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「1984」マスターミックス!! マツモト・ヒサターカー・インタビュー Part.1

2016年、一本のミックス・テープがリリースされた。タイトルは「1984」、内容はオープンリールを使ったテープ・エディットによるマスターミックスだ。それは、80年代にニューヨークのFM局において、ディスコ〜クラブDJやエディターによるDJミックスをオンエアする番組〈マスターミックス・ショー〉へのオマージュだった。

制作者はマツモト・ヒサターカー。京都でヴァイナル7レコーズを営むかたわら、DJ、プロデューサー、マスタリング・エンジニア、エディター、そして、AYBフォース・メンバーとしても活動している(07年に、デリック・レコーズからULTICUT UPS!!とのダブルネーム・アルバム『Cut Up CD』もリリースした)。

そんなマスターミックス・テープ「1984」が再発される。なぜマツモト・ヒサターカーが令和の時代にオープンリールを使ったテープ・エディットでマスターミックスを制作したのか?気になってしかたがなかったので話を聞いた。


Q1.今回のミックステープ再発にあたって、このミックス・テープの制作話を色々聞きたいと思いますよろしくお願いしますね。いきなり聞いてしまいます。「1984」というタイトルをつけたわけを教えてください。

その年を設定することで作りやすかったからです。箱庭~ジオラマ的なもんとして。

Q2.それはオープンリールを使用したテープ・エディットという手法を再現するにあたってということですよね?その手法で作られたマスターミックスがニューヨークのFM局で盛り上がった年代と解釈しても良いのでしょうか?

まぁ、完全に再現することは狙ってなかったですけどね。(NYのFM局)WBLSとかWKTUなんかはもちろん意識しましたけど。


Q3.当時オンエアされていたエディターによるマスターミックス・ショーですね。改めて聞きますがお手本にしたエディターは誰ですか?言い換えればマツモトさんが影響を受けたエディターということになります。

そら、もちろんラテン·ラスカルズ!って言いたいんですけどね。ああいう(エディットもの)を作るのは早々に諦めました。「1984」作るにあたっては別に「これ」っていう手本はないです。ああ、でも、フィリーの(FM局)Power 99とかボストンのWRBBとかWERSとか地方局のミックス・ショーは参考にしたかも。ニューヨークほどタイトじゃないやつ。

Q4.それはつまり彼ら(ラテン・ラスカルズら)のエディットが緻密すぎていて再現できないということでしょうか? おお、地方局のマスターミックス・ショーは正直ちゃんと聴いたことがないかもしれません。多少エディット&ミックスがゆるくなるんですね笑

ラテン·ラスカルズやあのへん(のエディター作品)はもう別格でしょ。気軽にやれるもんじゃない。地方局のミックス·ショーは、、、聴いてもらうのが早いかも。YouTubeなんかにもたくさん上がってるので聴いてみてください。例えばDJスピネリとか、ジョニー・フリーズにもらったミックスも結構あったかな。

Q5.ありがとうございます!そうですね。NYのエディターズは競争が激しいから、人と違うことやらなきゃいけない大会だったんで、ラテン・ラスカルズをはじめチェップ・ニューネズオマー・サンタナなど主要エディターの作品は、エディットが緻密すぎて理解不可能だったりすることが多々ありました。ジョニー・フリーズさん、NYのマスターミックス・コレクターですね。僕もお世話になっております。少し話がずれますがマツモトさんは過去のマスターミックスは今でもチェックしますか?

知らないのがあれば聴きますよ。でも全部網羅できるわけではないんで。

Q6.膨大なアーカイヴですもんね。マスターミックスを聴くときにどういったところに耳がいきますか?選曲?エディット?構成?

もう、エディットのことを気にしては聴かなくなりましたねー。いつのどこの(作品)か?くらいしか気にしない。

Q7.ポイントはそこではないんですね。今の話を聞いて、さきほど「1984」を作るにあたって別に「これ」って(手本が)ないですって言っていましたが、それとも関係するのかな?って思いました。つまり過去のエディターの模倣をするするつもりで作ったわけじゃないと。となったときに、作った動機はなにかな~?って素直に思いました。

特定の雰囲気を模倣するのはもう諦めましたかね。自分の中での(エディット)熱が下がったからこそやっとくか!くらいで。

Q8.そのまま興味を無くさないように?

