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音楽の禁じられた世界

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それでも背徳者たちは、地下に潜って秘密のパーティを開くだろう。
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音楽の禁じられた世界

山の無いところに谷が無いように、音の無いところには静寂も無い。
法律の無い世界に犯罪が無いように、モラルの無い世界にはインモラルも無い。

サディストの語源となった、マルキ・ド・サド侯爵。
彼は次々とスキャンダラスな事件を起こし、過激な内容の書物を書いたことで、人生の大半を精神病院と牢獄で過ごした。
快楽から隔てられた牢獄の中で、侯爵は、貴族、平民、奴隷の更に下に、もう一つの階級を作るべきだと主張

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「音楽=尾根」理論

そもそも「音楽」とは何だろうか。

西洋の音楽理論では、「音楽の三要素」という言葉があり、「リズム」、「メロディ」、「ハーモニー」の三つを持ったものが、「音楽」だと定義されている。
実際には、「リズムの無い音楽」や、「ハーモニーの無い音楽」、はたまた「リズムも、メロディも、ハーモニーも無い音楽」というのも存在する。
しかしいずれにしても、「組織付けられて、秩序を与えられた音」が「音楽」だと言え

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人と人とを繋ぐ、最後の砦

音楽について、もうひとつの謎を提供しよう。
同じ曲でも、イヤホンを使って一人でで聴くのと、ライブハウスで百人で聴くのでは、受ける印象が全く違う。
それはなぜか?

人間には元々他人に共感する能力があり、音楽にはその共感を増幅させる力があるからだ。

ひとは、母親の表情を真似ることで、笑顔や怒りの表情を身に付けていく。
両親の会話を聞くことで、言葉を覚える。
元気な人を見ているだけで、嬉しく

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眠りや死の中で鳴り響くダラブッカの鼓動

「音楽の禁じられた世界」というのは、残念ながら、単なる僕の空想ではない。

神奈川県の逗子海岸では、海岸から音楽を締め出すよう、条例の改正がなされようとしている。
海の家店内でのライブ、BGM、ラジカセの持ち込みや、楽器の演奏―――。
ジャンルを問わず、すべての音楽が禁止されるのだ。

それから昨年より、大阪や東京では、風営法違反によって、深夜営業のクラブが次々と摘発されている。
摘発の理

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処女の皮膚を剥いで太鼓を作ったら。

ローマには、A線とB線という2種類の地下鉄しかない。
歴史のある街なので、掘れば必ず何かが出てくるということも関係しているのかもしれない。
骸骨寺(Santa Maria della Concezione) は、A線の Barberini(バルベリーニ)という駅から歩いて行ける。

蜂のオブジェの脇を通って、骸骨寺に入ると、ちょうど納骨堂が開く9時になっていた。
入館料、というか寄付として、一

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ひとの身体を楽器にしないで

「ちょっとー。ひとの身体を楽器にしないでくれるー?」
彼女は僕に苦情を言った。
僕は彼女をその腕の中に抱きながら、無意識に彼女の背中を指で叩いていたらしい。
右手の指がバスドラ、左手の指がスネアとなって、バックビートを刻んでいた。
それはもう、元ドラマーの宿業のようなものだ。

我に返った僕は、
「人の身体は楽器なんだぜ」と、嘯いた。

そう、人間の身体はどこを取っても優れた楽器になり得る。
ボー

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