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再録「あのときアレは神だった」〜三木武吉

テレビアニメ、漫画、スポーツ、アイドル歌手などなど。
実在の人物から架空のものまで、
昭和にはさまざまな「キャラクター」が存在した。
われわれを楽しませたあの「神」のようなキャラクターたち。
彼ら、彼女たちの背後にはどんな時代が輝いていたのだろうか。
懐かしくて切ない、時代の「神」の軌跡を振り返る。

(2016年より、夕刊フジにて掲載)

ショーンK氏の経歴詐称騒動、乙武洋匡氏の不倫騒動と、春を前に珍妙な騒動が相次いだ。

ショーンK氏のウソもウソだが、5人と不倫をしたって、そんなシモの話、世間もほっといてやりゃいいのだが、乙武氏の場合、参院選の公認候補となれば、そうはいかない。

公人には清廉潔白な下半身を求める。古くは春画や夜ばいの国なれど、日本は案外、お上の「シモ」に対しては、変に潔癖な風土なのかもしれない。

そうはいっても、ままにならないのがシモの世界。政局によって言葉や態度が風見鶏のように変化する上半身に負けず劣らず、シモのほうも右往左往なんていう人も、歴史的にはけっこういる。

さる立会演説会で、「わたしの妾の数を4人だと言われたが、正確には5人である」と訂正したのは、三木武吉である。

三木武吉は明治生まれの政治家。鳩山一郎の盟友で、1955年の保守合同による自由民主党の結党の最大の功労者だった。三木は、政治の世界で重要な役割を演じたが、自らは目立った役職にはつかず、「策士」「政界の大狸」として暗躍した(閣僚経験なし)。

残された、彼に関する著者のタイトルは『誠心誠意、嘘をつく』(水木楊著、日本経済新聞社)。

なにもばか正直だけがすべてじゃない。真実にこだわるべきときには、あくまでも真実を押し通す。だが、その真実が不要なものであれば、ときには誠心誠意嘘をつく。誠心誠意嘘をつかなければ相手に対して失礼だ、と三木は言う。

もちろん自分の役得にしかならない無駄な嘘は不誠実だ。人の前に立つものは人のことを考える義務がある。

前述の経歴詐称氏や不倫氏。彼らは、三木の思いを一体どのように感じるのだろうか。 (中丸謙一朗)


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