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虫けらをひねりつぶす

未だに女性はみな虫が苦手という先入観があり、身近で女性がいともたやすく小さな虫をティッシュ越しに捕まえ、そのまま包んでひねりつぶすという場面に出くわし面食らってしまった。
「キャッ」と声にならない悲鳴を上げて「取って」と男性に懇願する女性像を期待する向きには辛い現実だ。
男性に対して無力さを演じる奥ゆかしさはこの時代において効力を失ったということになるのだろうか。ないしはそういうレイヤーにおける男女間の駆け引きが陳腐化しただけかもしれない。
それとはまったく別な感情として、むしろ我々は気丈な振る舞いをアピールするために犠牲になった虫ケラに同情してしまう。気付くと念入りにひねりつぶされた虫ケラに感情移入し恍惚としていた。
そのまま無造作にゴミ箱に放り投げられ、暗闇の中理不尽に生涯を閉じる。それほど悪くないなとか捨てたもんじゃないよなとか。
動物園で、近くで見ると想像よりだいぶみすぼらしいオスライオンを見た時の感慨を思い起こしながら、今日も我々は惰性でコップにビールを注ぐ。

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