いまさらわかる新世紀エヴァンゲリオン①資料の位置付け

 さて、あなたは「新世紀エヴァンゲリオン」というアニメをご存知だろうか。今は昔の20世紀末、謎が謎を呼ぶ深淵な雰囲気と踏み込んだ心理描写、なにより圧倒的完成度の映像表現で社会現象を巻き起こし、後世のカルチャーに圧倒的影響を与えた、異端のアニメにして記念碑的作品である。
 ……しかし。一方で、そのあまりの異端っぷりから、「エヴァってどんな作品?」と聞かれたときに答えづらいのもまた事実である。数多の考察、それに基づく考察本(謎本、と呼ぶ。今で言うと『ワンピース最終考察』みたいなアンオフィシャルの本)が生み出され、本放送から実に23年。これだけ経っても、「エヴァって結局何なのさ」という疑問は晴れぬまま、作品は聖典化し、四半世紀が経っても我々(エヴァのオタク)は次なるエヴァンゲリオンを待っている始末なのだ。シン・エヴァンゲリオンの公開楽しみですね(2019年現在)。
 というかそもそも、今時は「エヴァって聞いたことあるけどよく知らない」、「劇場版なら見たことある」という人も多かろう。そして、エヴァを最初に見た頃は中高生だったであろう我々も人生の曲がり角に差し掛かり、こんなことでいいのだろうか? このままエヴァの続きを待ち続ける人生でいいのか? このままずっとエヴァについてわだかまりを抱えながら老いて死ぬのか? と考えることしきり。
 なら、もう一度エヴァに立ち向かってみよう、と考えて書いたのがこの記事である。幸い、「今」は当時とは状況が違う。20年以上の月日が、相応の蓄積をもたらしているのだ。そこで考察を進めるにあたり、まずは各資料の位置付けから話をはじめたい。

①「新世紀エヴァンゲリオン」テレビ本編

 原典である。当然、これがなくては話が始まらない。ただ、実はエヴァンゲリオンの映像自体にも幾つかバージョンが存在し、とりわけ初期のビデオ・LDで演出等が追加されたバージョンは差違が大きい(も、リマスター以降では反映されず、何故か現在は入手困難になっている)。
追記:正確には、DVDリマスター以降は差異の大きい21〜24話のみ「テレビ版」と「ビデオ版」を同時収録するようになっている。

 今回は、参照の容易性からNetflixで配信中の本編(内容はおそらく現在流通しているBD版とおなじ)を主に扱う。

②「新世紀エヴァンゲリオン」劇場版

 いわゆる「旧劇」と呼ばれる作品群である。だが、これもやはり一筋縄ではいかない。なにせ三回も劇場公開しているのだ。
 とはいえ、基本的には①総集編(『DEATH』編)②25話(Air)③26話(まごころを、君に)の三つのパートから成立しているのだ。ちなみに、①の『DEATH』編は総集編とは名ばかり、時系列バラバラ、ツギハギのシーンに登場人物のモノローグを足した代物であり、後で取り上げるが要するに「考察ガイドブック」みたいな存在なので、いったん置く。
 これら劇場版のうち、②と③については本編同様に扱う。

③「新世紀エヴァンゲリオン」コミカライズ版

 キャラクターデザインの貞本義行氏によるコミカライズ。連載期間が実に放送前(!)の1995年~2013年の長期に渡る。
 ストーリーはテレビシリーズ+劇場版25話26話を概ねなぞっているが、実は色々とキャラクター解釈が違う。ので、参考程度にとどめる。
 ガンダムでいうなら、原作とTHE ORIGINみたいな関係と思えばいい。
 紙の単行本には声優インタビューなどが載っていて興味深い。

④新劇場版

 現在進行中の最新シリーズ。大まかに言えばリブート作品である。テレビ版とは色々と前提条件が違うので、「独立した別の作品」と考えるのが良さそうだ。
 とはいえ、キャラクターの根本は同じ(違う場合は丁寧に名前が変わっている)かつ、設定の整理が行われた結果、かなり「わかりやすい」エヴァンゲリオンになっているので、実は考察の補助線として最適である。
 むしろ、新劇場版があるからこそ、旧テレビ版の詳しい考察が可能になったと言っても過言ではない。

⑤エヴァンゲリオン2

 ゲーム作品。ガンパレード・マーチのクローンとも言うべきワールドシミュレーターに加え、公式監修で世界の謎が機密情報として明かされている。基本的には魑魅魍魎だらけのエヴァのゲームだが、この作品だけはわりと信じられる……と思う。
 PS2版、追加イベント等が入ったPSP版があるが、主にPS2版の機密情報をメインに引用することになる。

⑥その他のエヴァゲー

 本編の言葉を借りるなら、「ぬか喜びと自己嫌悪を重ねるだけ」の悲しい歴史。本編がいわゆる「楽しいエヴァンゲリオン」だった期間、或いはテレビ最終話のIF世界を舞台にしたものが多く、考察に使うのは不向き。
 ただ、中には上記『エヴァンゲリオン2』や『シークレット・オブ・エヴァンゲリオン』のような意欲作もある。
 ……『名探偵エヴァンゲリオン』? ちょっと何のことかわかりませんね……

追記:ニンテンドー64の『新世紀エヴァンゲリオン』はハード制約やレーティング規制の中でも本編を通して再現した名作。ラストに前向きな改変も入っていたりするが、ハードがいかんせん古くてプレミアがついている。ミニニンテンドー64とかが出た時には、是非とも収録して欲しい。

⑦聖書

 過去の謎本群では頻繁に取り上げられていたが、今回は使わないので棚に戻していい。まぁ、ネーミングの話でちょっと聖書ネタの話が出てくるかな、くらい。そもそもこれは創世記ではなく「新世紀エヴァンゲリオン」の話なので……

⑧心理学の本

 過去の謎本群では(ry棚に(ry
 そもそもなんでアニメの考察に心理学の本が必要なのだろうか? デストルドーとかの用語解説に使うかな、くらい。そもそも、エヴァに出てくる用語は、実はオリジナル(というか典拠不明)だったりすることが多いので……

⑨スタッフインタビューとか初期設定とか

 あまり使わない。というか、クリエイターを捕まえて「この作品どういう意味なんですか?」なんて聞くのは、すごく失礼な行為なんじゃないかと個人的に思っている。あと、雑誌のインタビュー等は今となっては原典確認が困難なのもある。
 たた、脚本集(初稿含む)はそれなりに引用するかもしれない。設定については、エヴァは初期の企画から実際の完成までにかなり設定の変化が見られるので、参考にするのは難しい。

⑩その他スピンオフ作品

 面白い作品いっぱいあるけど紹介してる暇ナシ。『ピコピコ中学生伝説』とかいいですよ。

追記:スピンオフ作品の中でも、『エヴァンゲリオンANIMA』は例外的に取り扱うかもしれない。これはメカデザインの山下いくと氏による、「24話で分岐し、人類補完計画が成就しなかった三年後の世界」を舞台にしたエヴァ小説。エヴァのSF的なギミック部分を追求した作品で、中々面白いエヴァ派生型や、新劇場版と関連すると思しきネタまで投入されていて興味深い。

 以上が、資料の位置付けである。これらを踏まえて、次回は主要キャラクターの解説と第一話から読みときを進めていく。

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