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なぜ配信者は「登りたがる」のか

定期的に流行する『登る』アクションゲーム

 最近、配信者界隈で流行している『Only Up!』というゲーム。その内容は、ただひたすら頂上を目指し、道中に配置された多種多様なアスレチックを乗り越えていくという、実に単純で明快なものだ。

 上に上がっていくほど突破は難しくなり、より正確でスピードをともなう動きが必要となる。そのため、プレイヤーは何度も失敗し落下しながら、どうやれば乗り越えられるのかを探求し、試行錯誤を繰り返してゲームクリアを目指すことになる。
 RTAでは20分を切るほど高速化されてきているが、配信者がプレイしている内容としては、難所からの落下を繰り返しつつ数時間遊ぶというのがおおよその形となっている。クリアを目指す場合は、アクション慣れしているかどうかにもよるが4~5時間、人によってはアーカイブ制限の12時間に近い時間を費やして耐久配信を行っていたりと、かなり長尺になりがちのタイトルだ。

 こうした『登る』アクションゲームは、これまでもいくつか流行を繰り返してきた。

 たとえば、『壺おじ』という愛称で親しまれてきた『Getting over it』は、数多くの配信者にとっての通過儀礼として触れられてきたタイトルの1つである。何の説明もなく壺の中から現れる上半身裸の男を操作し、柄の長いピッケルを地形の様々な場所に引っ掛けながら登っていくという内容で、シュールで理不尽なゲームという印象が根強い。VTuberを始めとして、多くの配信者がチャレンジしては阿鼻叫喚になる姿はある種の風物詩として親しまれてきたと言える。

 また、ジャンプの調節だけでアスレチックを攻略していく『Jump King』もこのジャンルの代表例だ。このゲームでは、プレイヤーはどちらの向きにどの程度強く飛ぶか以外の操作ができない。曲がりなりにも位置の微調整がじっくりできる『壺おじ』に比べると、その場その場での判断がより大切になってくる内容と言えるだろう。こちらのタイトルもまた、クリア耐久配信の題材に選ばれることが多々ある。
 その他メジャーではないものの、似たようなゲームをやっている配信者は少なからずいる。また、『Minecraft』のようなサンドボックスタイプのゲーム内に作ったアスレチックを遊ぶといったパターンもあり、ゲーム実況・配信界隈では、実に様々な『登る』ゲームが親しまれてきたということが見て取れる。

 こうしたゲームが度々流行を呼び、根強い人気を誇っている理由は何なのだろうか。

『登る』ことが配信でのドラマを生む

 大きな理由として挙げられるのは、こういったジャンルのゲームがドラマ性に富んでいるという点だろう。

 『登る』ゲームそのものには深い背景や人物同士のやり取りなどないし、プレイをするにあたってそういった情報を気にする必要は全くない。しいて作為的に置かれているものがあるとすれば、プレイヤーが失敗した時に、焦燥感を高めたりやる気を煽るような演出を製作者が仕込んでいるくらいだろう。
 では、どこにドラマが生じるかといえば、プレイヤーの選択と行動すべてである。

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