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ボードゲームのゲームデザイン:第1の柱「目的」

この記事は、ボードゲームのゲームデザインにおける「目的」についてお話するものです。

第1の柱「目的」

おはようございます。I was game の上杉です。

このnoteでは、「ボードゲームのゲームデザイン」という名目で、現代的なボードゲームのゲームデザインについてお話していこうと思っています。

現代的なボードゲームに興味のある方、あるいは、ボードゲームを作ってみたい方向けの内容になるかなと思います。

具体的にどんな話をするかと言いますと、僕の考えるボードゲームのゲームデザインの12個の柱というものについて、その柱を一つずつ巡っていく巡礼の旅、というのをやっていこうと思っています。

本日、第1回目のテーマは「目的」です。ゲームプレイにおける目的というものを扱っていきます。

向かう港を知らぬ者には、順風が吹くことはない

話を始める前に、一つ僕の好きな言葉を紹介させてください。「向かう港を知らぬ者には、順風が吹くことはない」という、セネカの言葉です。

あなたが船に乗っていて、でも、自分の進みたい方角というものがなければ、風がどちらへ吹いたとしても順風とはならない、ということですね。

つまり、もし自分に追い風が吹いてほしいと思うんだったら、自分の目的地をはっきりさせなければならないということです。仮にあなたが旅に出たとして、目的地がないんだったら、家を出たあと、西に行けばいいのか東に行けばいいのか分からないですよね。

目的地がなければ前進することはありえない、ただ無駄に歩くことしかできない、ということです。

今回ここでお話するのも、この言葉のような話になります。

「目的」の定義

ここからが本題なんですが、まず、ゲームプレイにおける目的とは何なのか、目的っていったい何なんだ、というところをお話しておきます。

この話の中では、「ゲームの中でプレイヤーが達成を目指す事柄」というものを目的として定義してお話していきます。

すごろくで言えば、「誰よりも早く一番最初にゴールに到達すること」。『カタン』で言えば、「勝利点を10点集めること」。そういうのが目的です。

もしゲームに目的がなければ

まず、仮定の話から入りたいと思います。もし仮に、ゲームに目的がなかったとしたらどうなるか。

『カタン』の例で言えば、「10点集めたら勝ちですよ」という目的がなかったとしたら、開拓地を置いたり都市を置いたりして、1点2点と得ていったとしても、何にもならないですよね。

開拓地や都市からいろんな資源が産出されて、たくさんカードを得て、発展カードを引いて、勝利点のついてるカードを引いたとしても、何にもつながらない。

なぜかと言うと、どれだけ勝利点を集めたところで、目的に寄与しないからです。

なので、もし目的がなかったら、プレイヤーのアクションに意味がなくなってしまうということです。逆に言えば、目的こそが、プレイヤーの行うすべてのことに意味をもたせているとも言えます。

ゲームでは、良い手と悪い手があって、その積み重ねによってゲームの勝敗が分かれていくわけですけれども、もし目的がなかったら、プレイヤーの行う一手一手に良いも悪いもなくなってしまう。プレイヤーの行う全てのことに何の意味もなくなってしまう、ということですね。

目的の役割

「目的なんてどんなゲームにもあるでしょう。ルールブックの最初に、『このゲームにおけるあなたの目的は、誰よりも多く勝利点を集めることです』みたいに書いてあるでしょう」と思われるかもしれないんですが、じゃあその目的は、本当に目的としての役割をちゃんと果たしているのかというのが、また一つ重要になってきます。

目的には大きく二つの役割があると思っています。そのうちの一つ、特に重要なものが、「プレイヤーに、ゲームの中で進むべき道のりを認識させること」です。

例えば、現実世界で、「あなたの目的は5,000兆円稼ぐことです」って言われたとしたら、何したらいいのか分からないですよね。「1年後に5,000兆円稼いでいてくださいね」という目的を設定されたとして、じゃあ今日、今この瞬間に次何をしようかとなったら、あまりにも目的が遠すぎて、何をしたらいいのか分からなくなっちゃいますよね。

実際のボードゲームでも、プレイするときに、ルールの説明、いわゆるインストラクションを終えて、「ルールは全部分かったんだけど、じゃあこの目的を達成するために1ラウンド目に何したらいいんだろう」と思うことってありますよね。

見通しが悪い

これはよくボードゲームの界隈では、「見通しが悪い」という言葉で表現されますけれども、見通しの悪いゲームが生まれる原因というのが、要は、自分が今立っている場所と最終的な目的地を、プレイヤーが頭の中でつなげられないときに、ゲームの見通しが悪くなるんじゃないかなと思っているんです。

