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戯曲『 回る 』

中野坂上デーモンズの憂鬱

『 回る 』

作 松森モヘー

【『回る』公演動画 ↓】

https://youtu.be/XZAOGaQY0us

【こちらから戯曲のダウンロードもして頂けます】

https://drive.google.com/file/d/1B02fyom_tileztYuF-EB7FTFrI7ChqCp/view


【登場人物】

石田 楓  ( イシダ カエデ ) …細谷天歩
一宮 愛乃 ( イチミヤ ヨシノ )…田島冴香
上田 なつき( ウエダ ナツキ ) …長濱かほり
金井 南美 ( カナイ ミナミ ) …工藤彩加
倉木 由美 ( クラキ ユミ )  …矢野杏子
桜井 奈々枝( サクライ ナナエ )…西野茜
隅 亜希子 ( スミ アキコ )  …西出結
長井 咲  ( ナガイ サキ )  …ゆかわみつば
堀 ゆうは ( ホリ ユウハ )  …斎藤アイナ
別府 麻里 ( ベップ マリ )  …比嘉麻琴
松井 里子 ( マツイ サトコ ) …谷田奈生
宮地 光  ( ミヤチ ヒカリ ) …安藤安按
渡 加子  ( ワタリ カコ )  …中尾仲良
多田 友洋 ( タダ トモヒロ ) …柴田鷹雄


渡「 本日は、ご来場頂きまして誠にありがとうございます。中野坂上デーモンズの憂鬱、特殊公演『回る』インザライブスペースアニマオンザセット。東京で一番演劇をやってはいけない2日間のなか、こんなにも沢山のお客様にご来場いただけましたこと、ここにおります十四人のメンバーと、そしてスタッフ、関係者を代表しまして、まず心から感謝させて頂きたいと思います。本当に、本当に、ありがとうございます。渡加子(わたりかこ)と申します。上演に先立ちまして数点、ご説明させて頂きたい事項がございます。まず1点目。私たち中野坂上デーモンズの憂鬱、平常時の公演の際、役者から有り得ない量の椿が噴水の様に溢れ出ることで世界的に有名です。しかし椿の噴水はこのご時世、最も許されざる行為となりました。我々は極力お客様の方向に噴水が向かわないよう気を張って『回る』の稽古を続けてきました。しかし、我々中野坂上デーモンズから全ての椿を滅することは不可能でありました。そこで、私たちが考案させて頂きたい最良の解決策がこちらの『サランラップ』となります。これは非常にシンプルな施策で、お客様のいらっしゃる方向に向けて役者がセリフを発する際、お客様の身に危険が生じるレベルだと我々が判断した瞬間に、その役者の顔面をサランラップで覆うという形式をとります。一度見て頂くのが早いかと思います。こちらをご覧ください。」

     宮地が出てくる。サランラップを構える二人。と、突然、

宮地「 (顔にサランラップ)…うあわあああああああああああああああああああああああああああ!」
渡「 また2名以上の役者が同時に大きな声を出す非常事態などに関しては、このようなアクリル板を使用させて頂くこともございますので何卒ご理解のほどよろしくお願い致します。最前列にはお客様専用の『スプラッシュシート』もご準備させて頂きました。芝居中のいついかなる瞬間でもお客様自身が身の危険を感じた際は、こちらのシートで噴水から身を守って頂けましたら幸いです。その際、舞台上の役者が吹いてしまう可能性がございますが、決してお気になさらずご自身の安全を第一に考えて行動して頂けましたら幸いです。あと、空気清浄機と換気扇を本番中も作動したまま続けさせて頂きたいと思っております。静かなシーンではその音が、聞こえてくることもありますが、……(黙る・音がする)これがいま私たちの共有する空間で、その静寂だと、ここにいる皆さんと感じることができましたら幸いです。……今回の事があって、自分が普段、舞台をやってこれたことは、当たり前ではなかったのだと気づかされました。こうしてみなさんが、時間を作って、電車や、歩いて、時間を使って、ここに、私たちの芝居を観に来てくれる。そのことに本当の意味で今まで感謝できていなかったのではないかと思いました。でも今は違います、この瞬間の、演劇の、儚さに、この舞台が簡単になくなってしまうものだという事に本当の意味で気付いたからです。簡単な事で消えてしまう。こんな風に。(パンと手を鳴らす)……。だから「今」この瞬間、「ここに」、実在するのは、いまこの瞬間と、皆さんと、私たちと、この換気扇の音だけ…。それが全部で、この瞬間は、ここに一緒にいる私たちだけのものだから、今から数秒だけそれを一緒に感じてみましょう。照明も、落としてください。」

     明かりが落ちて、

渡「 …(目を瞑り)」

     にゃ~お。と誰か暗転中、猫の鳴きまねをした。

渡「 ……は?は? だれや?いまの、、、だれ?(誰かを)おまえか、」
誰か「 ……。」

     せまい舞台。
     せますぎる舞台。
     物理的にひしめき合う出演者たち。
     このご時世に。
     それにしてもせまい舞台で。
     こんなせまい舞台で何か生まれるのか。
     何かは生まれるのか。
     何も生まれないという方が難しいのだから。
     だから何も生まれないものというものも素晴らしいのだから。
     むしろ何かが死ぬ。
     何かを失う。
     そんなものも見てみたい。
     十四人の役者たちと想像以上にせまい舞台で、
     想像以上のものを作りたいというのだから、
     それはつまりその大きさはいかに。
     形状はいかに。
     それは想像できないものなのだからだから憧れる。
     終わるよりは始まる芝居なのだから。
     生きているよりは死んでいる芝居なのだから。
     続くよりは残る芝居なのだから。
     残される芝居なのだから。
     カラダ・バランス飲料 DAKARA

