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サバ捌きから始まった、特殊冷凍によるアニサキス死滅立証の裏側!冷凍、加熱に次ぐアニサキス対策の開発も各地で進む

先日、特殊冷凍による寄生虫アニサキスの死滅を立証し、アニサキスの冷凍処理基準(-20℃以下24時間)を、一般的な業務用冷凍庫の1/10以下の所要時間で達成することをデイブレイクのプレスリリースで発表しました。

実はこのプレスリリース、作成に約1カ月かかったというなかなかの長期戦。本記事では、プレスリリースでは紹介できなかった実証実験の裏側と、アニサキスと対峙する生産者の声、冷凍・加熱に次ぐ方法として開発が進むアニサキス処理技術を紹介します。

サバ捌き、アニサキス探しから開始!身を眺めていても見つからず・・・?

この実験、特殊冷凍でアニサキスが死滅するかどうかを科学的に立証するために、アニサキス探しから始まりました。まずサバを捌いて、目視でアニサキスを探します。

内臓で発見。そこから続々と

目視でのアニサキス探し開始から10分。身をじっと見ていましたが、アニサキスは現れません。別のサバで試すしかないかと思っていた時に、ラボリーダーが「内臓を探そう」と提案。内臓を探していくと、見事、アニサキスを発見!その後次々に発見されました。内臓にいたアニサキスが筋肉に移動した写真がこちら。

アニサキスは魚の内臓の寄生していて、魚が死ぬと身(筋肉)に移動します。鮮度の良いサバだったので、アニサキスがまだ内臓にいたということですね。

目視より増えた!?隠れアニサキス

これらのサバを特殊冷凍したのがこちら。これを厚生労働省の基準に合わせて24時間冷凍保管し、検査機関に提出しました。検査結果が出るまで2週間。これがそもそもアニサキスなのか、アニサキスであれば死滅していたか。首を長くして結果を待っていました。

そして2週間後、目視した寄生虫はアニサキスで、いずれも死滅していたという判定が到着。よかったと安堵するとともに、驚きもありました。私が目視で確認したアニサキスは1切れ2体ずつでしたが、検査結果によると、それぞれ3体、4体発見されていました。つまり、目視できないアニサキスが、サバの身の中にいたということ。
厚生労働省では【目視による除去、冷凍、加熱】をアニサキス食中毒の予防策としてあげていますが、見えないところに潜んでいる可能性があるということが分かります。また、今回使用したサバはたった1匹。この1匹から、提出した検体だけで計7匹のアニサキスが発見されるという確率の高さにも驚きです。

海水温の上昇が関係?アニサキスの被害状況

次は生産者の声集めです。アニサキス被害の状況を水産関係の事業者に聴き取りしたところ、近年海水温の上昇の影響で、これまでとれた魚がとれなくなったり、逆にこれまでいなかった魚がとれるようになったり。魚の生息域が変化していると言います。これと同様に、アニサキスもこれまでは被害が比較的少なかった北海道や日本海側でもアニサキス被害が増えているとのこと。また、鳥取県では、イワシは豊漁で、イワシが原因のアニサキス中毒事故が多くなっているという話もあります。

近年アニサキス被害は増加傾向にあり、様々な意見がありますが、
・輸送技術が発達し、生の魚が流通するようになったこと
・海水温上昇による魚の生息域の変化
・アニサキスの終宿主であるクジラの増加
などが要因ではないかと言われています。

冷凍、加熱以外のアニサキス対策も開発が進む

また近年、冷凍や加熱に次ぐアニサキス処理技術も各地で開発が進んでいます。

・電気を流してアニサキスを死滅させる(福岡県)
アジやサバの生食加工品を手掛ける福岡県の水産加工メーカーは、魚に電気を流して瞬間的にアニサキスを死滅させる装置を開発。LEDや近赤外線、超音波装置を試すなど、30年の試行錯誤があったといいます。

・養殖でアニサキスのいないサバを開発(鳥取県
鳥取県では、養殖されたアニサキスの心配が要らないサバが開発されてます。寄生虫がいない稚魚を塩分を含む地下水で養殖し、出荷まで寄生虫がいない環境を実現。箱入りで育った「お嬢サバ」という名称で販売され、生でサバが食べられるとして注目されています。

・紫外線をあてるアニサキス検出装置をスーパーに設置(和歌山)
和歌山県の板金加工メーカーは、魚の切り身に紫外線を当ててアニサキスを検出する「アニサキスウォッチャー」を開発。大手スーパーで100台導入するなどの実績を積み、コンパクトなハンディタイプも登場したようです。

これらの冷凍、加熱以外のアニサキス処理技術は、生で魚を食べたいけれど冷凍すると品質が落ちてしまうから。日本の生食文化を守るために。という想いで開発されたという話が紹介した記事にもありました。サンマやイワシなどの小型の魚は冷凍に向かない—。従来そう言われていましたが、最近は冷凍技術が発達し、「特殊冷凍」で冷凍したイワシの刺身を提供される飲食店もあります。(それも、イワシの刺身が看板料理の海鮮料理店)
特殊冷凍によるアニサキス死滅処理が有効であり、所要時間が圧倒的に短縮されることが、今回科学的に立証でききました。アニサキスを予防し、美味しく安心安全に鮮魚を食べる方法の一つとして、「特殊冷凍」を改めて知っていただけることを願います。

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