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秋の昼下がりの夢。

秋ですね。
ご飯も美味しいし(私の場合は年中ご飯が美味しいですが)、本にも集中できる涼しさだし、頬を通り過ぎる秋風に一抹の寂寥を感じながらアートにも触れたくなる季節です。

さて、最近、自分のなかでのマイブームが我が猫の発表会を妄想すること。
子どもの頃、習い事をしている人なら年に一度くらい発表会という大事な舞台があったと思います。学校でもクラス単位で劇をしたり歌を披露する学芸会、なんてものもありました(今もあるのかしらん?)

かくいう私は小学生の頃、学芸会という名の音楽発表会で、指揮者としてタクトをふるった記憶を思い出しました。その発表会のために母が買ってくれた一張羅の衣装(といっても、当時はやっていた、膝丈のモンペ風パンツに、ちょっとしたタイのついたシャツというなんちゃって正装)を身につけて。

で、ここで登場するのが我が猫、みるく(4歳、男の子、内弁慶の王子様気質)。

彼がまるで人間の子どものごとく、ステージでバレエを踊ったり、ピアノを弾いたり、オーケストラを率いて指揮をしているところなどを妄想するのです。

今日は猫がピアノのコンクールに出場するシーンです。
なんちゃって司会(私)による演者紹介も、もちろんついています。

「ええと、お待たせしました(こほん)。次は、エントリーナンバーよばん。高橋みるく君、4歳による演目はラフマニノフ作曲『パガニーニの主題による狂詩曲より第18変奏』です」

紹介を受けて、ステージにあがる我が猫殿、みるく。
この日のために用意された黒のタキシードを身につけて、首元には蝶ネクタイがささやかに結ばれている。
彼は初めてのステージに緊張している。
観客席の中に、いつも自分を、抱っこしたり、ご飯をくれたり「みるくちゃんは世界イチ、カッコいいよ!」とベタ褒めしてくれる「お母さん」を探すけれど、近視の彼にはなかなか見つけられない。

少しキョロキョロ、おどおどしながら舞台中央に向かう。
途中、重く垂れこめたビロードのカーテンに身体をこすりつけたり、
ステージの床のにおいをくんくんかいだり、
ようやくピアノまで到着すると、その猫足をぺろぺろしながらも、どうにか椅子に乗っかって鍵盤にその小さな指を置く。

次の瞬間、猫はうっとりしたように目を閉じて、軽く息を吐くかのような仕草で口をあけると、その指を鍵盤にちょん、ちょん、と乗せてメロディを奏でていく。

そんなシーンではっと目が覚めた。

秋の涼し気な陽気に誘われて、すっかりうたた寝をしていたみたい。

秋の昼下がりの夢。










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