渡「 ……。」
     まずそこには一人の女。
渡「 …。」
     間
渡「 ………、」
     渡の時間で。
桜井「 ……、」
渡「 …。」
     そこへもう一人。
桜井「 …。」
     つまりそこには二人の女。
     渡と、桜井と。
     だから渡の時間は終わった。
渡「 …。」
桜井「 ……、」
     渡の手には小さなコンビニ袋。
渡「 (なん)なし、」
桜井「 は?」
渡「 (なん)なし。」
桜井「 は?」
渡「 (なん)なし。(強)」
桜井「 おい、」
渡「 は?」
桜井「 は?」
渡「 は?」
桜井「 は?」
渡、行こうとするので。
桜井「 (止)おい、」
渡「 (大)はあ!?」
桜井「 …!(驚)」
渡「 (驚いたので)はあ!?」
桜井「 …、」
     桜井、持っていたスマホで撮り始める。
渡「 …!」
桜井「 …、」
渡「 へ、」
桜井「 ………、」
渡「 へいへい!」
桜井「 …、」
渡「 へい!」
桜井「 …、」
渡「 へいへいへい!」
桜井「 …!」
渡「 へいへいへいへいへい!へい!へいへい!へいへえ!」
桜井「 あ?」
渡「 へー!」
桜井「 あ?な?」
渡「 へ~~~!」
桜井「 なんだおまえ、」
渡「 へえ!」
桜井「 なんなんだよまえはおま、え、は、」
渡「 やめて、」
桜井「 …、」
渡「 とんんおやまあ、」
桜井「 あ?」
渡「 とんのやめお、」
桜井「 …、」
渡「 とんのやめお、」
桜井「 やだ、」
渡「 …!」
桜井「 やだ!!」
     凄い勢いで袋から生姜を出す、渡。
渡「 (生姜を)…!」
桜井「 …だ!(撮り続けていて)」
渡「 …!」
桜井「 …だああ!」
渡「 (思わず)ひょ!」
桜井「 しょ!」
渡「 まっ…!」
桜井「 ほらしょ!」
渡「 ま!」
桜井「 生姜しょ!しょ!生姜!」
渡「 まあああっあああううああ…!」
桜井「 生姜ほらしょうが!しょうが!ふうろから、だした!ふくろおからあ!」
渡「 (同時に)わああああああ~……!」
桜井「 え?しょが、え?」
渡「 …ああああああ~~…!」
桜井「 おいい!」
渡「 …るううっうううう…。」
桜井「 おい!」
     金井に変わっていて渡は、
桜井「 …!」
金井「 …、」
桜井「 ……!」
金井「 …あ、ん、」
桜井「 だ、」
金井「 だれ?」
桜井「 だれ?」
金井「 は、だれ?」
桜井「 ちょ、だ、は、」
金井「 は?誰?」
桜井「 あー、だれ?」
金井「 は?だれ?」
桜井「 誰だよー、」
金井「 いや、」
桜井「 まじえ、」
金井「 誰だよお前が、」
桜井「 だれだよー、おまえよー、」
金井「 や、おまえが、は?逆に、は?」
桜井「 だれだよー。」
金井「 ちょ、やまて、」
桜井「 あ?」
金井「 やまて、あ、」
桜井「 あ?(あ、これか)ああ、」
金井「 な、え?なに?」
桜井「 ああ、あ?」
金井「 とって、」
桜井「 …、(やめなくて撮るの)」
金井「 え?あ、ちょ、」
桜井「 …(とってて)」
金井「 ちょ、(やめてほしくて)」
桜井「 …、(よけて)」
金井「 やめてよ、勝手に、は?」
桜井「 誰だよ、」
金井「 撮んないでええよ、勝手によおおお、」
桜井「 いや、」
金井「 ちょ、警察呼びますよお、まじで、」
桜井「 なにがまじだよ、」
金井「 あ?」
桜井「 あ?」
金井「 はああー?」
桜井「 こっちだよ、」
金井「 あ?」
桜井「 はああ、(ためいき)」
金井「 なにがー?」
桜井「 呼びたいのこっちだわあくさ警察―、」
金井「 は?」
桜井「 それ、」
金井「 あ?」
桜井「 それー、」
金井「 あはい?」
     金井の手にもスーパーの袋。
桜井「 おん、」
金井「 …、(中から)」
桜井「 おんー、」
金井「 (出して)ベーコン。」
桜井「 t?」
金井「 は?」
桜井「 と?」
金井「 は?」
桜井「 と?」
金井「 なに?」
桜井「 いっこ、あんだろ、もういっこ中に、」
金井「 え?(袋の中を)」
桜井「 ベーコンと、」
金井「 ベーコンと…、」
桜井・金井「 (出して)生姜、」
桜井「 (撮ってて)生姜、」
金井「 生姜、」
桜井「 生姜、な?」
金井「 生姜、」
桜井「 な、」
金井「 が?」
桜井「 生姜、」
金井「 が?が?生姜が?」
桜井「 それうちから盗んだやつだか、っしょ、」
金井「 …、」
桜井「 盗んぢゃじゃちゅだか、」
金井「 は?」
桜井「 …、(舌を)」
金井「 …、」
桜井「 うるせえよ!」
金井「 うるさくねえよ、」
桜井「 まんびきだかそえ、だかはい、警察行こけいさ、」
金井「 いや、ちょ、」
桜井「 警察、」
金井「 まって、や、」
桜井「 でんわするわごめんあ、じゃ、でんわ、」
金井「 まって、」
桜井「 …、(電話していて)」
金井「 まってって、たぶんこ、」
桜井「 …(電話かけながら)あ、っべ、」
金井「 アタシ、」
桜井「 まあああああ~…、」
金井「 ね、」
桜井「 ああ、わあああああ~…、」
金井「 ちょ、ねえ、ちょ、」
桜井「 るっ。」
金井「 まっ、」
     桜井は倉木になっていて。
倉木「 倉木。」
金井「 え?」
倉木「 倉木。」
金井「 …、」
倉木「 です。」
金井「 ああ、」
倉木「 倉木、」
金井「 金井です、けど、」
倉木「 はい?」
金井「 え?」
倉木「 や、いま、」
金井「 あいあ?はい?いま?」
倉木「 ですけどって、」
金井「 あいや、」
倉木「 ですけどってはいー?」
金井「 あ、ん、の、」
倉木「 はいーん!」
金井「 あのあた、」
倉木「 (電話に)え?」
金井「 ……、」
倉木「 どこって、」
金井「 …、」
倉木「 (金井に)どこ?」
金井「 は?」
倉木「 どこここ?」
金井「 …(どこだろう)?」
倉木「 あっは(爆笑)」
金井「 …?」
倉木「 どこ(笑)?」
金井「 や、」
倉木「 どこだよ(笑)」
金井「 や、さあ?やー、」
倉木「 (電話に)えーー?(笑)」
金井「 …??(どこだろう?)」
倉木「 どこここ?」
金井「 すーーー。」
倉木「 あーん、」
金井「 どこだお、」
倉木「 まって、」
金井「 え?」
倉木「 や、」
金井「 はい?」
倉木「 きれた、」
金井「 え?」
倉木「 きれた(電話)」
金井「 ああ、」
倉木「 電話ね?」
金井「 はあ、」
倉木「 電話ね切れたの、でんわ、(アタシ)ちがよ、」
金井「 ええ、、、」
倉木「 でんわ、きえたの、アタシじゃないよ、アタシ切れてないよ、」
金井「 あ、」
倉木「 あたしじゃないよって、」
金井「 ああ、ああの(わかってまs)」
倉木「 きれてないってアタア!」
金井「 …、」
倉木「 きれてない…きれてない…きれてねい…(つぶやいてる)」
金井「 回った?」
倉木「 …(つぶやいている)」
金井「 あの、」
倉木「 …、(つぶやいている)」
金井「 回りましたあの、」
倉木「 くるって、」
金井「 え?」
倉木「 くるって、」
金井「 なに?」
倉木「 くるって、」
金井「 くるって?くるってる?」
倉木「 くるってねええよおお!」
金井「 うあああ!」
倉木「 くるってねええよおおお!あたしはあああ!くるてねえええええよおおおお!」
金井「 …!」
倉木「 …、(つぶやいている)」
金井「 あ、」
倉木「 …、(つぶやいている)」
金井「 あ、ほら、」
倉木「 …おん?」
金井「 ほらほらやっぱほら。」
倉木「 ん?おん?」
金井「 ま、わ、ほらー、」
倉木「 おん?」
金井「 ま、わ、る。」
倉木「 あうぱ。」
金井「 …、」
倉木「 …、」
     金井は、上田に変わっていて。
倉木「 あーうぱー。うぱー。」
上田「 ……。」
倉木「 うぱー。」
上田「 ……。(きょろきょろしていて)」
倉木「 …。」
上田「 …。」
倉木「 …。」
上田「 なにこれ?(ビニールの袋を)」
倉木「 …。」
上田「 なにこれ?」
倉田「 …、」
上田「 …、(袋を)」
倉木「 くるって、」
上田「 …、」
倉木「 …、」
上田「 (ベーコンと生姜)あ?」
倉木「 くる。」
上田「 なにこれ?え?」
倉木「 警察、」
上田「 は?」
倉木「 …、」
上田「 警察?」
倉木「 くるって、」
上田「 どこに?」
倉木「 ここに、」
上田「 なんで?」
倉木「 電話で、」
上田「 電話で?は?」
倉木「 眉毛。」
上田「 …、」
倉木「 眉毛。」
上田「 ええ?」
倉木「 眉、」
上田「 あのこれ、」
倉木「 …、」
上田「 これ。(中身)」
倉木「 …、」
上田「 ベーコンと、」
倉木「 …、」
上田「 生姜なんだけど。」
倉木「 ま、」
上田「 ベーコンと生姜って?」
倉木「 まああ~、」
上田「 ねえ、ベーコンと生姜って、さあ、」
倉木「 まあー、わあ~、」
上田「 あ、まて、まって回る?」
倉木「 わああああ~~~~~…、」
上田「 回るの?あ、まって、これ、なになにに、なにに、てかえ、」
倉木「 わあああるううううう~、」
上田「 け、いさ、さ、つ、つ、て、ここ?ここに?」
倉木「 うううううううう~。」
上田「 あ、回った。」
     倉木は一宮に変わって。
一宮「 …。」
上田「 回った。」
一宮「 …。」
上田「 回りましたよね?やっぱ。」
一宮「 …。」
上田「 いま、」
一宮「 …。」
上田「 …くっそ。」
     一宮はドッジボールを持っている。
上田「 …くそ(電話をかけ始めて)」
一宮「 なんですかあ?」
上田「 ……、(電話)」
一宮「 なんなんですかあ?」
上田「 …、(電話を)ち、ち、ち、ち、ち、」
一宮「 …。」
     一宮はドッジボールを当てようと、
上田「 ちょちょちょっちょちょ、ち、っち、ちょ、」
一宮「 …、(振りかぶる)」
上田「 ちょっち~~!」
一宮「 (やめて)…?」
上田「 は?」
一宮「 (かまえて)…!」
上田「 ちょ、」
一宮「 …、(ふりかぶって)」
上田「 っち~!」
一宮「 …、、(嬉しそうに)」
上田「 はああ??」
一宮「 …(嬉・笑顔笑顔)」
     上田は電話に相手が出ないようで、
上田「 ちっ、」
一宮「 (急に)…!(ボールを構えて)」
上田「 ちょちょちょちょちょちょちょ!」
一宮「 …!(嬉・っちょ・期待して)」
上田「 …???(期待を裏切り)」
一宮「 (ふりかぶって)……!」
上田「 んなんなんなんなんなんな!」
     そこへ、
多田「 おっち。」
上田「 おお、」
多田「 おっちっち。」
上田「 …!(きてきて)」
多田「 はあ?」
上田「 ……!」
多田「 何してんの?」
一宮「 ドッジボール、」
多田「 はあ?」
一宮「 ドッジボールを、」
多田「 はあ?こんあとこで?はあ?」
一宮「 …、」
多田「 狙われてるよ。」
上田「 …!(いやいやいや)」
多田「 狙われてるよいいの上田さん、ほあ、」
一宮「 いきますよお、」
多田「 狙われてるよ上田さん、え、なんでこんなところドッジボールしてんの逆に、」
一宮「 いきます。」
多田「 は逆?」
上田「 ちょっと、」
多田「 は逆って(笑)は?」
上田「 ちょっ!」
多田「 なんの逆ー(笑)?だはは(笑)ぱやぱや(笑)」
一宮「 …(投)!」
多田「 …(うける)!」
上田「 そ!」
多田「 ぱやぱや!(上田に両手で)」
上田「 ががががが!」
多田「 ガガガガガって。」
一宮「 あは、あはあはは(笑)」
多田「 ガガガガガって(嘲笑)」
一宮「 あは、あはあは、あはあは、あはは(笑)」
多田「 笑うよな、たしか、に、たしか、ぬはは(笑)わらってるよ、友達、上田さん(笑)」
上田「 ああああ(いらつく)!」
多田「 わらわっれ照代、上田さん、わらわれー(笑)」
一宮「 あははははあh(笑)ドッジボールドッジボール(笑)あははははhあはhh(笑)」
多田「 なん?に?え?なんに?え?に、え(笑)?笑われてるよ、」
上田「 あいらつき、」
多田「 に?え?」
上田「 いらちゅく、きいらちゅ、」
多田「 え?」
一宮「 あは、」
上田「 いらつく!」
多田「 栄養は?」
上田「 は?」
多田「 栄養は?試験じゃないの?今日?」
上田「 栄養?」
多田「 ゆってなかった、べ、違うっけ?で、ゆって、え?」
上田「 栄養って、」
多田「 試験、」
上田「 誰と間違えてんの?」
一宮「 (多田を)あははははははははははは(笑)」
多田「 …………。」
上田「 栄養って、た、あれの?たべ、あのそ栄養?」
一宮「 (多田を)へへへへへへへへへへへへへ(笑)」
多田「 (急に)……お!(ボールを)お!」
一宮「 …!(急に)」
多田「 お!  お!」
一宮「 せうおん(一文字で)!  そぬをふぉ(一文字で)!」
上田「 ……。」
     しばらく続けている、多田と一宮。
上田「 多田。」
     続けている、多田と一宮。
上田「 多田。」
     続けている、多田と一宮。
上田「 多田。」
     続けている、多田と一宮。
上田「 多田?」
     続けている、多田と一宮。
上田「 多田!」
     続けている、多田と一宮。
上田「 津村?」
     続けている、多田と一宮。
上田「 多田?」
     続けている、多田と一宮。
上田「 多田。」
     続けている、多田と一宮。
上田「 ただああ!」
     続けている、多田と一宮。
上田「 多田!」
     続けている、多田と一宮。
上田「 ただあああああ!」
     続けている、多田と一宮。
上田「 ただ!」
     続けている、多田と一宮。
上田「 多田。」
     続けている、多田と一宮。
上田「 …、」
     続けている、多田と一宮。
上田「 多田。」
     続けている、多田と一宮。
上田「 …。」
     続けている、多田と一宮。
上田「 …。」
     続けている、多田と一宮。
上田「 ぱいぷにん?」
     続けている、多田と一宮。
上田「 …。」
多田「 え?」
一宮「 ま、わ、」
上田「 あ、」
多田「 多田って、おれのことか、」
一宮「 るっ。」
多田「 って、いええええええええええ(狡)!」
     一宮は隅に変わって言て、
隅「 あああああああああああああ、、、、!」
多田「 …!」
隅「 はあああああ…!はあああああああああああ…!」
多田「 ごめごめごめごめごめごめごめごめごめ…!え?ええっつっつっつ~!つんも?」
隅「 あああああ、、、、!あああああああ、、、、、、!ああああああああ、、、、!ああああ、、、!」
多田「 (上田)…?」
上田「 回ってんの、たぶん。」
多田「 え?」
上田「 沖縄いったんじゃなかった?」
多田「 ああ、おん。」
隅「 …………………………………!」
上田「 多田だよね?」
多田「 ああ、でも、まあ、多田、」
上田「 まあ、多田?」
多田「 まあ、」
上田「 沖縄いったんじゃなかった?」
多田「 ああ、」
上田「 ……、」
多田「 ………、」
上田「 …。」
多田「 (改めて)おっ。」
上田「 お。」
多田「 (隅に)ごめんな、ね、ごめんね、ご。」
隅「 …。」
上田「 回ってんの、いま。」
隅「 回る、」
上田「 (多田に)沖縄いってなかったっけ?」
多田「 いいじゃんそれもうさあいまはあ、」
上田「 いやでも沖縄いってなかったっけいま、」
多田「 あだかいいじゃんいまそれいまははあさあさあさだか、」
上田「 いや回る前にさちょっときいとかないと写真撮っていい?」
多田「 ちょ、うあめ、やめ、だ、だれにみせん、みせんでしょ、だれかに、」
上田「 みさこ、」
多田「 ちょ、」
隅「 ま、」
多田「 ちょー、」
隅「 あの、回るって、」
上田「 いやみんなにライン来てたからねいやぶっちゃぶっちゃけけっけっけ、おまえやばいよまじで、」
多田「 ちょ、ちょ。(隅が)」
隅「 なにが?」
上田「 (撮ろうと)…まあああ、あ、やば、回るわ。」
多田「 え?」
隅「 え?」
上田「 まわるまわる、わああああああああああああああああああああ。」
多田「 ちょ、状況状況、」
上田「 やっぱほら、」
多田「 上田さん、」
上田「 警察来るよ。」
多田「 は?」
隅「 けいさあ、」
上田「 生姜とベーコン。るううううううううううううううう。」
多田「 あ、」
隅「 あ、」
     上田は堀に回って。
堀「 ……。」
多田「 まわった。」
隅「 …。」
多田「 まわった、いまの、わかる?」
隅「 違うひと、」
堀「 はあ?」
多田「 あ、こんちわ、」
堀「 …、」
隅「 …、」
多田「 こんちわ。」
堀「 きも。」
多田「 ……。」
隅「 ……。」
堀「 どこだよお、ここ。だれー?」
多田「 (隅に)回るの初めてもしか?もしかし?え?」
隅「 あ、」
多田「 はじめ?はじめて?」
隅「 ああ、」
堀「 だれだおまえあら、あー、あー、あー、だれだなここー。にーー。」
多田「 だいじょぶ、3人いるから、よかったよかった、」
隅「 あ、」
多田「 …、(ゆびで3)」
隅「 さんにん、」
多田「 (かぶって)さんにん、そ、」
堀「 おい、」
隅「 ……、」
堀「 おい、」
多田「 (隅に)ふたり、わかんないのね、だと、なんか、に、」
隅「 …(堀が呼んでますけど)」
多田「 3だと、あれだけど、2だとふたり、なんか、ね、回ってるのって、なん、ふたりだと、ふわって、ぼんやり、してて、てて、あは(笑)」
隅「 うああああああああ(なんか怖い)」
堀「 …。」
多田「 3にんだとでも、ちゃんと、一人、あれ、ね、わかる?なんか?」
隅「 え?(こわい)」
多田「 あれ?回ったら、わかるじゃない、もう一人が、3にんめ3にんめ、」
隅「 3にん、」
多田「 め、そう(強)!」
