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【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~ 3話
手早く荷物をまとめ、馬車を貸し切りにしてまずは隣街へと旅立った二人――――。 馬車は壮麗な石造りの城門をくぐり、見渡す限り広がる麦畑の道をカッポカッポとのどかなペースで進んだ。これで王都ともお別れである。 自分で選んだ道ではあったが、もう二度と戻れないかもしれないと思うと、胸がキュッと苦しくなり、オディールは思わず後ろを振り返った。 立派な城壁、多くの馬車が行きかう城門、思い出のたくさん詰まったこの国一番の都市が少しずつ小さくなっていく。オディールはキュッと口を
【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~ 2話
外に出てふらふらと石畳の道を歩いていくと、ボールルームからダンスの生演奏が流れてくる。策略と謀略が織り成す社交界に鳴り響く美しい音色。見れば王子はニヤニヤしながらアマーリアと踊っている。 ギリッと奥歯を鳴らしたオディールだったが、ふと思い立ってニヤリといたずらっ子の笑みを浮かべた。 王子がバカにした【お天気】スキル。その真価はどんなものだか、せっかくだから試してやろうと考えたのだ。 何度か深呼吸をして精神統一し、雷をイメージしたオディールの頭に自然と祭詞が浮かび
【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~1話
1. いたずらっ子オディール うららかな春の昼下がり、豪奢なお屋敷の廊下では赤いじゅうたんが陽の光を浴びて鮮やかな輝きを放っていた。 フンフンフーン……。 はたきを持ったメイドの少女【ミラーナ】が鼻歌を歌いながら、観葉植物の埃を落としている。 「はい、綺麗になったわね」 ミラーナは幸せそうに微笑むと、観葉植物の植木鉢に手をかざし、目を閉じて土魔法の呪文をささやいていく……。 すると、光り輝くブロンドの髪を編みこんだ美少女が、いたずらっ子の笑みを浮かべなが
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【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~ あらすじ
公爵令嬢に転生したオディールが得たのは【お天気】スキル。それは天候を操れるチートスキルだったが、馬鹿にされ、王子から婚約破棄されて追放され、美少女メイドと共に旅に出る。 砂漠に【お天気】スキルで雨を降らし、やがて花咲き乱れる砂漠の街を作るが、これを気に食わない王子が侵攻してくる。【お天気】で一瞬で壊滅させたものの、国王の暗殺計画でヒロインが瀕死となる。これを治すためオディールは苦難を乗り越えながら女神に会いに行き、ヒロインとの愛を貫き、救うことに成功する。 さらに、オディ
【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~番外編
番外編《登場人物インタビュー》 作者「はい、皆さん、こんにちはー!」 オディール「こんにちはー!」 ミラーナ「こんにちはぁ」 作者「堂々二十万字完結! 二人ともお疲れさまでした!」 オディール「いやホント、ひどい目に遭わされてクタクタですよ」 ミラーナ「オディは随分大変だったみたいね、お疲れさまっ」 作者「ごめんなさいねぇ。でも殺されていないだけ過去作からすると楽な方なんですよ? ぬははは」 オディール「……」 作者「そ、そんな怒らないで、神になったのだからいいじゃないです
【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~最終話
86. 限りなくにぎやかな未来 『この世界は情報でできている』のであるならば、自分自身を構成している構造も内側から元をたどればここにたどり着くに違いない。 オディールは深呼吸を繰り返す。 スゥーーーー、……、フゥーーーー。 スゥーーーー、……、フゥーーーー。 意識の奥底にどんどんと降りていくオディール。やがて見えてくる海王星のシステム基盤、さらに降りていくと見えてくる金星のシステム、デジタル・ビッグバンに導かれるようにオディールは一段ずつ世界樹の枝を根元に向け
【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~85
85. デジタル・ビッグバン オディールはホッと胸をなでおろす。 やはり少女はただものではなかった。五十六億年が本当かどうかは分からないが、少なくとも女神よりはるかに危険な匂いを感じる。 静まり返る世界樹の空間に一人取り残されたオディールは、大きく深呼吸を繰り返すともう一度世界樹を眺めてみる。 華やかに咲くピンクの花々は、キラキラと輝く光の微粒子を振りまきながら穏やかに揺れ、夜空の星々と共に息を呑むような幻想的な光景を創り出していた。 それは命の輝きそのも
