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姜尚中さんの名回答~人間は謎めいている

このところできていないのが、「新聞より」です。
書きたいことはあり、切り取った新聞はたまる一方。

  今日は頑張るぞ。
というのも、「悩みのるつぼ」姜尚中さんの回答に感銘を受けたからです。

朝日新聞 10月21日(土)別刷り be 「悩みのるつぼ」より 

認知症の義母を見て娘が「怖い」

 相談者は40代の女性。施設に住むお義母さんに会いに行ったそうです。お義母さんは認知症が進み、一言も話せず、表情も乏しくなっています。自分も他人も分からないようです。一緒に行った小学生の娘さんが「あんなふうになるなら早く死にたい、怖い」とつぶやいたとのこと。

  自分もこんふうになってまで長生きしたくない思いがあるけど、娘には命の大切さを伝えたい、という相談でした。

 姜尚中さんの答です。いろいろと言ってくださっています。その中で私の心に響いた言葉です。

【少し要約】

 尊厳を見つけ出すためには、おばあちゃんに対して抱いた反応を振り返り、掘り下げていく必要がある。つまり、二人(相談者と娘さん)のネガティブな反応の前提にあるものを問い直してみること。
 
 そこには二つの問題点がある
 ① おばあちゃんという存在をまるごと受け入れているようには見えないこと
 ② 他者からの刺激に反応する言葉がなくても、その人の中では、その人にしか分からない世界を生きているかもしれない
【終わり】

自分の中の世界

感想です。
①「まるごと受け入れているか」ということに関しては、家族はなかなか難しい。いつまでも元気でいてほしいという気持ちが強いからです。

②は、つまり外界とのやり取りはできなくなっても、自分の中の世界に生きているのかもしれないということですよね。姜さんは「人間は閉鎖系で、自己準拠的な存在」という言葉を使っています。

 「自己準拠」とは今、ネットで調べたら「評価や行動の基準を自分自身の中に持つこと」とありました。

 姜尚中さんのお母さんも、亡くなる前には、繭の中の蚕のように、自分だけの世界の中にまどろんでいるようだったとのことです。詩的ですね。


謎めいている

 私は、ハッとしました。今までこんなふうに認知症の方を理解していただろうかと思いました。

 姜尚中さんは「人間は謎めいているのです」
「人間は謎であるがゆえに、そこに尊厳が宿るとも言えるのでは」と言います。

 「科学をもってしても解き明かせない『謎』めいた存在としての人間。そこに命の尊厳と大切さが宿っている」と。


 とても優しい眼差しです。
世の中は決まりきったことばかりではない。認知症の人は何も分からなくなっているのではない。自分の中の世界で懸命に生きている。そう考えると、どんな状態でも愛しく感じられます。
私は、反応はできなくても感情は生きており、何かは感じておられるのではないかと思いました。

 姜尚中さんは、娘さんの言葉にも、寄り添って理解を示してくださっています。やはり優しいです。
 
閉鎖系という言葉から、「人間は孤独である。孤独であるから尊い」という、どなたかの言葉を思い浮かべたりしました。
 
 心に染みた記事でした。

この考えだけで、すべての問題が解説するわけではないけど、少しでも悩んでいる人の心が軽くなれば、と思いました。

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