見出し画像

公立病院424再編リストが問いかけるもの

以下の記事は、厚労省が2019年9月26日に公表した「公立・公的医療機関等の診療実績データの分析結果」の公表方法やデータの解釈を巡り、厚生労働副大臣の橋本岳氏、山形県・酒田市病院機構理事長の栗谷義樹氏、慶応大学教授の印南一路氏が自らの見解を示しているものです。

上記の分析結果によると、公立病院・公的病院の25%超に相当する全国424の病院が、診療実績が少なく、非効率な状況であり、再編統合の検討が必要であることを示唆しており、この分析結果は通称「424再編リスト」とも呼ばれています。

424再編リストは、橋本氏が言うように、「発表の仕方が唐突だった」ことから、「厚労省が病院を名指しして「やれ」と言っているかのように受け止められてしまった」のですが、「厚労省が病院の再編や縮小を命令したり指示したりすることはない」という点が重要です。

むしろ、重要なことは、国や地方の財政にも限界がある中、必要な医療システムを堅持するため、この分析結果を参考に、政治や我々がどのような具体的対応を行うか冷静に検討することあり、印南氏の以下の指摘は正論に思います。

人口が減り、疾病構造も変わる中、患者の実像にあった、病床の機能分化と統合調整を進めるべきだ。団塊世代が75歳以上になる2025年、その先は人口がどんどん減る。今のように急性期病床はたくさんいらない。必要なのは質の高い慢性期医療だ。(略)
まともな経営者なら、稼働していない病床を返上し、収益重視の経営にする。看護師の配置基準の達成が容易になり、基本診療料の単価が上がる。病院の特色を出し、魅力を高めて医師を集めれば、患者数は増えて外来収入もあがる。症例を積む環境をつくれば医師もきてくれる。
1病院1人では足りない産婦人科医も集約化すれば問題を解決できる。手術などは患者を集めて実施したほうが、医師の上達も早いし、病院の実績にもなる。医療の質にもかかわる。医療の世界はそのように合理的に進まないところに問題がある。

なお、最近の内閣府・世論調査によりますと、「複数の医療スタッフで業務を分担しながら24時間診療が行えるよう、いくつかの医療機関を統廃合することにより、医療スタッフを集めるという考えに賛成か、それとも反対か」との問に、賛成が約7割、反対が約3割という結果も出ています(出所:内閣府の世論調査「医療のかかり方・女性の健康に関する世論調査」(2019年7月調査))。

各々の公立病院等の地理的位置関係は、厚生労働省「地域医療構想に関するワーキンググループ」(2019年6月21日開催)で示された「構想区域の公立・公的病院等を中心とした機能分化・連携の状況」で確認できるため、こちらの資料も利用しながら、医療施設の最適配置の実現と連携などについての議論を深めることを期待したいと思います。

原稿


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?