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どこまでも静謐な

深夜、BSでやっていた「バベットの晩餐会」。
以前から気になっていた映画なので、途中眠くなったら仕方ない、と思いつつ見はじめた。

こんなしみじみと、静かに心の絆を描いた作品だったとは。
あらすじを知らなかったので、てっきりグルメな料理がバンバン出てくる、目にも麗しい作品だとばかり。

舞台はデンマークの漁村。全体的に画面が水墨画のような、モノクロのような静けさで、登場人物たちの会話もその慎ましやかな暮らし同様、もの静かで大きな目を見張る事件は起きないけれど、その全体に流れるトーンが静謐でまさに自分好みで、いいなぁとしみじみと見入った。

物語は、若かりし頃、その美しさで異性を虜にさせてきた老姉妹の回想録でもある。敬虔なキリスト教牧師である父のもと、男性との色恋は避けて生きてきた姉妹。若かりし頃、彼女たちに出会い、思いを寄せつつも叶うことのなかった将軍、声楽家、二人の男性の秘めた恋心、その切なる思いと彼女たちに寄せる信頼感が、物語の後半に大事な展開を添える。

特に印象的だったのが、姉妹との出逢いから数十年経ち、久々に再会した将軍のセリフ。若かりし頃の姉に燃えるような思いを寄せつつも、叶わぬ恋と身をひき、別の女性と結婚することで出世の道を選んだ将軍が、老境に入って同じく老女になった姉と再会する。

「気づいていたかと思いますが、私の心はずっとあなたのそばにありました。これからも私の心はあなたのそばにあり続けます。
肉体は遠く離れていても、魂は一緒です」

タイトルにもあるようにクライマックスは豪華なフランス料理のコース、スペシャルな年代物のシャンパンやワインがこれでもかと登場する晩餐シーンで深夜に見終わってお腹ペコペコで眠りについたのでした。



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