隅「 わあああ!(こわい)」
堀「 ……は?(袋の中を出して)」
多田「 だかだいじょうぶだいじょうぶこわくないこわくないこわくないよー、」
     堀、多田の背中に生姜を投げて、
堀「 おい。」
多田「 は?」
堀「 やめろお。」
多田「 は?」
堀「 やめろおよ、眼鏡よお、」
多田「 はあ?」
隅「 警察来るって、もう少しで、」
堀「 おい、はなれろおろお、」
多田「 あ?え?」
堀「 はなれろおろろ、その眼鏡からよお、」
多田「 ちょ、な、」
隅「 むすこしで警察来るって!来るから!」
多田「 ちょ、え!?」
堀「 やめろおよお眼鏡よおよ!」
多田「 ちょ、えい、へい!」
堀「 眼鏡よお、から、お、め、離れろ眼鏡よ、、、、!」
多田「 ちょ、えーい?えーい?」
隅「 あああん!(勇気を出して離れる)」
多田「 ええー??」
     間
堀「 …。」
隅「 ふうううう(こわかった)ふうううう(こわかった)」
多田「 意味不明だか、」
堀「 それ、」
多田「 ら、」
堀「 おけ。(ボールを)」
多田「 いや、」
堀「 おけって、」
多田「 意味不明だか、」
堀「 (くって)いいからそれおけ、」
多田「 ら、」
堀「 それおけ、」
多田「 意味不明だからいいけどおいても、」
堀「 おけ!」
多田「 …。」
     間
多田「 …。」
堀「 …。」
     多田、そこにボールを置こうとするが、
多田「 ……、」
堀「 …、」
多田「 ……。」
堀「 おけよ、はやくなんだ!」
多田「 いや意味不明だかき、ら、さ、」
堀「 は?」
隅「 警察来るよってカニ。」
多田「 おきおいてもおいよ、」
隅「 カニ?」
多田「 よけいにおくといみ、」
隅「 カニ?」
多田「 いみふめいだか、」
堀「 いいからおけよはやくじゃあはやく、」
多田「 ぼーるふつうのぼーる、」
堀「 じゃあおけはやくおけふつうな(ら)ぼーるならはやくおけ!おけ!」
多田「 ……!」
     置こうとすると、
多田「  まあああああssssssssssss!」
堀「 …!」
隅「 ひいい!」
多田「 わああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
堀「 おけよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
多田「 るんっ!るんっ!るんっ!」
堀「 ……。」
     多田は長井に、回った。
堀「 まわった?」
長井「 おおお!」
堀「 まわった?いま、まわった?よ、ね?」
     と、隅に堀。
別府「 おおお!」
堀「 …。」
     別府に回っていた。
堀「 え?」
別府「 おおお!」
長井「 おおおおおおおおおおまええ、だれだん!」
堀「 は!」
別府「 おおおお!」
長井「 (かぶって)おおおおおおまええええええ!だれだん!」
堀「 は!」
長井「 ねえ!」
別府「 おん!」
堀「 あ?」
長井「 べっぷ!」
別府「 おん!」
堀「 回った?」
長井「 べっぷ!」
別府「 おん!」
堀「 回ってない??」
長井「 …!」
別府「 おんて!おん!」
長井「 …!」
堀「 回った(アタシが?)、の、か?回った(アタシが?)、」
別府「 長井!」
堀「 …、(手には)」
長井「 ベーコンと、生姜!」
別府「 長井(歓喜)!」
長井「 でも、」
堀「 アタシが、回った。」
別府「 宮地?」
堀「 え?」
別府「 宮地!」
長井「 別府!」
別府「 長井!」
堀「 っ?っ?」
別府「 宮地!」
堀「 ぱお?」
別府「 宮地…?」
堀「 あっし?」
長井「 宮地?」
別府「 (頷いて)宮地?」
堀「 堀堀。」
別府「 堀?」
長井「 宮地?」
堀「 …(笑・首ふって)堀。堀。」
長井「 …。」
堀「 (二人を)だれー(笑)」
別府「 …。」
堀「 まわった?」
別府「 長井。」
長井「 …。」
堀「 え、回った?で?アタシ?」
別府「 長井。」
長井「 へえん(返事)、」
堀「 …?」
長井「 …、(堀に近づいてきて)」
堀「 回った?アタシ、回った?」
長井「 …ぎめん、」
別府「 長井、」
長井「 ごめん、」
堀「 だれー?だれー?どこー?」
長井「 知らないひと、よみがえらせちゃた、」
別府「 ごめん、」
長井「 ごめん、」
別府「 まじでごめ、みすった、あれ?」
長井「 ごめ、」
堀「 え。」
長井「 ごめ、」
堀「 え、」
別府「 ごめ、までじで、」
長井「 ごめ、」
堀「 よ、よみ、」
別府「 ごめ、」
堀「 回った?」
長井「 ごめー、」
堀「 あ、ま、ちょ、」
長井「 ごめごごめごめまじ、まじ、ごめ、」
堀「 あ、ま、」
別府「 そだよね、」
堀「 ま、」
長井「 (くって)まじでーーー、ご、」
堀「 ちょ、」
長井「 ご、ごめ。」
別府「 ご。」
堀「 回った?」
別府「 ご。」
堀「 回った?」
別府「 もう、ご。も、ご。ご。もう、ご。」
長井「 …?」
堀「 回って、きた?」
長井「 回る?」
別府「 回る?」
堀「 回る?」
長井「 回る?(指を)」
別府「 あ、回る。(指を)」
堀「 あ、ああ。あああ~。」
別府「 ああ~。」
長井「 あああ~(笑)」
堀「 (指を)ああ~。」
     3人で何となく、だらだらと笑う時間。
3人「 ああああ~~。」
     だらだらと笑う時間。
2人「 あああ~。」
     2人がだらだらと笑う時間。
1人「 ……。」
     1人は笑っていなくて。
堀「 (別府に)それえなにいい?」
別府「 え?」
堀「 それええ。」
別府「 ああ。(何か持っていて)」
堀「 …え?」
別府「 馬の骨(照)」
堀「 へ。」
別府「 …ほほ(鼻)」
堀「 なんでー?」
別府「 なんで、って、や、」
堀「 え?馬の骨?」
別府「 …?(長井に・言ってもいい)?」
長井「 なんで?」
堀「 え?馬の?え?」
別府「 いやいって、」
長井「 や、なんで逆にやゆっちゃいけないのかだった、」
別府「 あー、」
長井「 だった、」
別府「 あーごめ、あた、」
長井「 ごめごめごめ、」
別府「 だ、ぎゃくにだった、わす、」
堀「 それわあ??」
長井「 ごめ、」
堀「 骨?それ?」
長井「 え?」
別府「 堀、」
堀「 骨?」
長井「 ラー油?」
堀「 え?」
長井「 ラー油?」
堀「 え?」
長井「 や、」
別府「 や、ラー油。」
堀「 え?」
別府「 ラー油、」
長井「 ラー油ね。」
堀「 え?」
別府「 ラー油。」
堀「 ラー油?」
別府「 え、ラー油知らない?」
堀「 え、」
長井「 じゃないでそ?」
別府「 ラー油。」
長井「 でそ?じゃやんくてでそ?」
別府「 ラー油、餃子とかの、知らない?」
堀「 ラー油はわかるけど。なんで?」
長井「 あ、ラード。」
別府「 あ、ラードラード。」
長井・別府「 ラードー(笑)」
別府「 うぱうぱ(笑)」
堀「 …。」
     間
長井「 …。」
     長井、そこにあるボールをまた、
別府「 やる?」
堀「 え?」
長井「 …。」
別府「 長井?」
長井「 うん。」
堀「 え?」
     ボールを中心に。
別府「 ん。」
堀「 ん?」
別府「 ん。」
堀「 なに。」
     ベーコンと生姜を持たされる堀。
長井「 別府、これ、」
別府「 え?」
長井「 これ、」
別府「 は?」
長井「 おさえてて、持ってて、」
別府「 ああ、うぱうぱ。」
長井「 ここ、で、」
別府「 ん。(馬の骨を)」
長井「 (受け取り)…、」
別府・長井「 あ、ラー油だ。」
堀「 …?」
     長井、ボールの上で、馬の骨に、ラー油を垂らすと。
堀「 まーーー、わーーーー、ーーーるっ。」
別府「 …。」
長井「 ……。」
     堀は宮地に回った。
宮地「 ……。」
     間
別府「 おお、」
宮地「 ……。」
別府「 おおお、」
長井「 ……、」
     宮地は眠たい顔をしていて、
宮地「 …………。」
長井「 宮地。」
別府「 宮地!」
宮地「 ………。」
長井「 宮地…!(抱きつく)」
宮地「 ……。」
     宮地は嫌な顔をしていて。
別府「 …。」
長井「 (抱きついていて)…。」
別府「 宮地。」
宮地「 …。」
     長井から離れ。
長井「 …宮地、」
別府「 宮地?」
宮地「 ……。」
     宮地は嫌な顔をしていて。
長井「 …。」
別府「 …。」
     間
宮地「 …。」
     間
長井「 …宮地、ピンときてない?」
宮地「 …。」
別府「 …。」
長井「 宮地?」
     間
宮地「 宮地…、ピンときてない。」
別府「 宮地、わかる?(アタシのこと)」
宮地「 …。」
長井「 …なん、」
別府「 わかる?(アタシのこと)」
宮地「 …。」
別府「 宮地、わかる?」
     間
宮地「 …宮地、わかる。」
別府「 おお、おお、おお、おお、おお(嬉)」
長井「 (嬉)わかる?宮地、アタシ?宮地?」
宮地「 …。」
     間
宮地「 (長井を)宮地?」
長井「 ちがちがちがちがうちが、」
別府「 (同時に)ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゅあ、」
宮地「 …。」
長井「 (お前が)宮地。」
宮地「 (お前が)宮地。」
長井「 ちゃちゃちがって宮地じゃない。」
宮地「 宮地、じゃない。」
別府「 (おまえが)宮地。」
宮地「 (自分が)宮地?」
2人「 そうー!」
宮地「 宮地(薄笑)」
別府「 宮地宮地(嬉)」
宮地「 へへ、へへへへへ(薄笑)」
長井「 笑って笑って、」
宮地「 へへ、へへへへへ(薄笑)」
     目は笑っていない。ひきつってる。
別府「 笑ってね、る、ね、」
長井「 笑ってる、」
別府「 宮地、」
宮地「 …?」
別府「 (私は)別府。わかる?」
宮地「 …?」
別府「 別府。わかる?」
     間
宮地「 別府。」
別府「 いま!き!にゃ!ちょ、ね、」
長井「 …!(嬉・拍手拍手)」
別府「 いま!いま!きいた?きいた?きいたきいた?」
長井「 ……ききききききき!(頷いていて)」
別府「 宮地、わかる?」
宮地「 …。」
別府「 わかる?」
宮地「 …。」
別府「 別府。」
宮地「 今別府。」
別府「 今別府じゃないよ。宮地、別府。」
宮地「 …。」
別府「 別府。」
宮地「 今別府。」
別府「 今別府じゃないよ宮地、別府。べっ、」
宮地「 …、」
別府「 っ……っ、」
宮地「 っ…今別府。」
別府「 いっかまあ(笑顔)」
長井「 宮地、わかる。」
宮地「 …。」
長井「 わかる?」
別府「 宮地?」
長井「 わかる?長井。」
宮地「 …。」
長井「 長井、わかる。宮地?」
宮地「 …。」
別府「 宮地?」
宮地「 …、(口を開けるのだが)」
長井「 …、」
別府「 …、」
宮地「 …、」
長井「 …、」
別府「 …、」
宮地「 ……、」
長井「 なにこえ、」
別府「 宮地宮地、」
宮地「 …?」
別府「 長井、わかる?長井?」
宮地「 今別府、」
別府「 は、私、そうそう、ちゃ、わた、いま、ちゃ、わた、いま、た、ちゃ、あー、いま、」
宮地「 今別府、」
別府「 じゃあ、いま、別府としよう、あた、し、じゃ、うん、いま、今別府、」
宮地「 今今別府。」
別府「 うぬうんうん、」
長井「 (くって)ながい!」
宮地「 …!」
別府「 そそそ、ま、宮地、宮地、長井、長井、わかる?」
長井「 長井、長井だよ、わかる?わかるでしょ?みや、宮地!宮地!あたし!」
別府「 長井、」
長井「 あ!いま!」
別府「 あ、」
長井「 いま!」
別府「 あたし、ごめ、いま、」
宮地「 今別府、」
長井「 ちが!なんで!あた!」
別府「 ごめ!宮地?宮地?」
長井「 (かぶって)ながい!な!が!い!ながいい!」
宮地「 …。」
別府「 宮地宮地、」
宮地「 …?」
別府「 (アタシは)…?」
宮地「 今別府。」
別府「 (おまえは)…?」
宮地「 宮地。」
別府「 (長井は)…?」
宮地「 べっ……ぶ?」
別府「 (アタシが)別府別府!」
宮地「 (指さして)今別府!」
長井「 宮地なんで宮地!むしろ!むしろっちじゃん!じゃ!あた!あた!し!でしょ!じゃん!ふつう!考えて!て!や!あ!あt!おぼえてるの!あたし!あた!あたしじゃ!で!せよ!でしょ!べっぷより!なん!なんで!ななんなでなん!宮地!宮地!あた!あた!あたし!あたしだよ!じゃないじゃん!べっぺより!あ!じゃん!あたし!さき!さきさき!」
宮地「 …?」
長井「 さき!さきいいいい!覚えてないすか!?さき!」
宮地「 …?」
長井「 さき!長井咲!」
宮地「 …。」
別府「 長井、」
宮地「 今別府!」
別府「 …。(首を横に振り)」
長井「 長井、咲。」
別府「 長井。」
宮地「 …。」
     間
長井「 ……勝手蘇らせてごめんか勝手蘇らせてごめんか、」
別府「 長井、」
宮地「 …ながい。」
長井「 …!」
別府「 いま…、」
長井「 だ!(と口に指を)」
宮地「 ながい。」
別府「 長井て。」
長井「 宮地。」
宮地「 長いて思ていた、シーン、この、シーン、もう、いいだろって思て、もういた、長井よ。」
別府「 長井…!」
宮地「 長い、」
長井「 そう長井…!」
宮地「 長いよいいよもうもう長いよもういいよもう長いと思っていた長い、長い長い、長井。永い。永い、、、、、、永い、永いどこかを、こう、通過、こうしているだけなのかもしれないと、こう、そう、思っていえいえああああ、あなんざなんかはああははは(薄笑)はあ回っていてそお、その、そおの園そのそおの園その途中でいまなんんかないようなしかない気がしていて、だか、か、かあこのなんだろなんかなんだろな二人のこともなんかなんかはなんだかわかんなくてなんかだからわかんないってなんかことは別になんだろなんかこのなんだろななんかっなんだろなんな二人がなんかなんなんだかなんかなんなんだなんか二人じゃなくてもなんかいいかってことなんだかなんなんだかなんかなんだかわかんないんだかなんだかなんかかんだか。」
長井・別府「 まーわーる。」
     別府と長井は、松井と石田に回っていて。
宮地「 なあなんかしんだってことかあ?ことがあ?これが、」
     間
宮地「 なんかやあえいきかえっちゃったえああってえことおおかあ?」
松井「 …。」
宮地「 そおおんなかんじい?」
石田「 …。」
宮地「 宮地、いまそおおんなかんじか?」
松井「 ど?思い出したっ?」
石田「 だした?ね思い?だし?」
松井「 思い出した?」
石田「 え?」
宮地「 ちょっと、」
石田「 え?」
宮地「 ちょっとだえ、」
松井「 おおうそうそえ、うそ、」
宮地「 うあうああ。」
石田「 は?」
宮地「 えあだした、おもい、」
松井「 なにい?え?」
宮地「 どんか、」
松井「 どんか?どんな、は?」
石田「 ききたい、」
宮地「 その、そのむかし、」
松井「 え?」
石田「 おお、え?」
松井「 そのむかしって、」
石田「 おお、おお、おお、」
宮地「 その、」
松井「 昔話?かよ、始めんの?え?いまあ?」
宮地「 その、そう、そのむかし、その、」
石田「 その、」
松井「 その?」
宮地「 そのむかしそうその、その、そのってしばいがあって、その、そのそのはその、あのその、その、そのそのからその、あの、そのー、そうその、その、そののそのそのそうそのそのー」
松井「 おい、」
宮地「 そのの、その、そうそう、そのそうその、」
石田「 宮地、」
宮地「 まああ~、わああ~、」
松井「 (抱きついて)だめ!宮地だめ!」
宮地「 まあ~わああああああああああああ~、」
石田「 まわらないで宮地ダメ!ダメ!回っちゃダメ!メ!メええ!」
松井「 だめだめだめだめよお!め!だめ!だめ!め!」
宮地「 わあああああああああああああ~!まあああああああ!わああああああああああ!」
松井「 だめだめだめだめだめだめだだめ!だめ!みやち!だめだめ!だめ!だめだ!」
石田「 宮地!」
宮地「 まあああああああああああああああああ!」
松井「 まああすごい遠心力!」
石田「 遠心力遠心力!」
松井「 まあすごい!まあああすごい遠心力!遠心力!」
宮地「 わあああああああああああああああああああああ!」
松井「 すごい!遠心力!遠心力!遠心力がすごいはあ!わあああ!」
石田「 (は)遠心力!」
宮地「 るうううううううううううううううううううううううううううううううう~!」
石田「 …!」
宮地「 どばーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」
松井「 …!」
石田「 ……!?」
     間
宮地「 これ、これ!」
     間
宮地「 これえええ。」
     宮地は抱き付く二人を。
松井「 宮地、」
宮地「 これこれ、」
松井「 思い出した、」
宮地「 これ、これ、」
松井「 うんうんそう。」
宮地「 その、(漢字を書く)の、なか、なの、」
松井「 そう、その、」
宮地「 そのの、なかの、まわる、の、」
松井「 そう。」
石田「 ……。」
宮地「 そのの、なかを、まわってる、の?アタシ?」
松井「 …そうなのお。」
宮地「 その、なか、」
松井「 そう、その、なか、その、なかで、回る。回ってる。」
宮地「 回る、」
松井「 回り続ける。回り続けてる。ずっと。」
宮地「 そののなか、で、」
松井「 回り続けてるの、の、みんないまずっと。」
宮地「 …回る、」
松井「 回る。中野坂上デーモンズの憂鬱、特殊公演、回る。本日はご来場いただきまして本当にありがとうございます。回る。続けます。つまり回り続けます。」
