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もう一つのカーラチャクラ

ダライ・ラマ法王の灌頂で有名なカーラチャクラには、複数の法統がある。
それを知る人は、少ないかもしれない。

まず灌頂とは何かと思う人もいるだろう。

灌頂は、古代インドの風習に由来する。
古代インドでは、国王の即位や王位を継ぐ者を立てる儀式で、四大海の水をその頭頂に注いだという。
この作法を灌頂というけれど、

それが仏教に伝わって、ご本尊様との縁結びや、密教の教えを見る許可を与える儀式として、灌頂が授けられる。

カーラチャクラは時輪金剛と訳されることもある密教のご本尊。
この密教のご本尊様との縁結びをダライ・ラマ法王から授かろうと、インドや世界各国に、多くの人々が集まった。

ゆえに、
カーラチャクラといえばまず第一にダライ・ラマ法王が連想されるのだが、
実はチベット仏教のほとんどの宗派に、その教えは伝えられている。

カーラチャクラ十七法統と呼ばれるが、
その中でも主に伝わる法統は二つ。

先ずラ・ロツァワ(ラ訳経官)チュラブより伝わり、
プトゥン・リンチェン・トゥプ、
ゲルク派の祖師であるツォンカパ・ロサン・タクパと、その弟子などを通じて伝えられた法統。
ダライ・ラマ法王が授けるカーラチャクラ灌頂は、この法統である。

次にド・ロツァワ・シェラブ・タクパより伝わり、
十七法統全てを保持したジョナン派のクンパン・トゥジェ・ツンドゥと、
全知と呼ばれるドゥルポ・サンゲェ、
ジェツン(尊者)ターラナータなどより伝えられた法統。

クンパン・トゥジェ・ツンドゥより、
ラ・ロツァワとド・ロツァワの二つの法統が混合された。

他にも、
サキャ・パンディタ・クンガ・ゲルツェンより伝えられ、偉大なる上師ソナム・ゲルツェンなどによって伝えられたサキャ派の法統。

カギュ派には、ツァミ・ロツァワより伝えられた法統と、ジョナン派より伝わった多くの教えがあり、
コントゥル・ユンテン・ギャツォ、
カル・リンポチェ、
ボカル・リンポチェなどが法統を保持しておられるそうだ。

ニンマ派においても、ジュー・ミパム・チョクレ・ナムゲルなどまでカーラチャクラの教えを保持していたことがはっきりしている。
それにおいても、テルマ(埋蔵経)が少しと、主にはジョナン派から伝わっているらしい。

カーラチャクラ・タントラの解説においては、
チベット仏教全ての派で長短をとわず多くある。

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