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「"社長"になりたいんだろ?」〔クリシェ【凡百の陳腐句】24〕

人は、自分の意に沿わない言動をした者を"矯正"しようとするとき、その者の「将来」を"利用"することある。

例えば、将来起業をしようと思っている大学生が、バイト先の"性根のよくない"先輩に、そのことをうっかり喋ったとする。

後日、その大学生が仕事でミスをした。あるいは、その先輩の"好みでない"やり方で仕事をしていた。

そのようなとき、そのような先輩は往々にして

「お前"社長"になりたいんだろ?そんなんで社長が務まるのか?」


と口走りがちである。

なお、"社長"は具体例で、他には医者、学者、弁護士、管理栄養士、飲食店経営者など。その者が志向する職業、業種ならなんでも妥当する。 

つまり、自分が知る相手の夢・目標・志を、自分の言うことを聞かせて思い通りにするための手段とする行為だ。

結論をいうと、これは「人を動かす手段」としては"最悪手"。

「"お前のイメージする社長像"なんざ、"お前ごと"興味ねーよ!」

あるいは、

「起業したいとは思ってるが、"社長になりたいありき"じゃねーよ。そもそもお前の基準なんざ眼中ねーわ!」

などといって面従腹背ないし反逆されて終わりである。

人として尊敬されているわけでもなく、その道のロールモデルでもない。たかだか、その空間で立場が少々上という程度の関係性で、そこまで決めつけられる筋合いはないからだ。

少なくも、バイト先をどちらかが離職して袂を分ったあと、その先輩の基準通りに行動することなどまずないだろう(一言一句残さず、きれいに頭から消えているはずだ)。

この大学生に落ち度があるとすれば、腹割る相手を選ばなかったことだ。自分にとって大事なことは簡単に吐露すべきではない。とりわけ、自分を下に見てくる相手には。

益があるとすれば、「人を動かす失敗例」を学べたことだろう。相手の価値観に合わせるのはいい。しかし、それを自分の思い通りするために、利用し、決めつけ、押し付けるのはタブー中のタブーである。
これを、自分が人の上に立ったときにしなければいいだけだ。


もっとも、反面教師にすべきなのは、「言い方・やり方」の部分であって、「内容」とは区別した方がいい。

仕事でミスをしたのなら、その部分は改善すべきだし、先輩のやり方の価値性は、客観的に判断すべきだ。

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