石田「 そうその、そのっていう、おわれなかったしばいが、あって、その、そのは、その、そのっていうしばいは、ほんばんを、むかえられずに、ほんばんまでゆけず、ゆけずに、とちゅうで、だいたい、二十日、目を、過ぎた、あたり、で、その、しばいは突然、おわってしまって、いて、で、でもべつに、それはべつにいま、べつに、それがかなしいとか、くやしいとかはぜんぜんそのなくて、そのそういうものはどうでもよくて、いいんだけど、で、ぜんぜん、むしろいや、なんかべつにそのがそのどうとかこうとかそういうのどうでもよくてそのいいのただわたしたちは、その、そのにでていた、わたしたち、はその、役者ではなく、役者はいいのもう、そのそとの芝居のそとの、生活みたいなの、に、戻っていける役者はいいのだけどわたしたちいはいまその、そののそのせかいいにいうまれたみたいなかたちの、ていたわたしたちはなんかゆうれいみたいだからそのそとに、でれないでれなくてその、ていうか、そののゆうれいみたいな、そのっていうしんだおしばいの、おしばいのぼうれいのゆうれいのおしばいのなかにいるわたしたちはまたその、そのをくりかえすくりかえすことにきづいたのがそのそのがおわって15日目くらいだった、だいたいだったからだからわたしいたちいはそのおわれなかったそのをもうその35日くらいくりかえしてはくりかえしてはくりかえすしかなくてさまよってるう。」
渡「 そうでしたか。」
石田「 ええ。」
渡「 いやあそれは。」
石田「 はあ。」
渡「 それはそれは。」
石田「 ええまあ。」
渡「 うーんうんうん。」
石田「 あの、」
渡「 はい。」
石田「 …。」
渡「 このたびは、」
石田「 ああ。」
渡「 …このたびは。」
石田「 あの。」
渡「 はい?」
石田「 あなたもですよ。」
渡「 え?」
石田「 あなたもそうなんですよ?」
渡「 ええ?」
石田「 わかってらっしゃいますか?」
渡「 ええ。」
石田「 ええって、あなたほんとにわかってらっしゃいますか?ほんとうに、」
渡「 ええ、わかってますよ。」
石田「 なにをです?」
渡「 ええ?」
石田「 なにをわかってらっしゃるんですか?」
渡「 なにをっていやあなた、」
石田「 ちょっとよしてくださいよ。」
渡「 ちょっと待ってくださいよなんできゅうにそんなあなた、」
石田「 はい?」
渡「 はい?じゃないですよ、ろこつな。」
石田「 なんですか?」
渡「 なんですかじゃないですよ。ろこつなあなたそんな。」
石田「 なんなんですか?ええ?」
渡「 ええ、ってあなた、」
石田「 なんですか?言いたいことがあるんならはっきり言ってくださいよ。私、急いでるんです。」
渡「 急いでるってなんなんですか?」
石田「 なんなんですかってなんでもいいじゃありませんか、あなたには関係のないことですよ。」
渡「 関係のないことってそんなこと聞いてみないとわからないじゃないですか。」
石田「 わかりますよ、よしてくださいよ。」
渡「 よしてくださいよって、あなたどこかへいくんですか。」
石田「 あっちですよ。」
渡「 あっちってどっちですか。」
石田「 あっちはあっちですよ。」
渡「 あっちになにかあるんですか。」
石田「 用事があるんですよあっちにちょっと。」
渡「 用事ってなんなんですか。」
石田「 なんなんですかじゃないですよなんなんなんですかあなたの方こそ急にそんな。」
渡「 なんなんなんですかってなんなんなんなんですか。」
石田「 なんなんなんなんなんですかってなんですか。」
渡「 いいですか。私が言いたいことは、なんであなたは急にそんな口調になってしまったんですか別役実みたいな、急に。」
石田「 失礼な。どこが私の口調がいま別役実みたいになってるっていうんですか。よしてくださいよ。」
渡「 ほらなってるじゃないですか。」
石田「 そうですか?」
渡「 そうですよ突然なんですかあなたねえ!」
石田「 ちょっとそんな急にひどく声をあらげないでくださいよ。」
渡「 ほらほらほらその感じ!それ!」
石田「 そんなことないですよ。」
渡「 いまの感じですよ!ありますよいきなり突然。」
石田「 ええ?」
渡「 別役さんじゃないですか。」
石田「 別役さんじゃありませんよ。まったく。よしてくださいよ。」
渡「 それそれそれそれ!それですよ。」
石田「 ええ?」
渡「 いやその『ええ』のその言い方とか、も、それ『よしてくださいよ』とかそういう、」
石田「 ええ?よしてくださいよ。わたしはあっちに用事があるからいかなければならないんですよ。」
渡「 全部ですよ!全部!全部その感じ全部別役さんみたいですよ!あっちに用事があって行こうとしてる感じとかそれ!」
石田「 なんですかこのひとは。」
     横には桜井が帽子をかぶり傘と四角い鞄を持って立っていて。
渡「 そういうあなたの物言いがですよ、」
石田「 はあ。」
渡「 それそれまたです。そういう、そ、はあって、そういう所ですよ。」
石田「 それがどうしたっていうんですか?」
桜井「 どうかしましたか?」
渡「 (渡に)それ。それですよ。」
桜井「 はい?」
渡「 (渡に)だからそれですよ。それなんですよ。ぶ~~~~~~~!」
桜井「 あの、どうかしましたか?」
渡「 めちゃっくちゃっ別役実じゃないですか!」
石田「 この方がね、私のこと別役実だって言うんですよ。」
渡「 いやまっあなたを別に別役べべっつに別役み別の役のみのややこしい実だとは思ってないですよその喋り方がってちょっともうそれはどうでもいいくらいほんとあなたこそ別役実ですよ!優勝ですよおめでとうございます!実です!(桜井に)」
桜井「 みのる?」
渡「 別役、実ですよ!」
桜井「 私は桜井ですよ?」
渡「 いいえ実ですよ!もうほとんど傘と帽子とこの鞄!実じゃないですか!」
桜井「 実じゃありませんよ。桜井ですよ。」
渡「 あれー?もしかしてあなたどこかで会ったことがありませんか?」
桜井「 私も実はそんな気がしてたんですよ。」
渡「 そうですよね。あれ?どこでしょうか?」
桜井「 どこでしょう?どこでしょうか?失礼ですがあなたご趣味は?」
渡「 私の趣味は万引きです。」
桜井「 万引き。万引きってあのあれ泥棒のやつですか。」
渡「 そうです。」
桜井「 泥棒のライトなやつのことですか?」
渡「 それ以外に万引きってなんかありますか?」
桜井「 いえそれ以外に聞いたことはありませんね。」
渡「 じゃあその万引きのことですよ。」
桜井「 あーれえ?でもどこかで絶対お会いしたことありますよね?」
渡「 もしかして前世でしょうか?」
桜井「 前世ってあなた輪廻みたいなやつのことですか?」
渡「 そうですね、輪廻転生みたいなやつのことです。その輪廻以外に輪廻なんて言葉聞いたことありますか?」
桜井「 いえ、それ以外に聞いたことがありませんね。」
渡「 そうでしょう。」
桜井「 あれ?なんかさっきからぐるぐるしてませんか?」
渡「 ぐるぐるしてますか?」
桜井「 ええ。」
金井「 どうかしましたか?」
渡「 回ってますか?」
桜井「 なんか、あれ?あなた。」
金井「 私ですか?」
桜井「 いえ、あの、」
金井「 体調でも悪いんですか?」
桜井「 いえおかしな話なんですがね今ここにいたあなたが、私のことを見て、別役実で優勝だっていったんですよ。」
     間
金井「 …はい?」
桜井「 いえだから、」
金井「 あ、いいです。何回聞いてもたぶん意味わからないと思うんで。」
桜井「 あれ?あなたもしかして前世であったことありますか?」
金井「 こわすぎますよあなた総合的にみてもなに言ってるんですかさっきから?」
桜井「 いやでも、」
金井「 まあたしかに、」
桜井「 ね?」
金井「 なんとなく私もそんな気がしてきました。」
桜井「 そうですよね?どこかで会ったことあるんですよわたしたち。」
金井「 で、私があなたのことを別役実で優勝させたんですか?」
桜井「 そうそうそうなんですよ。」
金井「 まあでもたしかにあなた別役実で優勝してもおかしくないですよね。」
桜井「 やっぱりあなたもそう思いますか?」
金井「 ええ、その帽子とか、傘とか。」
桜井「 (鞄を)これあげます。」
金井「 ええ、悪いですよ。というか正直私はこんな鞄欲しくはなかった。」
桜井「 いいんですよ。(渡して)私正直こんな鞄欲しくはなかったので。」
金井「 エスパー!」
桜井「 なんですかあ?」
金井「 あなたもしかして私ですか。」
桜井「 どうなんでしょうか、そんなこともありえるんですかね。」
金井「 ぐるぐるしますねなんか。(帽子を)」
桜井「 そうなんですよぐるぐるするでしょう?(渡して)」
倉木「 ぐるぐるするんですか?」
金井「 ぐるぐるするんですよ。(かぶって)」
倉木「 (金井に)それすっごい別役実みたいな鞄ですね。」
金井「 いやそうなんですよ!やっぱりあなたもいややっぱりそう思いますか!」
倉木「 ええ。もし別役実選手権みたいなのがあったらあなた優勝してますよ。」
金井「 違うんですよ(興奮)!いやそうなんですけどいいやまちがうんですよ!いやいまいまそうだったんですよ!」
倉木「 はい?」
金井「 いやそうその信じてもらえないかもしれませんけどいまここに、ね、いたんですよチャンピオンが。」
倉木「 はいいいーー?」
金井「 いや信じてもらえないっておもってるんです絶対おもってるんですけども、」
倉木「 はあ、」
金井「 でもいまここにいま実際ねチャンピオンがねいたんですよ!いたんですよ!」
倉木「 いたってあなた別役実選手権のチャンピオンがいまそこにいたってことですか?」
金井「 そうなんですよ!その通り!そのあのあなたのいまの言葉のその通りなんですよ!」
倉木「 あなたなにをゆってるんですか?」
金井「 そうですよね。」
倉木「 別役実選手権ってなんなんですか?」
金井「 なんなんでしょうか?」
倉木「 だいじょぶですか?」
金井「 いやだいぶ不安になってきましたよ。だってこんな別役実の話ずっとアレしててしてますけどねえこれ別役実知らない人からしたらほんとこれなんの時間ですか?」
倉木「 それは心配しなくていいでしょう。」
金井「 はいー?」
倉木「 心配しなくていいですよそれは。」
金井「 あなた、」
倉木「 だって、」
金井「 なんてこというんですか。」
倉木「 だって別役実のこと知らない人はこんなときにこんなところこないですよ。」
金井「 えーーいやそういうもんですかあ??」
倉木「 そういうもんですよ。」
金井「 あなたどこなにあなに目線ですか。」
倉木「 みてますよ、」
金井「 え?」
倉木「 あなたのこと、」
金井「 私のことですか?」
倉木「 私のこともですよ、」
金井「 ええ?」
倉木「 こう、」
金井「 どこから?」
倉木「 全体を、前から、」
金井「 ええ?」
倉木「 上から、」
金井「 えええ?」
倉木「 うしろから。」
金井「 見えてるんですか?」
倉木「 そう、見えてるんです。」
金井「 神様ですか?」
倉木「 はい?」
金井「 神の視点ですか?あなたのそれは。」
倉木「 あーそうかもしれませんね。」
金井「 あーーなんか、(帽子を)」
倉木「 ぐるぐるしてきます?(もらって)」
金井「 (回っていて)はい、」
倉木「 (かぶって)ぐるぐるしてきますね。私も、ぐるぐるしてきました(回わりはじめていて)」
金井・倉木「 あーーーーーーーー(回る)」
倉木「 まーわるーまわーるーよーじだいーいはーまわ(回る)」
上田「 らないでください!(抱き付き)」
倉木「 うぱー。」
上田「 回らないでください!」
倉木「 うぱー。」
上田「 アナタと私、絶対、会ったことがあるんですよ。」
倉木「 どこで?」
上田「 ここで!」
倉木「 ここって?」
上田「 園で!」
倉木「 そのって?」
上田「 ここです!」
倉木「 園、」
上田「 その中で!」
一宮「 せまくないですか?」
上田「 はい?」
一宮「 せまくないですかここずっと思ってたんですけどここ。」
上田「 せまいです。」
一宮「 せまいですよね。」
上田「 せますぎます!」
一宮「 せますぎますよね。」
上田「 しかもどんどんせまくなってるんですよ!」
一宮「 そうなんですかあ?」
上田「 そうなんですよ!そのがどんどん!」
一宮「 せまくなってるんですかあ?」
上田「 せまくなってるんですよ!動けないでしょ?」
一宮「 (動いてみるも)動けないんですよ。」
上田「 ここです。」
一宮「 ここですか。」
上田「 ええ。」
一宮「 ここがそのですか。」
上田「 そこもそのです。」
一宮「 ああ。」
上田「 ここも、あそこも、そこも。」
一宮「 へええ、」
上田「 私たちはそのです。」
一宮「 そのですか。」
上田「 ただしくはそのなかです。」
一宮「 そのなかですか。」
上田「 そのしんだそののなかです。」
一宮「 そうですか。」
上田「 せまい。せまくなってる。」
一宮「 そういえば。」
上田「 なんですか?」
一宮「 さっき別役さんに会いましたよ。」
上田「 えええええ。」
一宮「 そこで。」
上田「 ええええ。」
一宮「 あっちで。」
上田「 ええええ。別役さん、えええ。別役さんですか?」
一宮「 ええ。」
上田「 別役さんて別役実さんのことですか?」
一宮「 ええ。それ以外に別役実ってなんかありますか?」
上田「 え、チャンピオンじゃなくて?」
一宮「 チャンピオン?」
上田「 いや、さっきいたんですよそこに。別役実選手権のチャンピオンにあったっていうひとが。」
一宮「 別役実選手権?」
上田「 そうなんですよ。」
一宮「 あなたなにをゆってるんですか?」
上田「 そうですよね。」
一宮「 別役実選手権ってなんなんですか?」
上田「 なんなんでしょうか?」
一宮「 だいじょぶですか?」
上田「 いや、え、あ、いえそれ以外にそうですよね。あの別役実以外に別役実だなんて聞いたことありませんけどね。」
一宮「 じゃあその別役実のことですよ。」
上田「 そうですよね。だって別役実なんてひと世の中に二人として存在するはずがないですもんね。」
     間
一宮「 まあ案外、わたし別役実が世の中に二人存在していたとしても驚かないですけどね。」
上田「 ええ?そうですか。」
一宮「 ええ、だって別役実ですよ。」
上田「 まあたしかに、別役実ですもんね。」
一宮「 もしかしたら一人も存在してなかったかもしれませんしね。」
上田「 なんかあぐるぐるしてませんか?」
一宮「 別役さんがですか?」
上田「 いいえ、私たちがです。ぐるぐるしてませんか。」
一宮「 別役さんがですか?」
上田「 だから、」
多田「 死にましたよ。」
一宮・上田「 ええええええ?」
多田「 死にました。」
一宮「 ああ、別役さん。」
上田「 ええええええええええ?」
一宮「 ほら別役さんです。」
上田「 あなた、えええ?別役、別役実ですか?」
多田「 そうです。吾輩は別役実である。」
上田「 ふざけないでくださいよ。」
多田「 吾輩は、」
上田「 やめてくださいよそれはまた別の芝居じゃないんですか?」
一宮「 別役さん死んだんですか?」
多田「 そうなんですよ。死んだんですよ私。」
一宮「 コロナでですか?」
上田「 ちょっといっかい芝居止めます。アナタなんてこと言ってるんですか!」
一宮「 へ?」
上田「 それはあまりにもちょっ!不謹慎ですよ!」
一宮「 そうですか?」
上田「 ありえないです!いまのは!」
一宮「 そうですか。え、すいません、コロナの件がですか?」
上田「 いやコロナもそうですし、その」
一味「 コロナで別役さんが死んだって件がですか?」
上田「 頭おかしいんですかあなた?」
一宮「 すいません、どうしても作家としてこの件だけは書きたくて仕方なくて、」
上田「 は?作家?」
一宮「 頭おかしいんです、すいません。」
上田「 作家って何ですか?」
一宮「 すいません。」
上田「 作家?アナタが作家なんですか?アナタがこの芝居を書いてるって言うんですかアナタが?」
隅・上田「 ただしくはアナタが、っていうよりも私が、いる、この、そのは、私たちのその世界はぜえんぶ、ですが当然作家が、書いているので常に、作家は、私と私たちの隣にいると、そう思っていただいてけっこうです。」
多田「 ははははは(笑)」
一宮「 別役さん?」
多田「 ははははは(笑)」
隅「 あなた沖縄に行ったんじゃなかったですか?」
一宮「 沖縄?」
隅「 警察が来るんです。」
一宮「 なにが来るんですか?」
隅「 来るんですよ。」
一宮「 何がくるんですかだから?」
隅「 だから、」
多田「 不謹慎て気持ちはどこから来るんですか?」
隅「 さあ。」
多田「 どこからくるんでしょうか?」
一宮「 あっちじゃないですか?」
隅「 あっち。」
一宮「 こっちかもしれないですけど。」
多田「 どっちからくるんでしょうか。どっちから来るかさえわかっていれば私たちは待つことができるんですが。」
隅「 なにをですか?」
多田「 なにって。」
一宮「 不謹慎をですか?」
多田「 そうですね。」
隅「 待ちますか。」
     間
一宮「 探してきます。」
隅「 え?」
一宮「 私、探してきます不謹慎を。」
隅「 ああ。」
     一宮、去る。
多田「 行ってしまいましたね。」
隅「 まあそこにいますけどね。」
多田「 ああ。」
隅「 せまいですから。」
多田「 せまいですからね。」
隅「 はあ。」
多田「 続けますか?」
隅「 え?」
多田「 続けますか演劇を。」
隅「 いいんですか?」
多田「 もちろんですよそれ以外にやることがありませんからね。」
隅「 じゃあ、」
堀が立っていて、いつからか手をぐるぐるしていて。
多田「 演劇を続けます。」
堀「 戻してもいいですかー?」
隅「 え、」
堀「 話をもどしてもいいですかー??」
隅「 あ、え、」
堀「 演劇を戻します。」
多田「 ははははは(笑)」