ゲームの構造って、ほとんどの場合どんなゲームも、リソースをアクションによって支払って、それを自分の進捗に変換して目的の達成に近づいていく、というのが基本のつくりになっていると思うんですけど、これを川渡りに例えるとすると、目的というのは対岸――向こう岸で、プレイヤーが行うアクションというのは、1回1回のジャンプなんですよね。

1回のジャンプで跳べそうな川だったら、単に1回跳べばいいだけなので簡単な話ですよね。でも、基本的にゲームというのはそうなってはいなくて、川の途中にたくさんの飛び石があって、そこを何度もジャンプして川を渡っていくという構造になっていますよね。

その飛び石も、1列にずっと続いているわけじゃなくて、枝分かれしたりしていて、いろんな道がある、その上をプレイヤーはどんどんジャンプで、アクションによって跳んでいかなければならない。

大きいゲームになると、川の向こう岸が見えないようなときがあるわけです。あまりに川が大きすぎて、飛び石がずーっと続いているんだけど、川の向こう岸は遠すぎて全然見えない。そんなときには、見通しが悪くて、こっちの石に跳んだらいいのか、それともあっちの石に跳んだらいいのかというのが分からなくなって、プレイヤーは途方に暮れてしまう。

それを防ぐために、ゲームデザイン上何ができるのか、というところなんですが、ここで出てくるのが「小目標」ですね。

小目標

小目標の重要性というのは、どれだけ強調しても足りないくらいで、ゲームデザイナーにとって非常に便利な道具ですね。

例えば『カタン』で言うと、『カタン』のセットアップって、各プレイヤーが開拓地二つと、そのそれぞれに道を一つずつ置きますよね。そうすると、『カタン』の道って1本つながってるだけでは意味がないので、じゃあもう1本つなげようかな、ってなりますよね。ここで道を一つ作ることが、最初の小目標になっている。プレイヤーは最初の道を作るために、まず木とレンガを集めるぞ、といように動機づけされるわけですよね。

その道を作れたら、今度はその先に新しい三つ目の開拓地を作りたくなって、今度はまた、木とレンガと羊と麦を集めるぞ、というモチベーションが生まれる。

要は、遠い遠い対岸に行くまでの間に、飛び石がたくさんあるわけですけど、そのちょっと自分から離れたところに、色のついた大きい重要そうな飛び石があって、「ああ、あれを辿っていけばいいことが起きそうだな」と、そうやってプレイヤーを誘導しているわけですよね。

これが「小目標」です。

小目標というのは、要は、ゲーム全体をいくつかのパートに分解して、プレイヤーが認識可能なサイズにまで落とし込むマイルストーンなんですよね。

結局目的というのは、さっきも話した通り、プレイヤーの中にゲーム全体の道筋を認識させるメンタルモデルを作ることが一つの役割なので、あまりにそれが遠すぎてプレイヤーが認識できないような場合は、それを小目標によって分割して、プレイヤーが理解できるサイズにまで落とし込んであげる、ということをやっているわけですね。

『アグリコラ』における小目標

小目標のいい例としてもう一つ、『アグリコラ』があります。

『アグリコラ』というのはワーカープレイスメントゲームで、最初、プレイヤーは二つのワーカーしか持っていないから、各ラウンド、2アクションしかできないんですよね。もしワーカーが1人増えたら3アクションできるようになって、毎ラウンドの出力が1.5倍になるという、すごく嬉しい感じのする設計になっていますよね。

だからみんなワーカーを増やしたくなって、ワーカーを増やすというのが小目標としてプレイヤーの中で設定されることになる。ワーカーを増やすためにはまず家を増築しないといけないから、それがその下位の小目標として、またプレイヤーの中で自発的に設定されて、増築のための木5個と葦2個を集めるというのが、全てのプレイヤーに共通する一つの道筋になっている。

それと同時に、並行して、『アグリコラ』の場合、ワーカーを養うための食料を生産する必要があって、ワーカーが飢えないように食料を調達しないといけないんですね。その調達の方法というのは、例えば、柵を作って動物を飼って、その動物を調理して食料にしてもいいし、畑を耕して麦を植えて、それを収穫してパンを焼いて食べてもいいという、他にもいくつかの道筋がある。

家族を増やすという共通の道筋を持った小目標と、いかに食料を調達するかという複数のやり方がある小目標が、並行してゲームの最初から存在していて、そこが非常に上手くできているなと思います。

