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そのつもりはないのに。Tシャツ論

「集めよう!」と鼻息も荒くコレクションするつもりがないのに、ついつい増えているのがTシャツではないかしらん。

かくいう自分もTシャツが好きで、気づけばTシャツがたくさん。
(しかも似たようなものがたくさん)。
消耗品だからガンガン着倒して、へなへなになると部屋着に降格される。

声を大にして「好きです!」という機会は少ないけれど、
自分の中で揺るぎない地位を誇るのがTシャツ。

いつもそばにいてほしいTシャツ。
Tシャツにはカラリと湿度のないハワイの太陽が似合う気がする。

ジメジメしたいじけた人間には似合わないTシャツ。
陽気で一点の曇りもない晴天で、キンキンに冷えたバドワイザーが似合いそうなTシャツ(以前はコロナビールが好きだったけれど、このご時世、コロナが好きって言いづらいのよね。とんだとばっちりよね。コロナビールにしたら)

陽気なヤング・アメリカンによく似合って、
神経質そうな英国紳士には似合わなさそうなTシャツ
(しつこい)。

どこまで偏見論を続けるのか、とお叱りを受けそうなので、ここらで本題。

閑話休題。

村上春樹がTシャツ愛を語っている本「僕の愛したTシャツたち」が面白くて、すっかり夢中になって読んだ。
以前雑誌のポパイに連載していた記事をまとめたもので、春樹氏が持っているいろんなTシャツ(写真入り)とそのTシャツにまつわるエピソードが添えられている。

マラソンやトライアスロン好きな春樹氏らしく、レース参加賞に配られたTシャツや、アメリカで暮らしていた頃に手に入れたTシャツ、海外で作られた本の販促用Tシャツetc 。特に好きだったのが、意味不明のアルファベットが並ぶTシャツ。日本語に訳すと「??」なんだけど、逆にそういう意味不明ロゴって一抹のおかしさがあって。

確かにいろんなTシャツでも、メッセージ性の高いもの、プリントされた文字を読んで「ふうむ」とか「むむむ」考えこんでしまうようなTシャツは着づらい。だから意味のなさそうなアルファベット入りが一番、ラフで軽妙でいいのかも。たとえば「TWINS」(双子)とか。

さらに一番、印象深いのは春樹氏が一番大事にしているという「TONY TAKITANI」Tシャツ。映画化もされた短編小説「トニー滝谷」(実は、これ読んだことなかった!モグリだわ)。

思ったのは、私は春樹氏の軽妙でちょっとクスッと笑えるような語り口が好きなのだと。
春樹氏の口調、語り、文体が無条件に好きなんだと。
彼の文体が好きな以上、テーマは正直、何でもいいのだ。
何を語っても、彼の語るもの全部好きなのだ、と。

だから、この先、春樹氏が語るどんなテーマも、きっとクスクスと笑いながら読むのだろうなぁと。

初めて氏の作品を読んだのは、遥か16歳の頃。
その文体から、芥川龍之介みたいない細モテのイケメンを勝手に想像していた私は、氏の、ジャガイモのような愛嬌たっぷりのお顔に(失礼!)軽い衝撃を受けたのでした。




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