こういう言い方するとアレですけど完全に熱は冷めましたよ。ただ「工程」としてはおもしろいんでやろうかなーくらいのテンションで。

Q9.それがすごいと思うんですよね。DJミックスならいざしらず、オープンリールとカミソリ、スプライシング・テープを使って切って貼るっていう、、、、言葉は悪いですけど面倒な作業をこなさなきゃいけないわけで。

面倒って言ったら面倒ですけどめちゃくちゃ楽しいんですよ。

Q10.過去のブログ(http://hisataakaa.blogspot.com/2017/06/1984-01.html)を紐解くと工程がきっちり紹介されていました。どういう部分が楽しかったりするんでしょうか?その楽しい部分を伝えてください!

そら「やってる感」みたいなのは半端ない。PCで済む作業を昔の手法でやるのってあっという間に時間過ぎて良いですよ笑。商用作品じゃないので気楽だし。

Q11.笑。そうですよね。波形の切り貼りやサンプラーみたいな押すだけ作業じゃないですもんね。ちなみにテープ・エディットの作業工程で1番気を使うことってなんですか?

失敗しないようにすること。磁気テープは良いお値段するので。切り出したテープになにが録音されているのか付箋できっちり管理したりとか。そういうので無駄を出さないようにする。

Q12.このインタビューを読んでいる人がイメージできるようにもう少し細かく聞きますね。失敗とは?希少価値の高いアイテムですもんね。ちなみにワン・リールでおいくらくらいするんですか?

まあ値段は調べてください(ヤフオクなんかではワンリール5000円から数万円まで)。切るとこ間違えたりはしないんですよ。切ってリールから離れた後の管理が大変なんですよ。

Q13.それはエディターでないとわからないことですね。僕は切り間違いが1番致命的かと思ってました!!切った磁気テープに付箋!!面倒臭い!!それ取れたらおしまいですね笑。部屋に縄のれんみたいに切ったテープが付箋ついて並んでる図が浮かびました。

昔は贅沢に使えたでしょうからそんなことなかったんでしょうけどね。さっきのブログの机の写真。あれがそんな感じですよ。それぞれ(のテープの切れ端が)キック一発だけ、スネア一発だけ、とかで。

Hisataakaaブログより

Q14.ひー!緻密すぎる!くしゃみできない!

方眼紙を机に貼って並べたパーツのこと書き込んで。

Q15.うああああ、想像しただけで頭痛くなります。それを楽しんでやれる胆力がすごい!(僕が細かい作業ができない人なだけかもしれないけど)

これは(実際に)見ないとわかんないかも笑

Q16.かなり緻密な工程でエディットされていくという作業過程がわかりました。それをミックスしていくことになりますよね?そこらへんの具体的な作業を教えてください。エディットにつきものギミックも含めて

テープは2ミックスなんでギミックなんか無いすよ。ミックスしてるところはターンテーブルでミックスしたところを録音してそれを繋いでいくだけで。

Q17.あ、そういうことなんですね。冒頭の「そらラテン・ラスカルズ。って言いたいんですけどね。ああいうの作るのは早々に諦めました。」を思い出しました。トータル60分のミックスですがトータルの作業時間はどれくらいになりました?

なんかチンタラやってたんで結構かかりましたよ。1ヶ月とか?

Q18.それでもターンテーブル・ミックスよりは圧倒的に手間がかかってますよね?

手間ってあんまり思ってないんで比べてどうこうはあんまり思わないんですけど。

Q19.言い方悪かったですね。例のブログの言葉を引用しますね。「とても根本的な話ですがこういうことをやることの利点は「楽しい」ということ以外にはありません。」これに尽きるということでしょうか。

商用作品から離れたらもう「自分が楽しいかどうか」しか基準がないんすよ。ってなると面倒臭いとかしんどいとかは思わんすわ。納期もないし笑。

Part.2に続きます。乞うご期待!!

https://delicatessen.thebase.in/items/73004819


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