堀「 戻します。死んでますよね?」
多田「 私?」
堀「 はい、死んでますよね別役さん、」
多田「 はい。」
隅「 ちょ、」
堀「 確認ですが、別役、」
多田「 実です。別役実です。」
堀「 死んでます。」
多田「 死んでます。」
堀「 死んでますね。」
隅「 ちょ、さすがに連呼するのは、ちょ、不謹慎ですよ。」
堀「 不謹慎ですよ。」
隅「 え?」
堀「 私、不謹慎ですよ。」
隅「 あの、」
多田「 ああ、」
堀「 私が不謹慎です。私は、不謹慎なんですよ。」
多田「 ああ、こっちから、」
隅「 …。」
堀「 はい?」
多田「 そうでしたか、こっちから来られましたか。」
堀「 ええ。」
多田「 いや、さっきまでどちらからこられるかって、ねえ?(隅に)」
隅「 …。」
多田「 話てたんですよ。」
堀「 ああ、すいません。こっちから。」
多田「 こっちでしたね。」
堀「 不謹慎こっちからきちゃいました。」
多田「 あ、じゃあ、」
隅「 あの私、」
多田「 いいえ私が、」
隅「 いえ、私が、探してきます。」
堀「 どうされたんですか?」
多田「 いえ、いま、」
隅「 あなたを探しに行った人がいて、」
堀「 私をですか?」
多田「 そうなんですよ、ちょうどさっき、あっちにあなたを、まあここにいるんですけど。」
隅「 せまいですから。」
多田「 せまいですからね。」
堀「 そうでしたか。」
隅「 でもちょっとアタシ探してきます、不謹慎を、探しに行った人を探しに行ってきます。」
多田「 そう遠くまで行っていないといいんですけどね。」
堀「 そこにいるんですよね?」
隅「 そこにいるんですけど、……でもやっぱりアタシ、(行くので)」
多田「 待って…!(とその手を掴み)」
隅「 うあ、あああああ、、、(振り払い)触んないでください!」
多田「 いやあっちに、」
隅「 なんか!生理的に!無理!」
多田「 そんなっ急に…!」
堀「 コロナだかあですか?」
隅「 (あなた)…!」
堀「 コロナだかあですか?」
隅「 あなたね、、、」
堀「 不謹慎ですよ?はあ?私、不謹慎だっていってるじゃないですかあ不謹慎ですよお!」
多田「 よっ。」
隅「 …(言葉をなくし去ろうと)…!」
多田「 だからこっちですよ、(手を掴み)」
隅「 (振り払って)ああああなたあとお!わたしい!前世でなんかあったんですか!??」
多田「 前世?アナタと実がですか?」
隅「 きゅーに悪寒が…!」
堀「 コロナですかあ?」
隅「 いい加減にしてくださいよおおお…!」
     間
隅「 …私は、蜷川さんがね、蜷川幸雄が死んだとき、あ、死んだーって思ったですよ、思っただけで、シンプルに死んだって、ぜんぜーん悲しくなんなくてなくて悲しくむしろまあ当然ですからああ↑?赤の他人ですからああ↓?無理してー悲しくなってるやつ見てるほーが悲しいーーからまじでえ。」
堀「 いいですよー。」
隅「 (でも)別役さん死んだとき、死んだって思わなくて、いまも思わなくて、ごめんなさいこれはいまアタシ喋ってるかあ作家喋ってるかあ、わかんないんですけども、」
堀「 いいですよいいですよ。」
隅「 ごめんなさい、不謹慎ですか?」
堀「 全然不謹慎じゃないですよでもいいですよどうせこれ全部全部作家喋ってることにすぎなんいんですよひとりの書いてることに全部ひとりの自分頭作家喋ってる事に過ぎないってことにいまさら目え逸らしてえもなかいまさらちゃんじゃなあですかなあか無駄そおな見えなあいみたいなふりははははは(笑)」
多田「 ははははは(笑)」
堀「 かあーくそうとしても無意味むだむだってーかまーずどうどうとさく・えんしゅつ・どーんてわた・しが・つくて・ます・はははははは(笑)でーん。」
多田「 ははははは(笑)…(急に)」
堀「 むりむりむりいい隠しきれないせす無意味ー(笑)」
隅「 顔が。急に別役さんの顔。」
多田「 ………(無)」
堀「 別役さん?」
多田「 ……(無)」
堀「 わらって。」
多田「 …(無)」
堀「 …わらってよ…!」
多田「 ……(二カーーーー・笑顔)」
     間
隅「 …嗤う、別役、実っ…るっ。」
多田「 …(二―――)(でも)その作家も気づいてないってだけで、神に書かされてるってことに。」
隅「 え?」
多田「 …。」
隅「 神?」
多田「 そうそう。もでもそれ神ももっと大きなものに突き動かされてるってこと気付いてないから。」
     間
隅「 大きなものってえ?」
堀「 宇宙?」
多田「 さあ。」
堀「 宇宙?」
多田「 …?(みあげて?)」
隅「 …ひろいですからね。」
堀「 …あんー回ってるー?」
多田「 そうねー。」
堀「 回ってるんだねえ。」
隅「 ……、(行こうと)」
堀「 (隅)だからそれ、そえはそれはねアタシたち話してるってことなんだねえアタシたちが。」
隅「 ………、」
聞いたか聞いてないか、隅は探しに去る。
多田「 行ってしまいましたね。」
堀「 まあそこにいますけどね。」
多田「 ああ。」
堀「 せまいですから。」
多田「 (堀の肩を叩き)空は広いですけどね。」
堀「 きも、」
多田「 続けますか?」
堀「 え?」
多田「 続けますか演劇を。」
堀「 いいんですか?」
多田「 もちろんですよそれ以外にやることがありませんからね。」
     堀はいつからか手をぐるぐるしていて。
堀「 戻してもいいですかー?」
多田「 え、」
堀「 話をもどしてもいいですかー??」
多田「 そのぐるぐる…(やまたくださいよ~)」
堀「 演劇を戻します。」
多田「 ははははは(笑)」
堀「 戻します。死んでますよね?別役さん、」
多田「 はい?」
堀「 確認ですが、別役、」
多田「 実です。別役実です。」
堀「 死んでます。」
多田「 死んでます。」
堀「 死んでますよねでも生きてるも死んでるもないのか別役さんは。」
多田「 おろっ(ずっこけて)」
堀「 別役さん?」
多田「 えそんなことないでしょ死んでますよ完全にいっぱい。」
堀「 やでーもなんてえかそのー芝居の中で生き続けてる感じーじゃないえすか。」
多田「 その?」
堀「 芝居の中で、アタシたーちー、と一緒で、その、」
多田「 しばいのなかで?」
堀「 なかでその、生き続けちゃってるでちょ?」
多田「 …。(考えてる)」
堀「 ……、」
多田「 ……。(考えてる)」
堀「 …別役さん?」
多田「 …うーん考えてる。」
堀「 いまあ?」
多田「 うん、そう。」
堀「 ………、、、(不安になってきて)」
多田「 5分もらっていい?」
堀「 むりい…!」
多田「 …3分、」
堀「 むりい、こわい、」
多田「 …。」
堀「 …………!(え、え、)」
多田「 でも生きてるって結果だからさ、」
堀「 ええ…?(不安)」
多田「 生きてるっての、生きてる、のって、結果だからさ、」
堀「 結果?」
多田「 そうそうそうだからさ死んでる時のほうが大切なわけよだから、」
堀「 ……、」
多田「 長いわけだからさやっぱり死んでる時のほうがって、俺はね、思うけど、(あ、)私はね、まああくまで私の。」
堀「 ………。」
多田、去ろうとするので。
堀「 別役さん?」
多田「 え?」
堀「 …?」
多田「 あ、散歩。」
堀「 どこ?」
多田「 その、しんだ、その。」
堀「 せまいですよ。」
多田「 …まあでも、長いわけだからさ。」
堀「 ……?(距離が?時間が?)」
別役さんはその散歩へ。
堀「 …別役さん、」
ひとり、多田。
堀「 ……。」
     ゆびをくるくる回してみたり。
堀「 ……、」
     待つ。
堀「 ………。」
     急に堀は道端に坐って、靴を片方、脱ごうとしている。
     ハアハア言いながら、夢中になって両手で引っ張る。
     力尽きてやめ、肩で息をつきながら休み、そしてまた始める。
同じことの繰り返し。
堀「 (またあきらめて)どうにもならん。」
     いつのまにかそこには、
     別府と長井も。
別府「 …。」
長井「 ……。」
     二人は堀を見ていて。
堀「 (気づき)なんだよ。」
長井「 …、」
別府「 ……。」
     堀、また片方、靴を脱ごうとしながら。
堀「 なんだよって。」
長井「 (別府に)知らない人、蘇らせちゃったね。」
別府「 あっつ。」
長井「 え?」
別府「 暑くないここなんか?」
長井「 そー。」
別府「 え、暑くない?何枚きてる?」
長井「 2枚。」
別府「 だからかな。」
長井「 え?」
別府「 え?」
堀「 あっちい。」
長井「 勝手生き返らせてごめんか。」
別府「 え?」
長井「 このひと勝手生き返らせてごめんか。」
別府「 まあでも生き返ったんだし。」
長井「 そうだよね。あやまると逆に、」
別府「 なんかうん、」
長井「 な。」
別府「 な。」
堀「 ま、ふつう逆だよな。」
別府「 はい?」
堀「 や、ふつう逆だよ。殺してごめん、死なせてごめんだよ、普通。な。」
長井「 はい。」
別府「 そうですよね。」
堀「 生き返らせちゃってごめんて、おーーい(笑)おい(笑)」
別府「 あは、あはは(笑)」
長井・堀「 あはははははは(笑)」
堀「 おい(笑)」
3人「 あはははははははは(笑)」
     堀、手をくるくるしたり。
     それを2人、真似たり。
3人「 あはあはあはあはあはははははは(笑)」
堀「 で?」
2人「 ……?」
堀「 で?」
     間
長井「 どうしよう。」
別府「 …。」
長井「 どうしよっかな。」
堀「 な。」
長井「 知らないひと生き返らせちゃったわけだからな。」
別府「 うん。」
     間
堀「 な。」
長井「 殺すわけにもいかねえし、」
別府「 (同時)ちょ(っと)」
堀「 な。」
     間
堀「 結果だかまあな。」
別府「 え?」
堀「 だか結果だかなあまあ生きてってのわあさ。」
別府「 ああ、すいません。」
長井「 いません。」
堀「 きほん死んでっでわけだかあさあーってーさっきべつやくさんがゆってたおー、」
長井「 すません、」
別府「 別役さん?」
堀「 え?」
別府「 別役さんて?」
堀「 知ってる?知ってっか?」
長井「 別役さん?」
堀「 実、実さん。」
別府「 実って?」
堀「 実。み、の、る。(漢字を書いて)」
長井「 み、」
別府「 実?あの?あの別役の実のこと?」
堀「 別役の実(みのる)…。(考えて)」
長井「 …。」
堀「 (考えた結果)そー。」
別府「 死んだですよね?」
長井「 え?」
別府「 死んだですよね別役さんて、」
堀「 そうなんだけどねー。」
長井「 知り合い?」
堀「 なんかねーー。」
長井「 え、別役実って死んだの?」
別府「 しんだしんだこないだ。」
長井「 え、コロナ?」
堀「 おいいい!あ(私は)おいいいいいい!」
     驚の間
別府「 不謹慎だ」
堀「 (かぶって)不謹慎だぞおおおお(怒)!」
2人「 …(驚)!??」
長井「 なに?」
堀「 あれえ?あれえええ(不安)?」
長井「 はあ?」
堀「 不謹慎じゃなくなってる…!アタシ不謹慎じゃなくなってる…!!」
別府「 死にましたよ、別役実。」
堀「 さっきまでここにいたんだよ…!」
長井「 誰?」
堀「 実いたんだよここにさっきまでここに…!」
別府「 さっき?」
堀「 いたってここに!」
別府「 は?」
堀「 は?」
別府「 え?」
堀「 待ってる。」
長井「 別府、」
堀「 待ってるんだもん。」
別府「 誰を?」
堀「 実を!アタシ実のこと待ってるんだもんここで!」
別府「 …。」
長井「 死んでるってこと?じゃあ、」
堀「 …、」
別府「 え?」
長井「 死んでるってことじゃあアタシたちも。」
別府「 なんで、」
長井「 だってそういうことになるじゃ死んだ実のこと待ってってるって言うんだからここ(で)。」
別府「 ああ。」
堀「 ……。」
別府「 どこいったすか?」
堀「 え?」
別府「 どこいったすか?」
堀「 …散歩、」
別府「 へえ、」
堀「 まあそこにいますけどね。」
別府「 えええ。」
長井「 せまいですから。」
別府「 ああ。」
堀「 …まあでも、長いわけだからさ。」
     堀は座り込み、再び片方の靴を。
別府「 …。」
長井「 …。」
     間
長井「 …。」
別府「 …。」
堀「 (またあきらめて)どうにもならん。」
長井「 …。」
     堀、立ち上がり。
堀「 探してくるわあたた。」
別府「 は?」
堀「 ちょっと、」
長井「 どこに?」
堀「 あっち。」
別府「 え?」
堀「 あっち。ちょっ待ってて、」
別府「 ええええ。」
長井「 …、」
堀「 すぐ戻ってくるから、」
別府「 えええここ(で)?」
堀「 ちょちょすぐすぐす、」
     堀、去る、、、
長井「 ………、」
別府「 …ぺすーーーー。」
長井「 …、」
別府「 …、(行っちゃいましたぬ)」
長井「 まあそこいますけどね。」
別府「 せまいですからぬ、」
長井「 …(ぬ)。」
     間
別府「 …ぺすーーー。」
長井「 ……、」
別府「 ぺそ(んっ)あー、ぺそぺそ。」
     待つ二人。
長井「 …。」
別府「 何考えてる?」
長井「 ん、」
別府「 いまさ。」
長井「 ……、」
別府「 考えてるいまさいまなんか、」
長井「 ………、」
     間
別府「 いまさ、うちら、」
長井「 …え?」
別府「 うちら、さどこかわかんない所でさ、なん、誰かわかんない、ひとさ、しかもなんで待ってんのかわかんないまま待ってる、待ってるよね?」
長井「 ………、」
別府「 しかも生きてるか死んでるかも、わかんないまま、え。」
長井「 別府?」
別府「 長井?」
長井「 別府は別府だよね?」
別府「 たぶん、」
長井「 え?」
別府「 いや、たぶん。」
長井「 え?なんで?別府でしょ?別府は別府でしょ?」
別府「 …、」
長井「 やもて…!」
別府「 別府、」
長井「 やもて変な間やもてよ、、、」
別府「 別府だけども、」
長井「 今別府じゃないでしょ?」
別府「 別府だけども、」
長井「 別府でしょ、、、」
別府「 長井、」
長井「 ………、」
別府「 ………長い、」
長井「 ……………………。」
     短い間
長井「 長い、長い、煙突があって、私と別府は、その、横で、宮地が焼きあがるのを、」
別府「 長井、」
長井「 永い、永い間待って、待ってて、その、登っていく煙の、煙を、スマホで、撮って、せっかくだから晴れろよ今日ぐらい、と思って、折り畳み傘を持って、きた雨はもう、すぐ降りそうで、そのあとみんなの所に戻って、そしたら、みんなもう宮地の骨を箸で拾って、拾っていたからつまりいま外で、私と別府が見ていたあれは宮地ではなくて、誰か、知らないひとで。その骨と箸のスペースはどちらかというと白くて、で、みんな服が黒くて、骨はみな一様にまた白くて、その、場にいるいくつかのその、サークルはみな一様で、黒も白も混ざっちゃえばいいのになんて思ってカフェオレ。その灰色の煙は上、へ、私たちは下で。ぐるぐるとでもそれは上も下も一緒で、結局はおんなじ空に吸い込まれていって、散って、雲になって、広くて、空は広くて。で、宮地よこの後の時間の方が長いんだぜって思って、宮地よ、もともと私たちが生まれてくる前の場所にそこは近いんだぜって思って、回って、ぐるぐる回って、またいつか宮地と私の時間がどこかですれ違うそのときまで、ざまあみろよ宮地って思ってたら横目で、見えた、別府が、骨を拾って、る、フリをしてひとかけら宮地を自分のポケットにしまって、いるのを見てしまって、その、日から私は急に別府と話せなくなって、」
別府「 …長井、」
長井「 時間が経って、」
別府「 別府、」
長井「 と久々に会って、」
宮地「 宮地。」
長井「 を蘇らせてしまって私は、」
宮地「 物語にしないで。」
長井「 と、目の前の、」
宮地「 宮地のこと勝手に物語にしないで。」
長井「 と、」
宮地「 物語は好きくないから、」
別府「 と宮地は、」
宮地「 物語になりたくないから、」
長井「 と、言われ、」
宮地「 物語にしないで、」
別府「 と、」
宮地「 巻き込まないで、」
別府「 と、」
長井「 宮地は、」
宮地「 どうかどうかにかしてこここの回る回るからここからどうかどうかにかしかしてどうかここから…!」
     松井と、石田と。
松井「 ど?」
宮地「 ど。」
松井「 どーーーん。」
宮地「 わああああああああああああああああああああああああああ!」
石田「 ぱやぱや。」
松井「 思い出したっ?」
石田「 だした?ね思い?だし?」
松井「 思い出した?」
石田「 え?」
宮地「 ちょっと、」
石田「 え?」
宮地「 ちょっとだえ、」
松井「 おおうそうそえ、うそ、」
宮地「 うあうああ。」
石田「 は?」
宮地「 えあだした、おもい、」
松井「 なにい?え?」
宮地「 どんか、」
松井「 どんか?どんな、は?」
石田「 ききたい、」
宮地「 …回ってる、」
松井「 ああ?」
宮地「 回ってるまたいま、あ、、、」
石田「 ぴーひゃらぴーひゃら(笑)」
松井「 ぱっぱぱらぱー(怒)」
宮地「 回っとお、」
松井「 あ?」
宮地「 回っとおよこれ、」
石田「 しってる、」
宮地「 あ?」
松井「 回る。」
宮地「 …!」
松井「 何回も何回も、」
石田「 しってる、」
松井「 回る。」
宮地「 回る!」
石田「 回ってる。」
松井「 回る。中野坂上デーモンズの憂鬱、特殊公演、回る。本日は何回もご来場いただきまして何回も本当にありがとうございます。回る。何回も何回も続けます。つまり何回も何回も何回も回り続けます。」
宮地「 どこここ?」
石田「 どこ?」
宮地「 ここ?その?」
石田「 ここ?」
宮地「 その?」
石田「 そう、その、」
宮地「 その?」
石田「 そうその、」
