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夢を見る猫。

こんにちは。
高橋みるく(4歳、男の子、王子様気質)です。

人間界では食欲の秋でしょうか?
かくいう僕は年中食欲が旺盛です。
あまり噛まずに飲み込める、カツオ出汁カップ(こだわりの味)が大好物です。チュールほどではありませんが、トロトロした出汁の中にフレーク状のカツオがプカプカと浮かんでいる猫界でも人気のオヤツです。

冷蔵庫から、あのオレンジ色のカップを出されるともう僕は居ても立ってもいられず、「みゃ~お」と自分でも一体、どこから出ているのか不思議なほどの甘い猫なで声を出してしまいます。

こないだ、ベランダで夕涼みをしていた時のことです。
黒くて妙にすばしっこい動きをして、触覚をそわそわ小刻みに動かす、人間から忌み嫌われがちな昆虫がいたので、彼をいつもの通り指でいたぶったり、小突いたり、ひっかいたり、遊んでいたのですが、一度、口にパクリとくわえたのです。

すると、お母さんが矢のごとく飛んできて「これ!みるちゃん。この虫はダメよ。ダメ、ダメ」と叫びながら、その虫を新聞紙でくるんで、サンダルで思いっきり執拗に踏みつぶすのです。
僕は驚きました。
普段、虫さんを見ると、「これ、みるちゃん。虫さんは殺しちゃダメよ」と言ってティッシュにふわりと虫をくるんで、お外に放してあげるお母さんが、目の色を変えて黒い昆虫と戦っているのですから。

どうやら、この黒い虫は人間から忌み嫌われるあまり、「殺虫剤」というものを振りかけられている可能性があって、僕が小さかった頃、この黒い虫をくわえて体調を崩したことがあったから、それ以降、お母さんはこの「黒いヤツ」に対しては執拗な行動に出てしまうそうです。
(同じ虫でも、大切にされる命とそうでない命があるなんて、不平等な気がしてなりません。世の中は不平等にして不条理なんですね)

僕は獲物(虫)を見つけると、息をひそめて華麗なジャンプで獲物にとびかかり、それを口にくわえて、飼い主のもとに持っていくことが自分の使命だと思っています。
すると、お母さんは「わあ!みるくちゃんはカッコいいねぇ!すごいねぇ」と手をたたきながら喜んでくれるので、すごく嬉しいのですが、そこはクールなガイを装って、「ふん。騒ぎすぎだよ。僕の腕前はこんなもんじゃないぜ」とドヤ顔を決めてやるのです。

最近は、お日様のぽかぽか差し込むリビングで、お気に入りのキャリーバッグの中でくつろぐのが好きです。

ある日、うとうとしながら僕は短い夢を見ました。
夢の中で僕は、大好きなカツオ出汁カップの海でアップアップおぼれているのです。僕は水が苦手で、泳ぐのがあまり得意でありません。カツオ出汁カップの海でも一生懸命にもがいているのですが、もがけばもがくほど、カツオが喉に詰まってしまいます。

でも不思議なのが、カツオが僕の喉に入っても、喉に詰まるどころか、あのとりろとした芳醇な味がちっともしなくて、「あれ? いつもの味がしないぞ」と首をかしげているのです。

夢の中では、どんなに美味しいものも、味がしないのだと気づきました。

僕の夢はいつか、カツオ出汁カップをお腹いっぱい食べることです。

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