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Say Kids What Time Is It?(改訂版)

もはや説明不要。90年代から現代の先鋭的なブレイク・ビーツ・シーンを牽引してきたレーベル〈Ninja Tune〉を主宰するJonathan MoreとMatt BlackによるCold Cut。彼らのスタートは、Double Dee & Steinski「Lesson 1、2&3」を模した「Say Kids What Time Is It?」だった。もちろん海賊盤。

87年1月に、わずか500部がリリースされた。世界の街角で大ヒットとなり現在まで幾度となく再発されている。英国最初のサンプリングのみで作られたメガミックス・レコードで約30ものネタを約5分に凝縮したもの。

UKの音楽サイト〈S.O.S〉に掲載されたCold Cutインタビューによれば、そのサンプリングはサンプラーを使っていない。全てヤマハの4トラックのカセットで「一時停止ボタン」を使用してピンポン方式で録音されたそうだ。その緻密さにはただただ驚かされる。Cut Up/Edit/Scratchといった手法を使うという当時の米国ヒップホップ・ビートの本質を捉えたものだった。Whos Samplingに元ネタがまとめられているのでぜひチェックを。

同年5月には、自主レーベル〈Ahead of Our Time Records〉の第一弾12インチ・シングルとして「Beats + Pieces」をリリースした。街角海賊盤ヴァージョンとレーベル〈Big Life〉からリリースした公式盤2種の都合3種類がある。

すでに街角では海賊ラジオ局〈Kiss FM〉のDJ、そして、前述の英国初のメガミックス・レコードを制作したDJチームとして評判だった彼らをシーンは放っておくわけがない。同年11月に彼らは音楽誌〈NME〉の表紙を飾った。

話は前後するが、Kiss FMはNMEに広告を持っていた。そこにCold Cutを登場させるギャラのかわりに、カムデンにあるレコーディング・スタジオを使用させたらしい。そのスタジオで出会ったのが女性レコーディング・エンジニアのRaine Shineだった。

UKの音楽サイト〈S.O.S〉に掲載されたCold Cutインタビューによれば、Matt Blackは言った。「Raineは私たちにテープ・ループの概念を教えてくれました。私は、カセットでレッド・ツェッペリンの「When the Levee Breaks」の1小節のループし、4分間のバッキング・トラックをエディットしようとしていました。しかし、Raineは、レコードからテープに録音し、その部分を複数回コピーしてから、オープンリールの編集技術(カミソリで切ってスプライシング・テープで貼る)を使用して編集してくれた。これが正解。それがテープの物理的なループになった。彼女はテープ・ループを制作する方法を教えてくれたんだ。」

97年にリリースした彼ら4枚目のアルバム「Let Us Play!」に、続編「More Beats + Pieces」を収録した。

話は逸れたが、「Say Kids What Time Is It?」で名をあげたCold Cutは、同年に〈Island Records〉からEric B.とRakimの「Paid in Full」のリミックスを依頼され「Seven Minutes of Madness」を作り上げ世界的な大ヒットとなった。

余談だが、Eric B. & Rakim ‎/ Paid In Full (Seven Minutes Of Madness - The Coldcut Remixのレコーディングにあたって、前述のRaine Shineがレコーディング・エンジニアを担当した。

同年、M/A/R/R/Sが同様の手法で「Pump Up the Volume」をリリース。英国のみならず世界的大ヒットとなった。それは、ポップ・マターにおいてDJがアーティストとして認められた瞬間だった。

その後の、Cold Cutとレーベル〈Ninja Tune〉の大躍進は周知の事実だろう。その全ては、Cut Up/Edit/ScratchといったDJ的手法を使用した海賊盤12インチ・シングルからスタートした。

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