【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~84
84. 始祖 気がつくと目の前には巨大な満開の桜の木があった。それは大宇宙の星空をバックに幽玄な淡い輝きを放ちながら静かにたたずんでいる。 「こ、これは……?」 いきなり連れてこられた異空間にオディールは呆然として言葉を失う。 見回してみても巨大な碧い海王星も神殿もどこにも見えない。少なくとも神殿の管理区域にこんなところはなかった。一体どこに連れてこられてしまったのだろうか? 「世界樹よ。全宇宙の全ての星と命が全部ここに表されているわ」 十五歳くらいの美し
【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~83
83. ケンカごっこ 時は数年前にさかのぼる――――。 女神の仕事を手伝うようになったオディールは、その日も朝早くから神殿のコントロールルームへ出勤していた。 「おはようございまーす!」 自分の席に座って目の前に大きな画面をいくつか開くオディール。任されていたのは蜘蛛男のような危険分子を探し出し、世界の健全性を保つという仕事なのだった。 コントロールルームは、まるで外資系コンサルのオフィスを思わせるような、木の魅力を活かした洗練されたインテリアとなっている。
【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~82
82. 優秀さの限界 そんな男の前に碧い目の女の子がいきなり現れ、金髪をかき上げる――――。 「ふふーん、やってみたら?」 それはオディールだった。彼女はコンピューター内そのままの姿で現れて、ニヤリと笑う。 「ゆ、結城! お前、なんでそのまま出てきてるんだ!?」 男は驚愕する。金髪のアンドロイドなどコンピューターの外側には用意されていないのだ。 「君は高校で物理や化学を習っただろう? 僕のこの身体を科学で説明してみたまえ。ん?」 オディールは昔言われたま
【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~81
81. ダイヤモンドの吹雪 可愛いピンクのドレスに身を包んだタニアがトコトコっとやってきて、ニコッと笑いながら指輪を載せたトレーを差し出した。 「どうじょ」 サラサラとしたボブの髪型にプニプニのほっぺたが実に可愛らしい。 「ありがとう」「いい子ね」 二人はリングを取ると、互いの薬指にリングをはめあい、ほほ笑みあう。 「それでは誓いのキスを捧げよ」 いよいよクライマックス。女神は優しく微笑みながら二人を向かい合わせる。 二人はお互いを見つめ合う。
【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~80
80. 新たな神話 茎の太さもどんどんと太く立派になり、もう直径一キロは優に超えているのではないだろうか? 先端はもはや宇宙に達していて、青空の霞の向こうにうっすらとその姿を見せるばかりとなっている。 巨大な葉が次々と展開し、途中でどんどんと枝分かれしていった枝先にはやがてつぼみが見えてくる。数十メートルはあろうかという大きなつぼみが無数に現われてきて大空を覆いつくしていく。 と、その時だった――――。 いきなり太陽が消えた。 みんなが驚いて太陽の方を
【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~79
79. 響き渡る鐘の音 オディールは剣を高々と掲げると堂々とした声で叫ぶ。 「公爵家の財産は没収! 領地は我がセント・フローレスティーナが併合する!」 「おぉ!」「つ、ついに……」 自警団のみんなはオディールがアグレッシブな方針を決意したことに驚き、どよめきが広がる。圧倒的な力と先進的な発想を持ちながら砂漠に籠り切っていたことにみんな違和感を持っていたのだった。 くぅぅぅぅ……。 盛り上がる自警団たちに反し、公爵は無念そうに声を漏らす。 「父さん、泣くこ
【お天気】スキルを馬鹿にされ、追放された公爵令嬢。不毛の砂漠に雨を降らし、美少女メイドと共に甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い~78
78. 互いの想い 「ふふっ、いきなりどうしたの?」 ミラーナはオディールの必死さに少し戸惑い、眉をひそめる。 マズい……。どうやら押しすぎてしまったらしい。しかし、もはや猶予はない。オディールは深呼吸をしてテンションを少し落とすと、落ち着いた声で語り掛ける。 「ねぇ、ミラーナ……」 「なぁに?」 オディールは大きく息をつくとミラーナを引き寄せ、ミラーナのブラウンの瞳をのぞきこむ。 「僕と一緒に人生を歩んで行って欲しいんだ」 「あら、今でも一緒じゃない?