宮地「 …(ん?)そうその?その?んんん?そのその??の?そのの?」
石田「 そう。」
宮地「 (や、)そののどこ、ここそのの…!」
松井「 いま、」
宮地「 …?」
松井「 いま、」
宮地「 …ま?」
松井「 いま、いま。」
宮地「 いま?」
松井「 ……、」
宮地「 今別府。」
松井「 ちがちがちが、(自分は)松井。」
宮地「 …、」
松井「 松井。」
宮地「 いま、ま、、、…今別府。」
石田「 ちがちがちがちがうちが、」
松井「 (同時に)ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゅあ、」
宮地「 (石田に)今別府。」
松井「 ちゃちゃちゃちゃちがちがちが、宮地、まつい、ま、つ、い、」
宮地「 、、、、、ま、つ、い、、、、い、ま、、、、ま、、つ、、、、いまべっぷ!」
松井「 宮地(怒)!」
宮地「 まついっ。」
石田「 (自分は)…?」
宮地「 いしだ、」
石田「 そう。」
宮地「 あえ?(なんでわかるんだ…?)」
松井「 (宮地、自分は)…?」
宮地「 まつい、」
石田「 (自分は)…?」
宮地「 いしだ、」
松井「 (おまえは)…?」
宮地「 みやち。」
松井「 (ここは?)…、」
宮地「 …いま、」
松井「 そう。」
石田「 そうその、」
松井「 いま。」
宮地「 そのの、いま、」
石田「 …そう。」
宮地「 ……、」
     間
松井「 それだけわかってたら大丈夫。」
宮地「 いま?」
松井「 そうそれだけ、それだけわかってたら絶対に大丈夫だか、」
石田「 絶対に?」
松井「 ん?」
石田「 絶対、に?」
松井「 ん絶対はな(い)か、な(い)かたぶん、」
石田「 …(笑)」
松井「 ほとんど?」
石田「 たぶん?」
松井「 な、」
石田「 だいたい?」
松井「 ほぼほぼ?」
石田「 …、」
松井「 だいたい?」
石田「 …(まあ、うなづく)」
宮地「 …?」
松井「 まあ大丈夫いまが、いまだって、いまがいまだってことをわかってたらまあまあ大丈夫、」
石田「 …(笑)」
松井「 まあまあ大丈夫だか、」
宮地「 …不安っ、」
多田「 (何かを笑いながら)あっはっはっはっは…(笑)」
宮地「 ………(不安)!」
     多田が立っていて。
多田「 ……(きょろきょろ)」
3人「 …、」
多田「 …ああ、(こんちわ)」
     多田は探していて、
多田「 ……あ、れえ……?」
3人「 ……、」
多田「 ……失礼ですが、」
宮地「 あ?」
多田「 いえ、」
宮地「 ……、(不安)」
多田「 あ、いえね、この辺りでさっき私ひとを待ってたんです、」
宮地「 ああ?」
多田「 失礼ですがどなたかご存知ありませんか?」
宮地「 誰だおまえ、」
多田「 いやあ女の人がここにね、二人いたと思うんですが、」
宮地「 誰だおまえ、」
多田「 いえすいません、………?(松井・石田を見て、あれえ)…?」
石田「 いまですか?」
多田「 いえ、さっきの話なんですが。」
松井「 ここはいまですよ。」
多田「 ええ?」
松井「 ここはいまですよ、さっきじゃなくて。」
多田「 ああそうでしたか。」
松井「 はい。ここはいまなので、さっきの話はちょっと。」
多田「 ああーーどうもすいまてん。しっつれいしました、ついつい。」
松井「 いえいえ。お気持ちはわかりますから、似てますよね。いまと、さっきと。」
多田「 そうなんですよ、なかなかええ、そうでしたか。見分けがつかなくて。」
松井「 そうなんですよ、ほとんど一緒なんですよ。」
石田「 ほとんど?」
松井「 な、」
石田「 だいたい?」
松井「 ほぼほぼ?」
石田「 …、」
松井「 だいたい?」
多田「 あっはっはっはっはっは(笑)」
松井「 ね?」
多田「 じゃあーいまも(笑)?」
松井「 ええ、違うでしょ?」
多田「 ああ。」
松井「 違うでしょ?あなたがいま笑っていた今と、あなたがいまああって言っていた今と、いまと。」
多田「 ……。」
     間
松井「 わかりますか?」
多田「 わかりませんねえ。でも、いまはいまなんですねえ。」
松井「 いまなんです。」
多田「 でもそれいまももっと大きなものに突き動かされてるってこと気付いてないから。」
宮地「 大きなものってえ?」
石田「 宇宙?」
多田「 さあ。」
石田「 宇宙?」
多田「 …?(みあげて?)」
石田「 …ひろいですからね。」
多田「 ええ。」
松井「 …宇宙じゃないですよ、いまですよ。」
宮地「 …あん、回ってる?」
多田「 そうねー。」
宮地「 回してる?」
多田「 ああ?」
宮地「 …いま、」
多田「 …?」
宮地「 今別府?」
多田「 ええ?」
石田「 別役さん?」
多田「 え?」
石田「 あなた別役さんじゃないですかもしかして。」
多田「 ええ?」
石田「 別役実さんじゃないですか?」
松井「 ええええ。別役実さん、別役実さんてあの別役実さんのことですか?」
石田「 それ以外に別役実ってなんかありますか?」
宮地「 ちょ、」
松井「 チャンピオンじゃなくて?」
石田「 チャンピオン?」
宮地「 回ってる…!」
松井「 別役実選手権のチャンピオンじゃなくて!?」
石田「 別役実選手権ってなんなんですか!」
宮地「 また回る…!」
多田「 死にましたよ。」
松井・石田「 ええええええ?」
多田「 私、死にましたよ。」
石田「 やっぱり別役さん。」
松井「 どーーーーーーーーーーーーん!」
宮地「 わあああああああああああああああああ!」
石田「 ほら別役さんです。」
松井「 あなた、えええ?別役、別役実ですか?」
多田「 そうです。吾輩は別役実である。」
石田「 ふざけないでくださいよ。」
宮地「 また回る!また回る!また回る!また回る!」
多田「 (かぶって)吾輩は、」
石田「 やめてくださいよそれはまた別の芝居じゃないんですか?」
宮地「 わあああああああああああああああ!」
松井「 別役さん死んだんですか?」
多田「 そうなんですよ。死んだんですよ私。」
石田「 コロナでですか?」
松井「 ちょっといっかい芝居止めます。」
宮地「 いま!」
松井「 …!」
宮地「 いまですよ!」
松井「 ………、」
多田「 じゃましないでくださいよ、いま、気持ちよく、回ってるんですから。」
宮地「 それはいまじゃないです、」
多田「 ええ?」
宮地「 それはいまじゃないですよ、」
多田「 ええ? いまですよ。」
     宮地は手で円を描き、
宮地「 いまじゃないです、いまじゃないです。」
     やがてそれはメビウスの、
多田「 いいえ、いまですよ。」
     輪で。
宮地「 いまに、いまはないんです。いましかないんです。私たちにはいましかないんです。」
松井「 覚えてますか?」
     短い間
松井「 別役さん。」
宮地「 …?」
松井「 覚えてます?」
多田「 …?」
松井「 (多田に)私のこと。」
     間
多田「 …ああ。」
松井「 神戸で、」
多田「 ああ~…」
宮地「 あ?」
多田「 あ!」
松井「 神戸で、劇団で、お世話に」
多田「 谷田さん?」
松井「 松井です。」
多田「 まつい?」
松井「 松井、」
多田「 …松井さん?」
松井「 ま、つ、い、」
宮地「 今別府!」
多田「 ちょっと、」
松井「 松井です、ま、つ、」
宮地「 今別府!今別府!」
多田「 ピッコロ!?」
松井「 どーん!」
宮地「 わああああ!」
多田「 あああ~!ピッコロで!ピッコロ劇団で!」
松井「 ちがいます。劇団神戸アルカリ乾電池です。」
多田「 そうでしたか。」
松井「 そのせつは。」
多田「 劇団神戸アルカリ乾電池の方でしたか。ぱやぱや。」
松井「 別役さんの、私別役さんのその、不条理演劇の世界に憧れてその劇団神戸アルカリ乾電池に、」
多田「 不条理演劇ってなんなんでしょうか。」
松井「 はいー?」
多田「 不条理演劇ってなんなんでしょうか。」
松井「 ……事柄の、筋道が、その、立たない、条理に反した、演劇の、ことじゃないでしょうか?」
多田「 こういうことですか?」
松井「 はいー?」
多田「 こういうことですか?」
石田「 あなたどこなにあなに目線ですか。」
倉木「 みてますよ、」
石田「 え?」
倉木「 (石田を)あなたのこと、」
石田「 きも、」
倉木「 アナタのこともですよ、」
松井「 ええ?」
倉木「 こう、」
石田「 どこから?」
倉木「 全体を、前から、」
松井「 ええ?」
倉木「 上から、」
松井「 えええ?」
倉木「 うしろから。」
石田「 見えてるんですか?」
倉木「 そう、見えてるんです。」
松井「 神様ですか?」
倉木「 はい?」
松井「 神の視点ですか?あなたのそれは。」
倉木「 あーそうかもしれませんね。」
松井「 演劇の神様ですか?」
多田「 ええ?」
松井「 別役さん、死んで、演劇の神様になったんじゃないですか?」
多田「 あっはっはっは(笑)でもそれ神ももっと大きなものに突き動かされてるってこと気付いてないから。」
宮地「 大きなものってえ?ああああ!」
石田「 宇宙?」
多田「 さあ(笑)」
石田「 宇宙?」
多田「 …?(みあげて?)」
石田「 …ひろいですからね。」
多田「 ええ。」
松井「 …宇宙じゃないですよ、いまですよ。」
宮地「 …ああああ!回ってる!」
多田「 そうねー。」
宮地「 回ってる!回ってる!いまあああああああ!いままあああああ!」
堀「 戻してもいいですかー?」
多田「 え、」
宮地「 (同時に)こおおお!」
堀「 話をもどしてもいいですかー??」
多田「 そのぐるぐる…(やまたくださいよ~)」
堀「 演劇を戻します。」
多田「 ははははは(笑)」
堀「 演劇を戻します。」
多田「 ぱやぱや。」
松井「 別役さんの、私別役さんのその、不条理演劇の世界に憧れてその劇団神戸アルカリ乾電池に、」
多田「 演劇ってなんなんでしょうか。」
松井「 はいー?」
多田「 じゃあそもそも演劇ってなんなんでしょうか。」
松井「 ……、」
多田「 なんなんなんで私たちこんなせまいところでこんなことしてんでしょうか。」
石田「 なんなんなんでってなんなんなんでもいいじゃありませんか。」
多田「 なんなんなんなんなんなんであなたは座っているんですかいきなりそこに。」
石田「 そこってどこですか?」
     石田はいつのまにかイスに座っていて。
多田「 そこってのはそこですよいきなりアナタ、」
石田「 いきなりって私さっきから座ってますよここに。」
多田「 さっき?ここに?」
松井「 ここはさっきじゃなくていまですよ。」
石田「 いま?」
宮地「 今別府!」
松井「 ここじゃなくてさっきはいまです。」
宮地「 今別府!回ってる!」
多田「 なんなんなんですか?」
石田「 なんなんなんですかってなんですか、表現ですよ。」
多田「 表現てなんなんなんなんですか。」
石田「 なんなんなんなんですかって我々は、我々は、我々は表現者だ。」
多田「 我々は、」
石田「 我々は、我々は表現者である。」
多田「 我々は、我々はどうして、こんなことを、我々は、するんだという、するんだという疑問を我々は、何度も何度も出されてきた出してきた出して出されてきたそしてそれに、対する、解答も、そのたびにそれらしく用意されてきたのであるがしかし、しかしそれらのいずれらも、『人類にとっての演劇』という、根源的な事情をゆるがすものには、根源的な事情をゆるがすものにはならなかったのであるつまりそうしたなかで、『演劇は、かくあるべきものであるからかくすべきである』という、考え方が、数多の、数多の星の数の如く、提出されてきたのであるが、そのいずれもが、遂に、我々は、演劇を、演劇たらざるものにすることは我々は、我々には出来なかった、ということである我々は。」
松井「 ああ、」
多田「 我々は、」
松井「 あああ、」
多田「 …?」
松井「 ほら。」
     と、松井は腹から本を出し。
松井「 それ、ここ(めくり)あれ、ここ、ほら、」
多田「 …?」
松井「 ほれ8ページ、ね、ここ。」
多田「 吾輩の?」
松井「 そうです。」
多田「 舞台を遊ぶ吾輩の。」
松井「 その言葉にどれだけ救われたことか、かアナタのそ、その言葉に、に見てください、ほら、らサイン、らほらっ。」
     松井の『舞台を遊ぶ』には別役氏のサインが。
松井「 ほら!(みんなにみせる)」
多田「 ……、(それを少し読んで)」
松井「 どれだけあなたの言葉に私が別役さんあなたの言葉にどれだけ!どれだけ救われたと思ってるんですかああ!ど!」
多田「 ……、(読んでいて)」
松井「 どーーーーーーーーーーん!」
宮地「 長い、、、」
多田「 …過去じゃないですか、まあでもこれは。」
松井「 ええ?」
宮地「 長いよ…、」
多田「 アナタ、言ってることが、さっきから、過去の話ばかりじゃありませんか?」
松井「 過去?」
宮地「 長い、」
多田「 そうです。アナタいまだいまだというわりに、さっきから、アナタが言ってる話はほとんど過去の話ばかりじゃありませんか?」
石田「 ほとんど?」
多田「 な、」
石田「 だいたい?」
多田「 ほぼほぼ?」
石田「 ほとんど?」
多田「 まあまあ。まあまあ過去の話ばかりじゃありませんか?」
松井「 いまですよ。」
宮地「 長井?」
石田「 かこ?」
多田「 そう、いまではなく、かこ。」
松井「 さっきじゃなくて?」
宮地「 さっき?」
多田「 そうさっき、アナタがいったように、いまではなく、かこ。」
石田「 かこ?」
多田「 私は、先に、行きたいのかもしれません。」
松井「 …どこですか?」
多田「 先です。」
宮地「 先。」
多田「 先に。」
松井「 先ってどこですか?」
多田「 わかりませんよそれは。」
松井「 ええー?」
多田「 先ですから。」
松井「 ……、」
多田「 先は先ですから。どこへ向かえばいいかなんて、それはわかりませんから。」
石田「 …。」
多田「 演劇の先です。」
     間
宮地「 さき。」
多田「 (そう、)先ですから。」
宮地「 …さき、」
長井「 宮地、」
宮地「 さき!」
長井「 宮地!」
宮地「 どこ!どこお!」
石田「 かこ?」
渡「 またそんなアナタ、」
石田「 かこ?」
渡「 そんなアナタ別役実みたいな顔して。」
石田「 顔?失礼な!顔?」
渡「 ほらまたそんな!」
石田「 し!失礼な!よしてくださいよ!わ私のどこが別役実みたいな顔してるって言うんですか!」
渡「 いやしてるじゃありませんかほら別役実みたいな顔!」
宮地「 どこお!」
石田「 がですか!」
宮地「 長井!どこお?」
長井「 ここお、」
宮地「 ながいさき!」
多田「 先。」
長井「 ここに!」
宮地「 ながい!ながいさき!」
渡「 実じゃないですか!」
長井「 ここだって!」
多田「 長い、」
別府「 長い、、、長い、煙突があって、私と長井は、その、横で、宮地が焼きあがるのを、」
宮地「 ながい!」
別府「 永い、永い間待って、待って、」
隅「 待ってるんです。」
松井「 ええ?」
隅「 待ってるんですけどアタシ、あれ?ここで。」
松井「 なにを?」
隅「 いや、」
一宮・堀「 私でそ?(座ったまま)」
多田「 はっはっはっはっは(笑)ぱやぱや。」
松井「 このおふたりを、待ってるんですか?」
隅「 そうなんです。その人と(一宮)、その人を(堀)、待ってるんですけど、」
一宮「 せまいですから。(座ったまま)」
堀「 せまいですからね。(座ったまま)」
多田「 でもまあ、長いわけだからさ(肩を)」
隅「 うあ、あああああ、、、(振り払い)触んないでください!」
多田「 いや長いわけだから、」
宮地「 ながい!さき!」
長井「 ここだってば!」
別府「 長い、、、長い、煙突があって、私と長井は、その、横で、宮地が焼きあがるのを、」
隅「 (続)なんか!生理的に!無理!」
多田「 (続)そんなっ急に…!」
堀「 待ってるんですけど。」
松井「 ええ?」
堀「 待ってるんですけどアタシ、あれ?ここで。」
松井「 なにを?」
堀「 いや、」
一宮・隅「 私でそ?(座ったまま)」
多田「 はっはっはっ(笑)ぱやぱや。」
松井「 いま、さっきこの人、待ってましたよ、アナタのことを。」
堀「 そうなんですよね。で、その人(一宮)、アタシのこと待ってるんですけど、」
一宮「 待っててくださいね。(座ったまま)」
隅「 そこで待っててくださいね。今行きますから(座ったまま)」
宮地「 どこに!」
長井「 ここだってば宮地!」
別府「 せまいですから。」
松井「 せまいですからね。」
多田「 (堀の肩を叩き)空は広いですけどね。」
堀「 きも、」
渡「 (石田に)あ、ほらまた!別役実みたいな!」
石田「 どこがですか!」
渡「 顔顔!」
石田「 よしてくださいよ!どこがですかちょっと!」
渡「 ほらほらほら!それえ!」
石田「 ちょっとみなさん!みなさん!」
     一同。
石田「 みなさん聞いてくださいよ!」
渡「 …!」
石田「 この方がね!さっきから私のこと!」
多田「 さっき?」
宮地「 さき!」
長井「 ここに!」
別府「 せまいですから!」
松井「 (かぶって)さっきじゃなくていまですよ!」
石田「 聞いてください!別役!別役実だって言うんですよ!アタシのことをおおお!」
渡「 いやまっあなたを別に別役べべっつに別役み別の役のみのややこしい実だとは思ってないですよ!顔がね!顔がね!もしかして!もしかしてもしかしたら似てるかもしれないなあって!ごめんなさい!にてないんですよ!ごめんなさい!ごめんごめんごめん!ほんとごめんなさいは別に別別べ、ややこしい!べ別役さんんに似てないんですよ!実は!あ!実は!あ!ややこしい!」
一宮「 別役さん、比べてみればいいじゃないですか。」
渡「 いや似てないんですよごめんなさい別に!」
