、2022年の台風15号の被害により大井川鐵道は一部区間で不通の状態が続いており、金谷駅から鉄道で乗り通して奥大井湖上駅までアクセスすることが不可能な状態になっています。

今訪れるとしたら、代行バスで移動するか、直接車で訪れるか、という感じになりそうです。車で訪れるにしても、対向車とのすれ違いもままならない「酷道」として名高い国道362号経由で何時間かかけてアクセスする必要があり、なかなか訪れる難易度が高い場所ではあるなと思います。

静岡県は近年毎年のように大規模水害による甚大な被害が発生しており、その復旧の速度も他自治体と比べても明らかに遅遅として進まない現実があります。なぜそうなっているのかは余所者である私にはわかりませんが、今まで存在していたものが来年には失われている、ということが他県に比べて多い印象があり、訪れたい場所は訪れられる時に行っておくべきだなと切に感じます。

上越線 土合駅 (えちごトキめき鉄道 筒石駅)

水上駅〜土合駅
土合駅

土合駅は、ホームが地下深くにあるいわゆる「モグラ駅」ということで最近人気が出てきている駅です。私は土合駅については鉄道で訪れましたが、この駅で下車した人の大半は見た目あきらかに鉄道好きっぽい人たちでした。

土合駅については上越線以外にもバス路線も存在しており、そこまでアクセスが大変な駅という印象はないです。それでも「秘境」たらしめているのは、「日本一のモグラ駅」という独自性が大きいのかなと思います。
私も486段あると言われる階段を降りて登ってと体験してみました。鉄道好きの人が多くて写真を撮るのがためらわれたので、残念ながら手元に写真はありません。

糠南駅や奥大井湖上駅と異なり、土合駅は十分に実用的な駅です。ここは谷川岳の登山拠点となる「谷川岳ロープウェイ」の最寄り駅。そのため、登山シーズンになると、多くの人は車で訪れるのでしょうが、それでも鉄道を使って谷川岳にアプローチする人も多く見かけるようになります。

谷川岳登山口

「モグラ駅」繋がりだと、私は他にはえちごトキめき鉄道の筒石駅に訪問した事があります。海沿いから山間に分け入ったところにポツンと存在する駅で、土合駅以上に周囲に何もない、より秘境感の強い駅です。
昔は近くの漁港で取れた魚を運搬するために利用されていたようです。

直江津駅〜筒石駅
筒石駅

筒石駅は1時間に数本列車がやってくるため、土合駅よりも訪れやすいですし、列車を観察しやすい場所です。今は季節運行の急行を除くと筒石を通過していく定期列車はないようですが、駅通過時には強い圧力波が発生するため避難用のシェルターが用意されているのがモグラ駅ならではの風景ですね。

退避用のシェルター。列車到着までここで待機することが推奨されている

土合駅も筒石駅も、駅の乗降人数は多くはないですが、今日明日に廃線になるような路線ではないので、しばらくは今の姿のまま維持されていくのかなと思います。

私が訪れた秘境駅のうち見た目のインパクトがある3駅をピックアップしてみましたが、見た目の特色もそれほどなく利用者も少ないため人知れず廃駅になる駅も近年は多く、その中で「秘境駅」だと面白がって扱ってもらえる駅はまだ幸せな方なのかもしれません。
そしてそれらの秘境駅も、いつまでも存続できるかというとその将来についても必ずしも明るいものばかりではないのは、秘境呼ばわりされるが故でしょうか。

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