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北原白秋の散歩道

その名の通り、北原白秋が歩んだという散歩道がそのまま残っている。母校である中学の真裏にこんな歴史があるとは知らなかった。

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車1台がやっと通れる農道のような道の入り口に「野外劇場の観覧席」という看板がある。こんなところに野外劇場があったはずがない。新しくできたなんて風の噂にも聞いていない。なんだか「注文の多い料理店」みたいで不気味だなとさえ思いながら歩いていく。鬱蒼とした森の中を進んでいくと、突然視界が開ける。

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この景色こそ、白州が野外劇場の観客席に喩えて絶賛した景色だということがわかった。

「裏山つづきの水之尾道もいよいよ夏が深くなりつつある。…この道は実にいい。丹沢大山と、箱根の両方が見えて、一折ごとにちがつた新しい情景が目に見えてくる。丘窪の蜜柑畑などはまるごと野外劇場の観客席のやうに円形で後高にだんだんになってゐる。(「芸術の円光」より)

このすぐ後ろを向けば、小田原の茶畑が広がっている。先ほどまでの森とは打って変わって、広々として気持ちの良い場所だ。何度か訪れたが、そこらの石に腰掛けて景色をただただ眺める人がいることもあった。雲が山に落とす影の移ろいを眺めているだけでも気持ちが良い。

さらに進むと畑がいくつか続いたり、城跡が見えたりする。ずんずん進んだら何かが動いているのが見えた。猫ではない。なんだ……?と思いながら近づいてみた。

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ニワトリだ……!立派なニワトリが自由気ままに歩いていた。何度か遭遇したが、昼間だったり夕方だったり、決まった時間の散歩ではないらしい。なんとなく、この道を通ってニワトリたちに会えたらラッキー、と思うようになった。木陰に隠れていて気づかずに通り過ぎそうになると、コケコッコーと鳴いて呼びかけてくるのもかわいい。

そこから少し下り坂になり、だんだん民家が続いてくる。まっすぐに坂を下りていけば小田原城の入り口につく。しかし坂を下りる前に見てほしいのだが、ここで山道を抜けた途端に見えるのが、真っ青な海。坂道だからこそ、グラデーションまではっきりと望める。

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そこそこな傾斜の山道を歩いたご褒美のように見えるこの海の景色がたまらなくて、5月の暑い日差しの中でもこの散歩道を満喫した。



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