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丸健水産で飲む

その日を待ち構えていた。

6月1日、赤羽の丸健水産が営業再開したのだ。
あの、長蛇の行列ができる立ち飲みおでん酒場の丸健水産だ。
風情あるアーケード街の終端に店を構え、昼間から美味しそうにおでんとお酒を楽しむ人々が印象的なお店である。
わたしもサクッとおでんを食し、〆のだし割を楽しむセオリーに魅了されたうちの1人だ。
数あるタネの中でもスタミナというニラなどが入った練り物は欠かせない。
そしておでんのお供は必ず丸眞政宗のマルカップと決めている。これには深い深いワケがあるのだ。
今回は飲み仲間を集めて再開初日の丸健水産で飲んできた。

タネ選び

楽しくも頭を悩ませるのがおでんのタネ選びだ。
大根、ちくわぶ、がんもどき、昆布に卵…
美味しそうに煮込まれたタネがよりどりみどりで、毎回どれにしようか悩む。
スタミナを筆頭に、ギョーザやシューマイ、巣ごもり、カレーボールといった変わり種も多い。
今日はどれにしようか考えるのが退屈な順番待ちの間の楽しみだったが、空いていたので、すぐに自分の番がやってきた。今回はスタミナ、大根、がんもどき、しょうが天、そしてマルカップにした。

さあ、乾杯

テーブルに案内され、乾杯し、おのおの飲み始めた。
この日は少しひんやりとした気温だったので、温かいおでんが身に染みる。
厚切りの大根をハフハフしながら食べ、日本酒をチビチビとやる。こんどはスタミナをじっくり味わい、またチビチビと日本酒をやる。
閑散とした薄暗いアーケード街の中で、おでんと日本酒で1杯引っかけるのが、雑然とした昭和の世界にタイムスリップしたかのようで、雰囲気も含め、お酒が美味しく感じられた。
ちなみにわたしは平成生まれだ。

だし割、1杯50円

日本酒が残り少なくなったら、カップと50円玉を握りしめて店員さんのもとへ向かい、ぜひ「だし割」頼もう。
だし割というのは日本酒とおでんの出汁を1:4で割り、七味唐辛子をふりかけたものであり、日本中探しても恐らくここでしか飲めないオリジナルの割り方なのだ。
日本酒を割る、しかも塩気のあるもので、と邪道ともとれる飲み方だが、日本酒のキリッとした辛さと、鰹がふんわり香る出汁のまろやかさが絶妙マッチしており、とても美味い。
琥珀色に輝くだし割が身体にスーッと染み込み、わたしのエンジンが掛かり始める。

仲間とあれこれ喋りながら、だし割を最後の1杯までじっくりと味わう。
人生楽しいことばかりじゃないけど、生きていて悪くないなと思える瞬間だった。
50円ぽっきりで手に入れられる幸せがそこにあるのだ。
そして制限時間の30分に近づいたところへ2軒目に向かい、遅れてやって来た別の酒飲み仲間と合流した。

久しぶりに訪れた丸健水産は以前と変わらず、30分、1000円ちょっとで美味しいおでんに、だし割が堪能できて「せんべろ」のお手本となるようなお店だった。
まだしばらく大変な状況ではあるが、これからも赤羽のオアシスであり続け、いっぱいの幸せを多くの人にもたらしてほしい。



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