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【取材】全員活動で地域、社会、環境の向上に貢献 バローのサステナビリティ(前編)

こんにちは。今回はスーパーマーケット/ドラッグストア等を展開する株式会社バローホールディングスの取り組みについて、詳しく取材した内容をご紹介します。管理本部サステナビリティ推進室の冨永澪さんにお話をうかがいました。
前編では、サステナビリティ推進体制や、エネルギー、フードロスなどへの取り組みを紹介します。

公益財団法人流通経済研究所
上席研究員 石川 友博
研究員 寺田 奈津美


地域、社会、環境の持続可能性の観点から6つのマテリアリティを決定


バローホールディングスは、「持続可能な社会の実現に向け、事業活動を通した全員活動によって地域社会の発展と社会文化の向上に貢献します」というビジョンを掲げ、サステナビリティのマテリアリティを設定しています。

――貴社は、「地球環境」「社会」などの観点でマテリアリティを設定されていますが、これらのマテリアリティはどのようなプロセスを経て決定されたのでしょうか?

冨永さん:2021年にサステナビリティ・ビジョン2030が掲げられ、グループ各社の代表約60名が社会貢献SDGs推進委員に任命されました。管理本部が事務局となり、各社が優先して取り組んでいくべきことを整理し、地域、社会、環境の持続可能性の観点から6つのマテリアリティを決定しました。
 例えば、フードロスは、我々は廃棄するために売っているわけではなく、皆様に食べていただくために売っているのであり、食品の廃棄まで責任を持つことが必要と考え、マテリアリティとしました。その後、マテリアリティごとに分科会を置いて、取り組みがスタートしました。

6テーマの分科会
バローグループは、全従業員での活動による3つの重点領域「地球環境」「地域社会」「人材の多様性」について、6テーマの分科会「フードロス分科会」「リサイクル分科会」「エネルギー・水分科会」「地域社会分科会」「買物課題分科会」「人材活躍分科会」を設置し、グループ各会社の推進責任者を中心に活動を進めている。

「社会貢献サステナビリティ委員会」と6テーマの分科会で構成される推進体制

――どのような体制でサステナビリティを推進していますか?

冨永さん:取締役会に報告する会議体として「社会貢献サステナビリティ委員会」を年2回開催しており、6テーマの分科会の取り組み内容や進捗状況が共有されます。委員会は特定のテーマに限らず、「私の会社ではフードロスについてこんなことをしており、このような結果でした。人材活躍ではこんなことをしており、その成果はこうでした。…」というように、各マテリアリティの目標に対する報告を行っています。

バローホールディングスのサステナビリティ推進体制図

――サステナビリティ推進体制について、理想を10点満点とすると、現在の達成状況は何点と評価されますか?

冨永さん:取り組みを始めてからまだ2年と始まったばかりであり、従業員個人が関わることができているわけではないという点から、達成状況は、伸び代に対する期待を込めて10点満点で4点くらいです。
 とくに、サステナビリティの取り組みやその重要性について従業員に共有する機会がなかなか取れておらず、全員が取り組みに参加できるような体制を整備する必要があると思っています。
 また、サステナビリティ推進室は現在3名で活動していますが、メンバーが増えれば、活動も広げられるので、体制強化も今後の課題であると思います。

テーマ1 エネルギー・水:電力使用量を知ることで、従業員の「売上を電力使用で無駄にしない」意識が芽生える

――エネルギー・水のテーマについて、今年度の取り組みで実施してよかったことや、不十分だったと感じることはありますか?

冨永さん:会社全体での電力使用量が削減できたというのはよかったと思います。これは各店舗、各事業所工場の全員が意識して取り組んだ結果だと思います。
 毎月、各店舗や事業所に「今月の使用量はどれだけでした」、「これだけ使用金額が上がっています、下がっています」といった内容のメールを配信しています。これにより、従業員の皆さんが使用量や金額の現状を把握し、売り上げを立てても電気代で無駄になってはいけないという意識が芽生えたのかなと思います。

 ただこれは推測であり、メールが各店舗でどのように受け止められているかは正確にはわかりません。私たちサステナビリティ推進室としても、普段関わることのない店舗の方々がどのような意識を持っているのかを知りたいと思っていますので、何かフィードバックを受け取れるような仕組みや、従業員の方々にゲーム感覚で楽しみながら節電をしていただけるような要素を取り入れていきたいと考えています。

――どのような状態になるのが理想でしょうか?また、理想を10点満点とすると、現在の達成状況は何点と評価されますか?

