#9 見送り

風には未だ冷たさが残り、開けた空はどこか寒々しい。
他方空気には花の甘い香りが混じり、景色を彩るのは薄桃色の花々。

ホールから出てきた卒業生を迎えるのは祝言で、視界の端にあなたを見つけ、私は手を振る。
振り返された手のひらと晴れやかな笑顔で、私は胸が詰まる思いになる。

共に過ごした時間は私の中にたしかなかたちで残っていて、決して優しいばかりじゃない思い出も、きらきらと輝き出して刻まれる。
これからあなたのいない未来を歩むのだと、突きつけられる。

あなたの未来が明るいことを、せめて今だけは純粋に願う。
花で彩られた、優しい、温かな空気に包まれ、あなたがこれからの旅路を進んでいけることを、私は祈る。
あなたに会えて、私は幸福だった。

ばいばい、おめでとう!
ばいばい、おめでとう!
ばいばい、おめでとう。
また未来で会おうね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?