一宮「 おら。」
渡「 別役さんには普通にごめんなさい!」
多田「 えええ~。」
一宮「 …!(なぐる)」
多田「 いってぇな、」
渡「 勢いでゆっただけで、」
松井「 そうですよ比べてみればいいじゃないですか!」
渡「 あのだかすいません、」
     皆、一斉に「比べてみればいいじゃないですか!」と騒ぎ出す。
多田「 …わかりましたよ、」
石田「 …、」
渡「 似てないですよ。」
多田「 わかってますよ。」
     多田、横に並ぼうとするが、
石田「 …。」
     石田は座っていて、
多田「 立ってくださいよ。」
石田「 …。」
多田「 立ってくださいよアナタ比べられないじゃないですか顔を。」
石田「 アナタがしゃがめばいいじゃないですか。」
多田「 立つ方が楽でしょう?」
石田「 しゃがむ方が簡単じゃないですか。こうでしょ、こう。(動き)」
多田「 立つだってこうじゃないですか。(動き)」
石田「 立つはプラスだから、しゃがむはマイナスじゃないですか。高い所から低い所にじゃないですか。」
多田「 それじゃあ見えないじゃないですか後ろのほうまでアナタと私が似てるかどうか顔が。」
渡「 似てないですよ。」
多田「 わかってますよ。」
石田「 ……。」
多田「 アナタなんでそんなにかたくなですか。」
石田「 はい?」
多田「 かたくなに立とうとしないんですかアナタ何で。」
石田「 …自由じゃないですか私の。」
多田「 なんか意味があるんですか座ることに。」
石田「 立とうが座ろうが私の自由じゃないですか。」
多田「 意味があって座ってるんですか?」
渡「 用事ってそれですかもしかしてそれが。」
多田「 用事?」
渡「 アナタの用事って座ることだったんですかそこに?」
石田「 …用事?」
渡「 ……、」
石田「 用事が必要ですか?」
多田「 …。」
石田「 何か用事が必要ですか私がここに座ることに。」
多田「 じゃあ意味はないんですか。」
石田「 意味が必要ですか。」
多田「 不条理ですか。」
松井「 …。」
多田「 これが不条理ですか?」
松井「 ……。」
     誰も答えなくて。
石田「 表現ですよ。」
     間
石田「 (私は)表現の自由ですよ。」
桜井「 死にましたよ。」
     間
桜井「 死にましたよ。」
一宮「 別役さんがですか?」
桜井「 いえいえ、別役さんより先に。」
石田「 ええー?」
桜井「 死にましたよお。」
一宮「 表現の自由がですか?」
桜井「 ええ、覚えてませんか。」
一宮「 コロナでですか?」
上田「 ちょっとあなたねえ、」
隅「 不謹慎ですよ。」
堀「 (手を挙げて)不謹慎ですよ。」
上田「 いっかい芝居止めます。」
堀「 演劇を続けます。」
一宮「 コロナでですか?」
桜井「 いえいえ違います違います覚えてませんかみなさん去年の夏に。」
石田「 私、死んでますか。」
桜井「 ええ。」
上田「 ああそっか思い出しました思い出しました懐かしい、不条理よりも先に、」
隅「 あれそっか蜷川幸雄の前でしたっけ?後ですか?」
石田・宮地「 私?」
長井「 宮地、」
別府「 長井、」
石田・宮地「 しんでる。」
桜井「 そうそう、表現の自由はすでに死にましたよ。」
石田・宮地「 ……。」
     別府が唄うような、唄わないような
宮地「 あれえ?別府が唄っているような、唄っていないような、」
渡「 (二人を見て)あれえ?そういえば似ているような、似ていないような、」
石田「 よしてくださいよ、」
渡「 別役さんとアナタ、そういわれてみれば、、、」
多田「 ……、」
石田「 どこが似てるって言うんですか、、、私と別役さんの、」
渡「 …不条理だとか、不自由だとか、」
石田「 はいー?」
渡「 演劇だとか、表現だとか、」
多田「 巷では、演劇も死にましたしね(笑)」
一宮「 コロナでですか?」
堀「 不謹慎ですよ。」
上田「 そう、不謹慎なんですよ。」
隅「 不謹慎ですよ?」
上田「 …?」
一宮「 コロナがですか?」
隅「 いいえ演劇ですよ。不謹慎なんですよ。」
多田「 不謹慎て気持ちはどこから来るんですか?」
隅「 さあ。」
多田「 どこからくるんでしょうか?」
一宮「 あっちじゃないですか?」
隅「 あっち。」
一宮「 こっちかもしれないですけど。」
多田「 どっちからくるんでしょうか。どっちから来るかさえわかっていれば私たちは待つことができるんですが。」
隅「 なにをですか?」
多田「 なにって。」
一宮「 不謹慎をですか?」
多田「 そうですね。」
隅「 待ちますか。」
     待つ。
金井「 すいません。」
堀「 あ、別役さん。」
多田「 …??」
金井「 びっくりしています。」
多田「 (アナタ)不謹慎ですか?」
金井「 いやアナタたちがまだずーっと別役さんの話をまあだ続けていた事に私正直驚愕しています。」
多田「 へへへ(照)」
金井「 頭おかしいんですか?」
多田「 …(笑)」
金井「 えええ? …恐いですよ私は。だってこんな別役実の話ずーーっとアレしててアレしてますけどねえこれ別役実知らない人からしたらこれほんとこれずっと何の時間なんですか!?」
倉木「 それは心配しなくていいでしょう。」
金井「 はいー?」
倉木「 心配しなくていいですよそれは。」
金井「 あなた、」
倉木「 だって、」
金井「 なんてこというんですか。」
倉木「 だって別役実のこと知らない人は、こんなときに、こんなところこないですよ。」
金井「 …そういうもんですか?」
倉木「 そういうもんですよ。」
金井「 ……ってかせまくないですか??」
みんな一斉に「せまい!せますぎるじゃないか!」と騒ぎ出す。
一宮「 私!思ってましたせまくないですか?」
上田「 せまいですよ…!だからさっきからゆってるじゃありませんか!せまいって!」
金井「 こんなせまい場所に、、、こんな!集まって…!」
一宮「 私思ってましたせまくないですか??」
金井「 せますぎますよ!こんな密集して!一番よくないですよこういうのが!」
倉木「 しょうがないですよ。」
金井「 なんですか?」
倉木「 しょうがないじゃないですか。」
金井「 しょうがないってなんですか?なんかあるんですか。」
倉木「 なんかってまあ。」
金井「 まあってなんか、なんかってまあなんか用事があるんですか?ここで?」
渡「 用事?」
石田「 用事があるんですよ。」
渡「 用事ってなんなんですか。」
石田「 なんなんですかじゃないですよなんなんなんですかあなたの方こそ急にそんな。」
渡「 なんなんなんですかってなんなんなんなんですか。」
石田「 なんなんなんなんなんですかってなんですか。」
倉木「 お別れ会なんですね。」
金井「 ……はいー?」
倉木「 (手を合わせて)お別れ会なんです。」
金井「 お別れ会?ここがですか?」
倉木「 ここも、あそこも、そこも。」
一宮「 へええ、」
隅「 せまいですから。」
堀「 せまいですからね。」
多田「 空は広いですけどね。」
隅「 きも、」
堀「 しつこ、まじできも、」
多田「 …、」
堀「 くさ、」
渡「 …、」
石田「 ……。」
金井「 お別れ会って葬式ですか?」
長井「 …、」
宮地「 …!」
多田「 …あっ、わったしのですか(笑)?」
松井「 ど?」
多田「 わったしの葬式でしょうかもしかして?」
松井「 別役さんの?」
多田「 だって死んだんで私(笑)」
松井「 どーん。」
宮地「 ……、」
多田「 私の葬式ですか?」
上田「 多田?」
多田「 …?」
上田「 多田だよね?」
     間
多田「 ああ、でも、まあ、多田、」
上田「 まあ、多田?」
多田「 まあ、」
上田「 沖縄いったんじゃなかった?」
多田「 ああ、」
上田「 え、沖縄いってなかったっけ?」
多田「 いいじゃんそれもうさあいまはあ、」
上田「 いやでも沖縄いってなかったっけいま、」
多田「 あだかいいじゃんいまそれいまははあさあさあさだか、」
松井「 え、ん?」
上田「 多田?」
松井「 すいまえん、ちょ、え、あ、(このひと)別役さんですよね?」
多田「 あ、」
上田「 別役さん?」
松井「 別役さんですよね。」
上田「 別役さんって、別役実さんのことですか?」
松井「 ええ。それ以外に別役実ってなんかありますか?」
上田「 いや、多田ですよ。この男は。」
松井「 はい?」
上田「 多田です。」
     間
松井「 多田?」
上田「 これは多田です。」
松井「 多田?え、」
上田「 はい。ただの多田です。」
松井「 ただの多田?」
上田「 多田の多田です。」
松井「 別役さんじゃないんですか?」
上田「 多田ですよ。ただの。」
桜井「 あの横槍すみません。」
隅「 槍もってませんけどね。」
桜井「 あじゃあ横からすみません。」
隅「 横じゃないですけどね。」
桜井「 (舌打ち)ちっ。」
隅「 …。」
桜井「 別役さんってこの人のことですよね。」
と、スマホに別役さんの顔。みんなで見比べる。
多田「 ……。」
上田「 ほら全然違うじゃないですか。」
松井「 ええええ?」
金井「 違う顔だ。」
桜井「 いやでも微妙に似てないですか。」
堀「 ほんとだ。」
隅「 はっきりしねえな、、、はっきりしてくださいよ顔ぐらい、、、」
多田「 …。」
上田「 でもこの男は多田ですよ。」
松井「 えええ?」
上田「 多田ですよ。なあ多田?」
多田「 多田です。」
一同「 (低い)ええええええええええええ。」
上田「 気を付けた方がいいですよ。女を騙すんです。」
多田「 ちょっと人聞きの悪い、」
上田「 地元にいられなくなってそれで、で、沖縄に逃げたんですよ。」
多田「 今それはいいじゃないですか。」
上田「 女を騙すんですよ。」
多田「 上田さーん、」
一宮「 アナタも騙されてましたよ。」
上田「 私が?」
一宮「 アナタも。」
上田「 私が多田にですか?」
一宮「 はい。騙されてましたよ。」
上田「 いつ?」
一宮「 だって別役さんだって思ってたでしょこの人のこと?」
上田「 え、別役さんじゃないんですか?」
多田「 多田です。」
松井「 最低じゃないですか。」
     みんな一斉に「多田の悪口」を言って大騒ぎ。
多田「 ちょちょちょちょちょちょっちょっちゅね!ちょっちゅね!ちょっちゅ待ってくださいよ!」
堀「 しねよ!」
多田「 死んでますよ!誰ですか!言いすぎですよ!」
誰も名乗り上げず。
松井「 でも別役さんじゃないんですよね!?」
多田「 ごめんなさい弁解させてください弁解させてください、」
松井「 あ!見てください!私がもらった本のサインも!」
金井「 (見て)ほんとだ。」
松井「 ね。ほらみて。」
隅「 (みて)あ、ほんとだ。別役実じゃなくてよく見たら、蓮池薫になってる!」
渡「 意味が分かりませんね。どうなってるんですか?」
石田「 え、蓮池さんなんですか?」
     みんな一斉に「蓮池さんなんですか?別役さんなんですか?」と大騒ぎ。
多田「 ちょちょちょちょちょちょっちょっちゅね!ちょっちゅね!ちょっちゅ待ってくださいよ!」
堀「 しねよ!」
多田「 おーい!だれだ!だれだ! おい! 言いすぎだぞ! 不謹慎だぞ!」
堀「 …(不謹慎ですよ・口パクで)」
多田「 弁解させてください。いいですね。弁解しますよ。弁解します。まず、私は、蓮池薫さんではありません。これはもう完全にそうです違います。蓮池さんではありません。で、そして、正式に言うと、正式な、公式な意味で言うと、私は、別役実さんでもありません。別の、役の、ではありますが、正式に言うと、別役実さん本人ではありません。」
金井「 正式って」
多田「 (せいして)ここ重要です、ここ、聞いてください、ここ弁解中です、聞いてくださいね、正式な意味では私は別役さんではありませんが広い意味で大枠で言えば私は別役さんです。なぜなら、というか、私は別役実選手権のチャンピオンです。」
一宮「 別役実選手権!?」
多田「 (指でそうです)…!」
桜井「 それはアタシですよ!」
多田「 (せいして)………!あなたは、もしも別役実選手権というものがあったとしたらの架空のチャンピオンですが、私は、モノホンの、そのもしもの本当のチャンピオンなんですそして、私はもうこれ以上は物理的にセリフを覚えることは無理なので、すいませんがお願いしてもいいですか?(渡に)」
渡「 私ですか?」
多田「 ええ、お願いします、セリフを。」
渡「 わかりました。」
多田「 …(ありがとう)」
     と、手を合わせて多田はその場に倒れる。
渡「 ここからは、この人のセリフを、私が話します。」
金井「 ええ?」
渡「 渡加子です。私が話しているときは、さいごにこれは私が話しています、とつけますのでそのつもりでよろしくお願い致します。」
隅「 ややこしい、、、」
渡「 続けます。演劇を、続けます。」
     間
石田「 あなたは?」
渡「 多田です。」
石田「 ……(恍惚と、)」
渡「 ただ、実際は、私は、多田ではありません、それはいま多田が、彼女の、身体を借りて多田のセリフを発しているからとかそういう理由ではなくて、なぜならそれはそれを言い始めると、この『セリフ』という言葉自体がやはり作家の書いたものであり、それ以上でもそれ以下でもないという所から私たちは前に進めなくなってしまうのです。そしてそれはその作家も、神に書かされているという事実に気付いていないだけで、その神ですらもまた、もっと、もっと大きなものに突き動かされているということに気付いてないだけなのです。」
隅「 大きなものってえ?」
宮地「 宇宙?」
渡「 さあ。」
長井「 宇宙?」
     一同、見上げて。
隅「 …ひろいですからね。」
宮地「 …回ってる?」
長井「 そうねー。」
宮地「 長井…、アタシ達…、回ってる?」
長井「 宮地、」
宮地「 アタシ達、」
長井「 そうねー。」
宮地「 回ってるんだね。」
     回る。
上田「 でもだから多田でしょ?」
渡「 …!(ち、ち、ち、と指を)」
上田「 いやだって、多田は多田だっていう、ことでしょ?多田なんでしょ?中身は?多田あ!」
渡「 いや違うんですよ。多田じゃないんです。」
上田「 多田でしょ??」
渡「 多田じゃないんですよ。なぜなら、私は、沖縄へわたり、」
上田「 ほら多田じゃないか!」
渡「 渡です、聞いてあげてください!最後まで!」
上田「 は?」
金井「 いまのは?」
渡「 これは私が話しています、」
松井「 ややこしい!死ぬほどややこしい!」
渡「 死んでます。」
上田「 ただああ!」
渡「 わたり、沖縄にわたり、私は、沖縄にわたり結婚して、」
堀「 結婚?」
渡「 名前が変わったんです。多田ではないんですだから。」
堀「 結婚?」
隅「 誰と結婚したんですか?」
別府「 私です。」
     間
一同「 ………。」
別府「 多田は、私と結婚しました。だから別府です。」
渡「 いま、別府です。」
宮地「 今別府!」
渡「 いま、」
宮地「 (くって)今別府!」
     間
宮地「 今別府!」
石田「 さっきからアナタの話を私ちゃんと聞いていたんですが1秒も意味が分かりませんでした。」
渡「 当然ですよ。あまり深く考えすぎないでください、だって、私だって1秒も意味わかってないんですから(笑)」
金井「 びっくりしています。」
渡「 不謹慎ですか?」
金井「 いや不謹慎とかじゃないですけどアナタこんな1秒も意味の分からない話をしていたっていう事実に私正直驚愕しています。」
渡「 ははははは(照)」
金井「 嗤ってる場合じゃない」
隅「 嗤う別役実、ルッ」
渡「 ははははは(笑)」
金井「 えええ?恐いですよ私は。だってこれずっと1秒も意味の分からない何の時間なんですか!?」
倉木「 お別れ会ですよ。」
金井「 はいー?」
倉木「 お別れ会ですよいまは。」
金井「 それはさっきの話じゃないんですか?」
宮地「 さき、ながいさき。」
長井「 宮地。」
松井「 ここはいまですよ。」
桜井「 ここですか。」
上田「 ここも、あそこも、そこも。」
一宮「 へええ、」
隅「 せまいですから。」
堀「 せまいですからね。」
石田「 空は広いですけどね。」
宮地「 長い。」
別府「 長い、長い、煙突があって、」
桜井「 (堀に)戻した方がいいんじゃないですか?」
堀「 え?」
桜井「 これで(くるくる)戻した方がいいんじゃないですか?」
堀「 ああ。」
渡「 進められますか?」
堀「 え?」
渡「 前に。」
桜井「 演劇をですか。」
渡「 ええ、そうです。1秒も意味の分からない、その1秒の、先に進められますか。」
桜井「 先ですか。」
宮地「 さき、」
長井「 …、」
渡「 その演劇の先に。」
別府「 長い、長い、煙突があって、私と長井は、その、横で、宮地が焼きあがるのを、」
宮地「 長井、」
別府「 永い、永い間待って、待ってて、」
倉木「 お別れ会ですよ。(松井に)」
松井「 ああ。」
倉木「 お別れ会です。」
松井「 お葬式でいいんじゃないですかね。」
金井「 私もそう思います。」
別府「 その、登っていく煙の、煙を、スマホで、撮って、」
倉木「 なんですっけ、いっぱい。」
石田「 あ、表現の自由と、」
桜井「 演劇と、」
多田「 別役さんと、」
松井「 死んだでしょアナタ。」
多田「 みんな死んでますよ。」
別府「 せっかくだから晴れろよ今日ぐらい、と思って、」
宮地「 宮地と、」
一宮「 みんな、」
隅「 あと全員?」
上田「 あと、その、」
別府「 折り畳み傘を持って、きた雨はもう、すぐ降りそうで、そのあとみんなの所に戻って、」
長井「 そのの、」
倉木「 お別れ会。」
渡「 もう葬式でいいんじゃないすかねやっぱり。」
別府「 そしたら、」
石田「 …回ってる、ずっと回ってる…」
堀「 演劇を、進めます。」
     間