冨永さん:理想としては、店舗や工場、事務所の全ての建物で電力や水の使用量が減少し、再生エネルギーでの電力供給が実現されることです。
 現在の達成状況は10点満点中5点です。現状、一部の店舗や研修施設で太陽光パネルの設置や、電力使用量の測定などはできていますが、今年度はエネルギー・水の分野に重点を当てて活動をすることが難しく、積極的な節電を促すような取り組みを始めることができませんでした。今後は、他の企業の良い取り組みを参考にしながら、さらなる節電促進の取り組みを始めていきたいと考えています。

テーマ2 フードロス:一つ一つ着実なフードドライブポストの設置にこだわり60店舗達成

――フードロスのテーマについて、どのような状態が理想で、理想を10点満点とすると、現在の達成状況は何点と評価されますか?また、今年度の取り組みで実施してよかったことや、不十分だったと感じることはありますか?

冨永さん:理想としては、廃棄ゼロとなれば10点満点で、現状は6点くらいだと思います。現在、店舗では、売れ残ってしまった食品を捨てるのではなく、子ども食堂のような団体さんにお渡しすることや、しっかり売り切ることを徹底することでロス削減を進めています。
 さらに、お客様を巻き込む取り組みとして、てまえどりや、食べる量だけ購入すること・食べきりの浸透、フードドライブなどを行っています。てまえどりに関しては、自社でてまえどりPOPを作成し、全国のグループ各社(バロー、Vドラッグなど)や、各地域にローカル展開しているグループ会社の店舗でも掲示を行っています。

 特に、フードドライブは最も力を入れてきた活動で、現在60店舗にフードドライブポストを設置しており、今月末(2024年3月)には64店舗に増える予定です。今年度の目標は40店舗に設置することでしたが、目標を大幅に達成する結果となりました。サステナビリティ推進室の人数も少ない中で進めてまいりましたので、ここまでの成果を出せたことに満足しています。これからもこの調子で活動を進めていきたいと思います。

バロー恵那店設置ポストとポストに食品が提供された状況(出所:恵那市ホームページより)

――それは本当に素晴らしいですね。どういったことが推進のうまくいった要因だと思われますか。

冨永さん:取り組みは進んでいますが、グループ会社全体で1000店舗以上ありますので、その中の60店舗というとまだまだではあります。設置店舗数を重視してグループ全店舗中の1000店舗に一気に置くこともできたとは思いますが、そうしてしまうと、各店舗のお渡し先や、お店のお困りごとなど、細かい部分を把握しきれないことが予想されます。そのため、まずは1店舗につき1団体様の連携を確実につないでいくことを重視し、丁寧に対応しています

 「フードドライブボックスを置いたはいいけれど、寄贈先の団体との連携がうまくいかない」といった問題が起こらないように、子ども食堂さんや社会福祉協議会さんなどのお渡し先とは、お受け取りの日程やお渡し先、オペレーションなどについて丁寧に面談を重ね(平均して2~3回は面談)、店舗とお受け取り団体様がスムーズにやり取りできるようにサポートしています。

――そのように店舗でのフードドライブの確実な仕組みづくりをされる中で、特によかったと思われる点や、その中での気づきや学びはありましたか?

冨永さん:フードドライブポストの後ろに掲示板を設置し、食品寄贈先の子ども食堂に通っている子どもたちからの「ありがとう」などのお礼のメッセージや絵をみなさんに見ていただけるようにしたことです。

フードドライブポストの掲示板の様子

冨永さん:最初はフードドライブポストを目立たせる目的で掲示板を設置しました。ポストの高さが60~70センチくらいで、普通の視線より少し下になるような状況だったので、少し高さを出してポストの存在をアピールしようという考えでした。掲示板は磁石でくっつくカゴを置き、そこに子ども食堂さんの活動内容や開催予定のチラシを貼って、その活動を知っていただくためのボックスとして使っています。

 やはり、ポストに食品を入れて、その先で食品がどのように使われているのかということがわかると、入れる方の「あ、こんな風に喜んでもらっているんだ」、「こういうところに必要としている方がいらっしゃるんだ」といった気づきにもなります。また、子どもたちからのお礼など、自分が寄贈したことへのフィードバックがあると、「またフードドライブに協力したい」という気持ちにつながるのではないかと思います。この点はすごくよかったですね。

 また、従業員の中にフードドライブを知っている方は少ないのですが、説明を聞いてもらうと「良い取り組みだね」というふうに賛同してもらえることも多く、伝えていくことって大事だなと思いました。

バローグループのフードドライブに関する情報(スマホ版)はこちら👇

※中編では、リサイクルや地域社会、買い物課題への対応についてうかがったお話を紹介します。

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