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BUZZ「ケンとメリー~愛と風のように」

中学生になり、何か部活をと勇んで卓球部に入ったはいいが、うさぎ跳びと壁に向かっての素振りばかりの毎日に嫌気がさし1年ももたずに退部。そもそも運動部の体質自体が性に合わないことに今さらながら気づき、晴れて帰宅部になった。

帰り道の商店街に「ブンカドー」というレコード屋があり、2階がオーディオの視聴ルームになっていて、ある日友人とフラッと立ち寄った。気さくな主人が明らかに買う気のない中坊にも愛想よく対応してくれて、ジャズやクラシック、ポピュラーと様々なレコードをターンテーブルに載せて聴かせてくれる。音楽に身をゆだねているとカサカサしていた気持ちがほぐれくるのを感じ、しばしば出入りするようになった。

そこで中一の坊主が聴いた今でも時折脳裡にリフレインされる曲が、BUZZというデュオの「ケンとメリー~愛と風のように」。フルコーラスのそれは、テレビ(スカイラインのCMソングだった)で耳にするサワリとは全く違って、それはカッコよくまさに風のように聴こえてきた。

「ケンメリ」の愛称で親しまれた4代目スカイラインの大ヒットCMなのだが、中一のガキにしては肝心のクルマの方にはあまり興味がなかったらしい。今見るとあの時代の風がびゅんびゅん吹いています。

さて歌である。サビまで律儀に刻まれるリズムがいいなあ。そして満を持して「あーいとかぜのようにー」のリフ。「スプーンとカップをバッグにつめて」「見なれた時計を部屋に残して」出かけてしまうのだ「今が通りすぎてゆく前に」。何だかわからないがパーンと視界は開けてくる。

BUZZは「はつかり5号」などのヒット曲もあって、定冠詞のようにつけられる「フォーク・デュオ」なんていう枠に閉じ込めてしまってはもったいない。間違いなく極私的日本のポップス黎明期を彩るバンドなのであります。


見出しのイラストは「さより」さんの作品をお借りしました。ありがとうございます。予約もしていないのに発売日のあとに行くと「はい、拓郎さんね」とか言って取り置きをしていてくれた「ブンカドー」さんは今はもうない。

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