NO MUSIC, NO 育児

わが家では、音楽が育児に欠かせない。

ふだんも折に触れて、こどもの成長にいい(感じがする)クラシックやジャズなぞをかけているが、1日2回は、必ず音楽を流しながら行う育児がある。

1つは、沐浴。ベビーバスに入れたむすこの体をわたしが洗い、妻はシャワーで全身を流す。むすこにとってはリラックスするバスタイムだが、親はわりかし汗をかく時間だ。

そんなバスタイムは、音楽を流せばグッと楽しい時間になる。最近はビートルズやクイーンなど、親(主にわたし)が楽しく歌える曲を小型スピーカーで流してフンフン歌いながら沐浴するのが常である。むすこはリラックスできているか不明だが。

トラウマを払拭する音楽

で、もう1つが、オムツ替えである。

といってもオシッコのオムツ替えは一瞬で終わってしまうので、ウンチ時のオムツ替えだ。ウンチのオムツ替えにはいまだ苦手意識がある。はじめのころにオムツを替えながら妻が“追いウンチ”を吹きかけられているのを見て以来、トラウマ化しているのだ。

ウンチのオムツ替えのたびにその記憶がよぎるため、毎回若干緊張する。気合いを入れる必要がある。

そんな時に、背中を押してくれるのが音楽だ。オムツ替え時に流す曲はいろいろで、Apple Musicでいろいろ検索して気分がブチ上がるアッパーな曲をかけたり、懐メロを歌いながら気分を紛らわせるなど、これまで特に決まりなくその都度対処してきた。

そんな中、見つけたのである。

サークル・オブ・ライフ

言わずと知れた映画『ライオンキング』の主題歌。
「サークル・オブ・ライフ」である。

ナ〜〜〜〜ズィゴンニャ〜〜、ババチ、チババ〜〜〜!

力強いラフィキのズールー語で始まるこの曲は、輝く太陽のもとで循環していく生命の営みを歌い上げる。

壮大な「サークル・オブ・ライフ」を流すことで、緊張を強いられていた時間は一変した。オムツ替えは、明日を担う「王子」のお世話時間となったのである。

「王子、今日はこんなにウンチが出ましたよ」
「王子の健康、それこそ、われわれ民の喜びです」

王子ことむすこに呼びかけながら、お尻ふきで現場をキレイにしていく。今回はかなり大量である。大量すぎて背中の方にまで広がっている。あ、足を動かしたからまた別のとこにウンチがついちゃった…。

《イグニャーマネングェナマバーラ、イグニャーマネングェナマバーラ》
折れかけた心を、横から聞こえるズールー語が勇気づけてくれる。ようやく終わり、キレイになった。

ふと見ると、拭きおわったお尻から新たなブツが顔を出している。次々と顔を出す。わたしは嘆息する。

「王子、まだウンチが出るのですか。王国の食事がお気に召したのですね。すばらしいことです…」

母のおっぱいから飲んだミルクが、お腹の中で幾度も循環を繰り返し、ウンチとなって出てくる。それはいつの日か、土に還って——。

そんなサークルオブウンチを夢想しながら再度お尻を拭き終わったわたしは、もう“続き”がないことを確かめる。

そしてむすこを天高く掲げ、プライド・ランドの民衆に今日のお世話が完了したことを告げる。地鳴りのような歓声がひびく。今日も王国の平安が約束されたのだ。

わたしにはシンバがいる

ただ、お世話係と思っていたわたしは、家系図的にはムファサ。いつの日かスカー的な何者かに足元を救われ、プライド・ランドを明け渡す運命にある。

だが、わたしにはシンバがいる。新しく替えたオムツに既に“追いウンチ”をしているシンバが。安心していい、はずだ。

サークル・オブ・ライフ。命はめぐる。

かくしてオムツ替えはすばらしいテーマ曲とともに、壮大な生命の循環、輝けるわが子の数奇な人生に思いを馳せる時間となった。

音楽は、あなたの育児を変えてくれる……のかもしれない。

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出来幸介

インバウンドメディア「MATCHA」で編集してます。前職の新潮社では単行本・月刊誌編集。主な仕事に『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』、『つかこうへい正伝 1968-1982』、『一発屋芸人列伝』(山田ルイ53世)など。2019年6月より半年育休取得中。
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