『レース・フォー・ザ・ギャラクシー』における小目標

小目標の例として最後にもう一つ、ちょっとだけ『レース・フォー・ザ・ギャラクシー』も挙げておきたいと思います。『レース・フォー・ザ・ギャラクシー』は、基本セットの時点では明示的な小目標というのはなかったんですよね。

生産基盤を整えるとか、6コストのデベロップメントを作るとか、プレイヤーが自発的にゲーム内で設定できる小目標というのはあったんですが、ゲームのメカニズム側から提示された明示的な小目標というのはなかったんです。

そのあと、最初の拡張セットで小目標のタイルというのが登場します。例えば、「4種類の星系を集める」とか、「この種類のカードを何枚場に出す」とか、そういった小目標タイルが拡張に入ってきて、達成したらそのタイルをもらって勝利点になりますよ、という内容でした。

これが非常に好評で、というのも、『レース・フォー・ザ・ギャラクシー』って、序盤から大量のカードを見せられる非常に選択肢の多いゲームなので、小目標が提示されることによって、プレイヤーが道筋を自分の中で考えることがしやすくなったということがあります。小目標によりゲームのおもしろさが増したという例だと思いますね。

もちろん、いろんな種類の小目標タイルがセットに入っているので、毎回ランダムに選んで使うことで、ゲームのリプレイアビリティが上がるというのもありますけどね。

ルールブックにおける目的の記載

ここまでで、目的の一つの大きな役割は、ゲーム全体の道筋をプレイヤーが今いる地点から最後まで認識できるようにすること、という話をしてきたんですが、ちょっとここで脇道にそれて、ルールブックについて話をしようと思います。

よくルールブックの書き方で、「一番最初にゲームの目的を書きましょう」という話が出ますよね。それが何でなのかと言うと、プレイヤーが目的を認識していないと、個々のルールが何のためにあるのか分からないからなんです。

例えばルールの中で、こんなアクションができて、あんなアクションもできますよ、という説明があったとしても、目的を分かっていないと、そのアクションって何のためにあるのか、そのアクションに何の意味があるのか、ということが伝わらない。

だから、一番最初に目的を説明することで、ルールの中の全ての事柄に意味が生まれてくるわけです。

なので、単純にルールブックの最初に目的を書けばいいんだな、ということではななくて、その目的があることで、プレイヤーがルール全体の意味を理解する基準が生まれる、ということを気に留めながら、ルールブックを書いて頂いくのがいいかなと思います。

目的のもう一つの役割

話の本筋に戻ります。ここまで、ゲームプレイにおける目的の一つ目の役割について話してきましたが、さらにもう一つの役割についてお話します。
もう一つの役割というのは、「プレイヤーに、ゲームに対するやる気を呼び起こさせること」です。

先ほどまでの一つ目の役割によって、プレイヤーがゲーム全体の道筋をどう進んでいいかが分かったとしても、そのプレイヤーが自分自身でその道筋を進みたいと思えなければ、プレイヤーはそのゲームをプレイしたいと思わないだろうし、実際にプレイしたとしても、その正しい道筋を進んでくれないかもしれない。

なので、基本的には、「目的はプレイヤーがやりたいと思うようなことにしましょう」ということですね。

たいていどんなゲームでも、目的って大体、一番お金を集めましょう、とか、一番名声を集めましょう、とか、ポジティブなものになっていますよね。それはやっぱり、プレイヤーがやりたいと思うようなことを目的にしないと、その目的が上手く機能してくれないからなんですよね。

『ドミニオン』における目的

例として挙げたいのが『ドミニオン』で、『ドミニオン』って、最初すごく弱いデッキを渡されてゲームが始まりますよね。場にたくさん強そうなカードが並べられていて、それを購入することでどんどんデッキを強化していける、それが一つの楽しさになっていますよね。

ゲーム全体の目的は、「他のプレイヤーよりもたくさんの勝利点を購入してデッキに入れること」になっています。勝利点は非常に高価なので、それを買うこと自体は楽しくはあるんですけど、その勝利点を買うよりも、別の強そうなカードをどんどんデッキに入れる方が楽しいと感じるプレイヤーもいる。よく『ドミニオン』が発売された頃には、「村」ばっかり買っちゃってどんどんデッキは回転するんだけど、全然勝利には近づかなくて負けちゃうという話が聞かれましたね。

なので、『ドミニオン』は非常に素晴らしいゲームではあるんですけど、ある面では、一番楽しい部分がゲームに勝利することに結びついていないと感じるプレイヤーもいて、目的の設定に、完全無欠に成功しているわけではない例かなと思いますね。

