見出し画像

ボウリングとドクターペッパー。

「さわやか律子さん」(若い人には何のことやらいきなりわからない)から10余年。大学時代ボウリングはすでに下火になって、あの巨大なピンのランドマークを残したままディスカウントショップに姿を変えているなんてこともままあった。その頃、埼玉県の松原団地というところに1ゲーム100円のボウリング場があり、何度か友人たちと連れだって行った。スコアを自動で計算してくれる機械が出始めた頃だったが、ここは何しろ安さがウリだったので手書きのままだった。もっともこちらは手書き大歓迎。ミスが続いたりすると、次のフレームをぐりぐりと囲ったり太線で仕切ったりとにぎやかなのだ。

100円なのでここでのボウリングは10ゲームが無言の了解事項になる。もちろん途中で挫折する事もよくあったが、どうせ行くならやらなきゃ損々とまあ2000円食べ放題とあまり変わらない。要するにバカなのだ。はじめはワイワイと賑やかに互いの一投一投に歓声をあげているが、5ゲームに差し掛かろうとする頃にはだんだんと口数も減り、やがて黙々と修行に励むようにただひたすらに投球を続けるようになる。たかがボウリングというなかれ、これが案外キツイ。腕はだるくもはやフォームもクソもない。バカに加えてヒマだったのだ。

そんな(?)ボウリングの友としてゲーム中よく飲んでいたのがドクターペッパー。1973年に日本上陸をしているから中坊の頃、初めて飲んだのはやはりボウリング場でだったと思う。全国的に流通しなかったようで、関東ローカルの飲み物という認識もあるらしい。妙に薬臭い独特の風味が特徴で、仲間内でも「好き派」と「嫌い派」はかなりはっきりと分かれていた。ただ、どちらに与していても「ドクダミペッパー」の愛称(?)で親しまれ、当時の炭酸飲料界では異彩を放つ存在だった。ドクター・ペッパーを毎日3本飲んで100歳以上生きたという逸話もあるらしいので、10ゲームのボウリングを完遂するためにはきっと必須の飲み物だったのに違いない(んなわけがあるか)。「スカッとさわやか」なコカ・コーラにはない背徳の味覚、それがドクターペッパーなのであります。


見出しのイラストは「飯田二歩」さんの作品をお借りしました。ありがとうございます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?