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ロスト・エモーション 感情が排除された世界で愛を育てられるか?

あらすじ

近未来。人類史上かつてないほど深刻な世界戦争が起こり、陸地の99.6%が破壊された。生き残った者たちは人類を破滅させる元凶は感情だと結論付け、平和的に人類が生存できるよう遺伝子操作で人間から感情を排除。共同体イコールズをつくり、そこで暮らす全ての人間を保健安全局の監視下に置いた。
しかし感情を呼び起こす感染症が発生。愛情や欲望をはじめとする感情が芽生えた者は隔離施設に強制連行され、安楽死させられる。感情に目覚めたサイラス(ニコラス・ホルト)とニア(クリステン・スチュワート)は危険だと知りつつ惹かれ合い、外の世界へ脱出しようとするが……。

感想

感情が抑圧される時代を舞台にしたデストピアSF映画というとクリスチャン・ベイル主演「リベリオン」があるけど、この映画は恋愛感情の芽生えと抑圧の中で愛を育てていく展開を通じて人間讃歌を歌い上げている。
サイラスとニアが、気がつくと相手を探し見つめてしまう抗い難い恋心に目覚める戸惑い、相手と言葉や視線を交わし心や気持ちを通じ合わせる喜び、指先や顔に触れた時の胸の高鳴り、管理者からふたりの関係を隠すためにすれ違いざまにお互いの指先を触れ合わせたり視線を交わし合わせ残業を装い逢瀬を重ねる度に想いが募る恋愛描写がロミオとジュリエットを彷彿とさせるピュアさです。ふたりの関係が管理者にバレて半島に渡るために仲間と協力しながら管理者を出し抜く緊迫感のあるサスペンス、ニコラス・ホルトとクリステン・ステュワートふたりの感情抑えめの演技の中でピュアな恋愛感情が溢れだす秀逸な演技、「君の名は」のように運命や抑圧を越えた熱い相手を求める感情があればこその人間讃歌を歌い上げている傑作SFサスペンス映画です。
ロケ地となった長岡造形大学や淡路夢舞台など安藤忠雄の建築物の、無機質な雰囲気が、感情を抑圧されるデストピアにふさわしいです。

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