もう一つ、『ドミニオン』以降デッキ構築型のゲームが流行って、『サンダーストーン』だったり『アセンション』だったり、といったフォロワーがたくさん出て、よく、デッキ構築型のゲームがあるんだから、デッキ解体型のゲームを作ったらどうだろう、ということを考える人もいらっしゃると思うんですけど、それが本当に楽しいのかという点で、やっぱり明暗は分かれると思うんですよね。

自分のデッキをどんどん強くしていくのは楽しいですよね。オリジナリティも出せるし、単純に成長することは本能的な楽しさがある。でも、自分のデッキをどんどん小さくしていくのって、基本的にはどんどん失っていくことになるので、その目的が本当にプレイヤーを楽しませられるのかというのは、考える必要がありますよね。もちろん、そういう、デッキを解体していくゲームで成功しているものもありますので、作り方次第ですけどね。

自発的な目的と、メタ目的

これで、今回は、ゲームプレイにおける目的の二つの役割――一つは「プレイヤーに進むべき道を認識させること」というのと、もう一つは「プレイヤーにやる気を起こさせること」という、この二つについて話しました。

今回は、ゲームが設定する目的について話したんですけど、もちろん、プレイヤー自身が自発的に設定する目標もあります。

例えば『ドミニオン』だったら、勝利点を稼ぐというのがゲームが設定する目的なんですけれども、それとは別に、自分の思う自分の好きなこういうデッキを作ろう、みたいな、プレイヤーが自分で設定できる目的もあって、そういう部分でモチベートさせられるゲームというのもありますね。

あとは、メタ目的というのもあります。

ゲームの目的というのは、ゲームの中では「勝利すること」――ゲームに設定された、「一番勝利点を集める」とか、「最初にゴールに到達する」といった目的を満たして勝利することがゲームの中での目的なんですけど、実際にプレイヤーがゲームをプレイする目的というのは、勝利すること自体が目的であることは、そんなに多くはないですよね。

基本的にプレイヤーがゲームをする目的は、楽しむためだと思うんですよね。

なので、一番最初に、一番大きな目的として、「プレイヤーは楽しみたいと思っている」という前提があって、その下位の層にゲームの中の目的がある。ゲームの中の目的を達成することが、その上位の目的である「プレイヤーが楽しむ」というメタ目的に合致するべきじゃないかということは、ぜひ考えて頂きたいですね。

たまにビデオゲームでも、アクションゲームでいろんなコンボがあって、そのコンボをするのが楽しいところなんだけど、ゲームをクリアするためには、そのコンボのことは完全に忘れて一つのボタンを連打する方が強い、みたいなことがありますよね。その場合、目的を追い求めることが、メタ目的である楽しみというのを奪ってしまうので、設計に失敗しているということになるんじゃないかなと思います。

ゲームを作る目的

最後に、これもまたちょっと話の本筋とは違うんですけど、ゲームを作るとき――僕もゲームを作っているんですが、そのゲームを作る目的自体も、よく考えなければならないなと思いますね。

例えば、単にゲームを作れれば何でもいいやという場合と、ゲームを作ってドイツのゲーム・オブ・ザ・イヤーを取りたいんだという場合では、やることも変わってきますよね。10個売れればいいゲームと10万個売りたいゲームでも、考えなければいけないことに差が出てくるはずです。

そこをはっきりさせた方が、いい結果につながるかなと思いますね。目的がなければ前進はないし、もしかすると、目的をはっきりさせたら、「別にゲームなんて作る必要なかったな」となるかもしれないですしね。

例えば、自分にとって一番おもしろいゲームを作ることが目的だ、ということがあったとしたら、自分で作らなくても、他人に作ってもらってもいいかもしれないですしね。

また次回

今日の目的についての話は、これで終わりです。

また次回は、12の柱のうち、2本目に行きたいなと思っていますので、よろしくお願いします。

もし内容についてのコメントやご指摘等ありましたら、twitterのアカウントの方までご連絡頂ければと思います。@dbs_curryでやっておりますので、よろしくお願いします。

じゃあ、今日はここまでで。ありがとうございました。

* この記事は、Podcast「ボードゲームのゲームデザイン」の内容を書き起こしたものです。

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上杉真人。ボードゲームの仕事をしています。最近は『ペーパーテイルズ』と『ダンジョンオブマンダムVIII』というゲームを作りました。

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デッキ解体ゲームでフリードマンフリーゼがサンドキャッスルというゲームを出してます。
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