写真は何を写しているのか~牛腸茂雄写真展
駅や公民館などにいろいろ置いてあるチラシ。(フライヤーと言うらしいですね)そのチラシの面白そうなのをもらってくるのが、もう趣味になっています。コーナーがあると自然に近づいていく。終わったものは資源ゴミにしますが、それでも整理がつかず、テーブル周りに溢れていきます。闇雲にもらってくるのではありませんよ。興味のある物だけです。(一枚ずつにして下さいとか書いてある時もある)
というわけで、どこからか、この展覧会のチラシももらってあったのです。でも、写真はよくわからないから二の足を踏んでいました。チラシの写真も白黒で地味だったし。
でも、チラシをよく読んだら、この写真家は脊椎カリエスを患い、36歳で亡くなったと書いてありました。「あ、これは行こう!」と思いました。期日が迫っていたので、今日、寒風の吹くなか、行ってきました。
行ってみたら二重丸
電車を降りて歩いて7分。時々行く、こじんまりしたミュージアムです。平日の午前中で、訪れる人は少なかったです。
牛腸茂雄(ごちょう しげお)1946~1983
初めて名前を聞きました。
第1会場は共著で出した写真集「日々」や短編映画など。第2会場は圧巻で、写真集「SELF AND OTHERS」から、モノクロの人物、家族や子どもたちの写真がたくさん。第3会場は一転してカラー作品で、雰囲気が全然違うので驚きました。愛用のカメラなども展示されていました。
写真を見て感じたこと
私はモノクロの人物の写真、特に子どもたちの写真がとても良かった。子どもたちの表情が良かった。家族の写真も自然で、いいなと思いました。写真を見ていると、何だかこちらが見られているような気がしました。
牛腸茂雄は被写体を通して何を見ていたのでしょうか。その写真を見る私たちは、何を見ているのでしょうか。
会場の解説に「自己と他者と第三者」というような言葉がありました。自己は他者と出会って変化するといったようなことでした。(記憶のみ)写真集の名前「SELF AND OTHERS」は訳せば「自己と他者」です。
デザイン学校時代からの友人、三浦和人氏の言葉。
。
写真には、写真家と被写体と写真を見る人と、3者がいるんだなと思いました。難しいことは理解できないけど、写真を撮る人がどういう人かによって、また見る人によっても、写真は違ってくるだろうなと思いました。
「牛腸のまなざし」に思いを馳せました。
ハンディキャップと作品
最初に書いたように、私がこの展覧会に行こうと思ったきっかけは「脊椎カリエスで、夭逝した写真家」だったからでした。でも、その理由ってどうなんかなと疑問も感じました。失礼ではないかと思ったのです。そんな説明なんかせず、作品を見てほしいはずと思いました。
しかし、牛腸茂雄は「20歳まで生きられない」と言われて生きてきた。その思いが作品に反映していることは間違いありません。だからこそ、人を惹きつける何かがそこにある。いや、全部じゃなくてそこも含めて。
同じく三浦氏の言葉
思慮深さと聡明さ
展示には、自分で書き留めたノートや月刊誌に掲載された文章、またお姉さんに宛てた手紙などもありました。手帳は几帳面な小さな字で書かれていました。
牛腸茂雄は精神医学や心理学にも関心をもち、ロールシャッハの図柄も作っています。これには驚きました。蔵書も膨大にあるとのこと。どれだけ難しい本を読んでいたのか。
河合隼雄さんの本や「モモ」や「星の王子さま」も展示してありました。カメラが持てなくなったら、執筆したいという希望も持っていたようです。
「A LETTER FROMBOOK f3」はグッズ売り場で買いました。本屋兼ギャラリーの「BOOKS f3」発行 の3部作の紙物。(折りたたんである)これ、優れものでした。その中にあった、本人の残した言葉「思考の手帳」から詩の冒頭を引用させていただきました。もっと長い。3ページ。
実は本人の詩や写真論は難しくて、ちゃんと理解できない・・・。
人に惹きつけられる
期待しないで行った写真展でした。写真は分からないからと毛嫌いしないで、中に入って見て、またひとり魅力的な才能を持ったアーティストと出会いました。
結局、写真とは何かは分からないままですが、絵と一緒で、何も考えなくて、ただ向き合えばいいのだと思いました。
ひとりの写真家の、才能とか生き方とか考え方とかに惹きつけられたのかもわかりません。背中は曲がっていたけどおしゃれで、聡明な人だったとのことです。最期の言葉が「ネバー・ギブ・アップ!」
*見出し画像は付近の街並み。
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2,600余字も使い、いいんだろうかと思いながら引用も多用し、ここまで紹介したのは、写真展を見に行った者として、牛腸茂雄の魅力を少しでも伝えたいと思ったからです。
伝わっただろうか。読んでもらえただろうか。本人の写真も載せたかった。
昼抜きだった!
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