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サステナビリティ先進企業紹介|外食産業のパイオニア、ワタミが描く幸せのカタチ(後編)

こんにちは。前編・中編に引き続き、外食産業のサステナビリティ先進企業である、ワタミ株式会社のサステナビリティ推進と社員のウェルビーイング等について、百瀬さんにうかがったお話を紹介します。

公益財団法人流通経済研究所
上席研究員 石川 友博
研究員 寺田 奈津美

※前編・中編はこちら👇


サステナビリティ推進のポイントは「未来に目を向ける」こと

―—企業からはよく「サステナビリティに取り組みたいがお金やリソースがない」という声を聞きますが、取り組みの収益性とのバランスはどのようにとっていらっしゃいますか?

百瀬さん:かかるコストが少ないところからやっていくというのも一つの方法です。また、とても大事なのは「未来に目を向けよう」ということです。現段階ではコストにしかならないけれど、10年先になった時にそれはもしかしたらビジネスになっているかもしれないという視点です。
 例えば、CO2を削減するためにいろいろと手を打っておくと、はじめはコストがかかりますが、炭素税のようなCO2排出分だけお金を払うような制度ができたときにはもしかしたら有利なのではないか、といったことです。
 だから、今はリスクのように見えるものでも、将来的にそれがチャンスにつながることもあるのではないかという考え方を意識しながら社内に提案しています。もう一つお伝えしたいことは、ワタミでは理念や考えが会社の中で大事にされていて、「儲かることと正しいことを比べたら、正しいことを選ぶのがワタミだ」という考え方なのです。なので、両立というよりは、会社として何を優先するかということなのだと思います。

社員のウェルビーイングを高める「社員の幸せ会議」とFA制度

―—ワタミモデルのようにさまざまな業態がある中で、多くの社員がそれぞれの良さを生かせるような工夫は何かありますか?

百瀬さん:ワタミには「社員の幸せ会議」という、各事業部代表が集まり、会長や取締役とウェルビーイングを進めているプロジェクトがあります。コロナ禍でも毎月欠かさず開催していました。先ずは「社員の幸せ」とは何かを追及しています。

ワタミが考える従業員の幸せ7項目

 また、ワタミにはFA制度があり、一定の条件をクリアすると自分の希望の職場に移動できるという制度があります。
 自分が適した職場でやりたい仕事をするということに対しては、非常に融通の利く会社だと思います。そのことがその人の人生にとって働きがいや生きがいにつながるのではないかと思います。
 職場を選ぶときにワタミという会社を選ぶ人は、給与や休暇などの待遇面や、自分が生きていくのに有利であるという理由だけではなく、人の役に立ちたいとか、世の中の役に立ちたいという希望を持つ社員が特に若い人たちに結構多いのです。
 ワタミの社員になれれば、お食事会や、森林再生の活動などを通じて、その気持ちを具体的な行動に移すことができます。自分にとって快適であったり健康であったりということももちろん大切ですが、「自然の役に立ちたい」とか、「人の役に立ちたい」とか、誰かのためにということが、すごくウェルビーイングに繋がるのではないかと思うのです。

サステナビリティの取り組みの発信はまず社員とその家族から

―—自社の取り組みの発信に悩みを抱える企業は多いですが、うまく発信するための工夫や反響の大きかった方法はありますか?

百瀬さん:社外にうまく発信する方法はまだあまりわかっていませんが、サスティナブルレポートは、第一に社員と社員の家族に知ってほしいから作成しています。

 例えば、お父さん、お母さんが家に持って帰って置いておくと、子どもが見て、「お父さんの会社はSDGsやってるんだね」ということをきっかけに、お父さんがどんな仕事をしていて、会社がSDGsの取り組みとしてどんなことをして社会に貢献しているのかというような会話につながります。そのように、まず社員自身と、社員の家族から理解してもらい、その次に、取引先様やお客様にもわかってもらいたいという思いで発行しています。

 投資家に対するメッセージというよりも、「地球にいいことやってるよね」とか、「地域の人に喜んでもらっている」というワタミらしさ、ワタミのコアコンピタンス[i]を伝えたい、そういう旗印に社員が集まる企業になりたいね、という感じです。

ワタミサスティナブルレポート2023 ダウンロードはこちらから https://www.watami.co.jp/csr/report/

[i] 他社に真似できない中核となる強みのこと。

SDGsバッジが表すワタミのコアコンピタンス

―—なるほど。すぐに費用対効果が上がることよりも、「地球のことを一番考えている」ということをコアコンピタンスにしよう、ということなんですね。

百瀬さん:そうです。だから、ワタミの社員全員が「あなたにとってSDGsとは何ですか?」という質問に答えられるのです。
 例えば「自分はお客様に喜んでもらうこと、全部食べ切ってもらうこと、食料を捨てないことです」とか、「自分はプラスチックごみを減らすためにエコキャップを一生懸命集めてリサイクルしています」とか、自分が具体的にどんな行動をしているからそのSDGsに貢献しているということを全員言える。それがワタミにとってのSDGsだと思います。

SDGsバッジ

百瀬さん:ワタミでは全社員がSDGs行動宣言を行い、SDGsバッジをつけてその表明を行っています。
 SDGsバッジにはSDGsのナンバーが書いてあり、自分の好きな番号を選んで、その目標に対して具体的にどういう行動をするのかという「SDGs行動宣言」をすると、このバッジがもらえます。社内では社員同士で「あなたは何番なの?」「私は2番、子ども食堂に寄付しているよ」というような話題になったりもします。

―—バッジがきっかけでSDGsが話題になるのは面白いですね。社員一人ひとりがSDGsを”自分ごと化”することはとても大事なことですね。

消費者へのメッセージ

―—最後に、消費者へのメッセージをお願いします。

百瀬さん:絶対大事なのは食べ物を捨てないということです。食べられるのに捨てられてしまう食品ロスというのは日本全体で大体1日に一人おにぎり一個分です。毎日日本人がおにぎりを1億個捨てているということです。それをいかに食べきれるか。食べ物を捨てないということを全国民でやっていくといいなと思います。
 また、食べ物が余っているなら、必要とする方にちゃんと渡せるようなルートやルールができるといいなと思います。今だと、お弁当工場から出るおかずなどは衛生的に問題なくても、寄贈する側が食品衛生や品質保証の問題で躊躇してしまい、子ども食堂や福祉施設に寄贈することは難しい状況です。それがきちんと寄贈についてのルールが整備されれば、もっと寄贈がしやすくなるのではないかと思います。

日本の食品ロス発生量 (農林水産省「食品ロスとは」https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html )

まとめ

 今回は外食産業でいち早くサステナビリティに取り組んできたワタミの事例をご紹介しました。
「SDGs日本一」を掲げ、「地球上で一番たくさんの“ありがとう”を集める」ことを宣言したワタミは、社員一人ひとりがSDGsを自分ごととして捉え、人や社会、自然の役に立つことを考え、行動しているということがわかりました。
また、その広範囲にわたる取り組みの中でも、現在はスコープ3のCO2削減や人権などサプライチェーンのサステナビリティ推進に重点的に取り組んでいます。
 サステナビリティの推進においては、現在の自社の課題解決に取り組みつつも、未来に目を向けて、今はリスクと考えられるものでも、将来的にチャンスにつながるような新しい挑戦を行うことが重要であるということが示唆されました。
 ワタミの取り組みが加速し、広く認知されることで、サステナビリティの推進がより一層進むことが期待されます。
 
 百瀬さん、ありがとうございました!

写真左:ワタミ株式会社・百瀬さん 右:公益財団法人流通経済研究所・石川

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