     やがて石田が起立する。
石田「 門出の言葉、からの門出の言葉、からの、」
全員「 門出の。」
宮地「 ミント味のカレーカレー味のミント、ミント味のうんこ、うんこ味のミント。」
全員「 フルーチェ。」
長井「 作るのに失敗したら向いてない人間には。アナタにはもっと輝く場所があるはずレッツゴー、」
全員「 フリーダム。」
堀「 セリフ砕いて砕いては言葉粉にして擦りにすりすり火で炙る銀色のスプーンはきっと先祖代々、」
全員「 春のまにまに。」
桜井「 あかさたなはまやらはいきしちにうくすつぬえけえけせてせたからやちきにつぬねけねけう、」
全員「 もろこぞキットカットヒント一個。」
別府「 その意味の、囚われの意味の耳の右耳の、」
全員「 中にいる左利きの巨人師匠。」
金井「 の余暇で恐喝される黒い百人の浮かぶスーツ姿のその靴は、」
全員「 新品のジョーダンに塗り込んだマーガリンと、」
上田「 バターの海で待つさすらいの妻、」
全員「 Oh!!ジェニーよ!」
一宮「 お気に入りの傘はウニで作ったマルジェラの光るゲームボーイ自由。」
渡「 どこまでも伸びる耳かきとリップ。」
全員「 ピケ、ジェラートピケ。」
多田「 虚無。」
全員「 グラノーラ。」
多田「 フルーツグラノーラ、甘い誘惑よ、牛乳の代わりに新人の隣人の妊娠と深々とした心身に興味津々と。」
全員「 フルーチェ!Oh!!フルーチェ!」
松井「 こんなにも甘い、詩は、セリフの前にして解き放たれる本来の文字の使徒、しとしとと、」
全員「 死と、しとしとと、詩と。」
倉木「 降る雨。散る桜。春のまにまにまに。」
全員「 先生方には感謝の気持ちでいっぱいです。」
隅「 詩によって戯曲死によって意味よ死によってその意味の死によって荷を降ろし詩によって文字のもともとの物凄く無意味の意味のその意味の。ふいに、」
全員「 Oh!!さだはる!Oh!!その音楽!」
     音楽
石田「 門出の言葉、からの門出の言葉、からの門出の言葉、からの門出の言葉、からの門出の言葉、からの門出の言葉、からの門出の言葉、からの門出の言葉、からの門出の言葉、からの、」
全員「 門出の。」
長井「 長い、長い、煙突があって、私と別府は、その、横で、宮地が焼きあがるのを、」
全員「 ながい。」
長井「 永い、永い間待って、待ってて、その、登っていく煙の、煙を、スマホで、撮って、」
全員「 ピケ、ジェラートピケ。」
長井「 せっかくだから晴れろよ今日ぐらい、と思って、」
全員「 虚無。」
長井「 折り畳み傘を持って、きた雨はもう、すぐ降りそうで、そのあと、」
全員「 振袖とコロナと。」
長井「 そのあとみんなの所に戻って、そしたら、みんなもう宮地の骨を箸で拾って、」
全員「 墜落する飛行船、乗っていた先輩は2個上。」
長井「 拾っていたからつまりいま外で、私と別府が見ていたあれは、宮地ではなくて、」
全員「 光電話安定。」
長井「 誰か、知らないひとで。その骨と箸のスペースはどちらかというと白くて、」
全員「 記憶で、書いたその前歯のない老婆の身長は223センチ、その当時の世界記録で。」
長井「 みんな服が黒くて、骨はみな一様にまた白くて、その、場にいるいくつかのその、」
全員「 その園。」
長井「 そのサークルはみな一様で、」
全員「 はないちもんめ。」
長井「 黒も白も混ざっちゃえばいいのになんて思ってカフェオレ。その灰色の煙は上、へ、」
全員「 私たちは下で。」
長井「 ぐるぐるとでもそれは、上も下も一緒で、」
全員「 一個目、の、金平糖、永遠と。」
長井「 結局はおんなじ空に吸い込まれていって、」
全員「 コブヘイは嫉妬。」
長井「 散って、雲になって、」
全員「 喜ぶヘイト。」
長井「 広くて、空は広くて。」
全員「 使徒、しとしとと、死と、しとしとと、詩と。」
長井「 宮地よこの後の時間の方が長いんだぜって思って、宮地よ、もともと私たちが生まれてくる前の場所にそこは近いんだぜって思って、回って、ぐるぐる回って、」
全員「 回って、ぐるぐる回って。」
長井「 またいつか宮地と私の時間がどこかですれ違うそのときまで、ざまあみろよって思って。」

     私たちは演劇のその先へ行ったとしても、
     またそこで回り続ける。
     ぐるぐると
     ぐるぐると

     ぐるぐると

渡「 本日はご来場いただきまして誠にありがとうございました。」
全員「 回る。」
渡「 終わります。」
全員「 終わる。」
渡「 回ります。どのお客様もお忘れ物のないようお気をつけてお帰り下さい。ご来場本当にありがとうございました。」

     回る

                                            了

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