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道草マインドフルネス

4月中旬に急きょ会社が休業を決めてからはや2週間が経とうとしている。その間も妻は在宅勤務で通常通りに仕事をしているので、1LDKの小さなリビングで私だけがダラダラとテレビを見ているのも忍びなく、通信で通っている大学の課題をやったりカルディで挽いてもらった豆でコーヒーを淹れてみたりと、急に訪れた外出自粛のお暇を無為に過ごさないように日々努めるばかりだ。

それでも一日中仕事もせずに家にいるとどうしても息が詰まってくるもので、近所のスーパーに夕食の食材を買いに行くことや近所の居酒屋やレストランのテイクアウトを物色するのが一日の最大の楽しみになりつつある。

あとは、天気が良い日は近所に散歩に出かけることにしている。住宅街を歩いていると平日の昼下がりでも同じように散歩やランニングをしている人の姿が目につく。みんな考えることは一緒のようだ。

一軒家がひたすらに連なる道端にも春の日差しを浴びて草木が青々と育っていることに気が付く。普段だったらそんなこと気にも留めないけれど時間を持て余している私は、彼らの姿に心が揺さぶられる。私たちにとってはすべてのことが例年とはまったく違ってしまった今年の春だけれど、彼らはお構いなしだ。「国破れて山河あり」なんて国語の教科書以来のフレーズが頭をよぎる。

道端に咲く名前も分からない草木を眺めると、先行きが見えないこの状況への不安が少しは紛れる気がした。まるでJ-Popの歌詞に出てきそうな行動だけれども、これも一種のマインドフルネス*だなと思った。

草木の葉っぱの形を観察してみたり、時にはその状況に浸っている自分を眺めてみたり、花を忘れて夕飯のおかずを考える自分に気が付いてみたりしながら、今日も暇を持て余した私は道草をするのであった。

*マインドフルネスとは、一言でいうと「自らの体験(自分自身をとりまく環境や自分自身の反応)に、リアルタイムで気づきを向け、受け止め、味わい、手放すこと」であるという。(伊藤絵美『ケアする人も楽になるマインドフルネス&スキーマ療法 Book1』


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