アイドルのコモディティ化
昔のアイドルは、テレビの中だけの存在であり、実際に近づくことはできませんでした。まさに、アイドルの原義である”偶像”そのものでした。唯一近づくことができるのは、コンサートなどの限られたイベントだけでした。私が中学生の頃の女性アイドルと言えば、山口百恵・桜田淳子・森昌子の三人で、男性アイドルなら、郷ひろみ・西城秀樹・野口五郎の三人でした。もちろん、この六人はテレビまたは、明星・平凡といった芸能雑誌の中の人達でした。
しかし、現在のアイドルは違います。アイドルは、会いに行けるようになったのです。このようなパラダイムシフトを仕掛けたのは、AKBグループなどをプロデュースした秋元康さんです。さすが、目の付け所がシャープです。
昔は高価で手が届かなかったものでも、技術が進歩すると簡単に手に入れることができるようになります。例えば、夏場の氷は昔なら王侯貴族でも手に入れるのが難しかったのに、今なら冷蔵庫があるので簡単に手に入ります。このような大衆化/汎用化/陳腐化のことをコモディティ化と言います。
最近の判り易い例で言えば、ほんの30年ほど前、一般的なパソコンの平均価格はおよそ30万円と、かなりの高級品でした。ところが時代が進むにつれ、パソコンは一気に普及し、それと同時に価格も下落することになりました。今なら当時の1/3の10万円程度あれば、ソコソコのスペックのパソコンが買えます。
もう少し詳しく言うと、コモディティ化とは、製品やサービスについて、性能・品質・創造性・ブランド力などに大差がなくなり、顧客(消費者)からみて、”どの会社の製品やサービスも似たようなもの”に見えるようになった状況、を意味するマーケティング用語です。
アイドルに話を戻しますが、アイドルもコモディティ化しているのです。AKBグループの姉妹グループは日本の大都市圏に常駐していますし、海外にも姉妹グループが存在します。このアイドル達には、会いに行くことができます。また最近は、”地下アイドル”と呼ばれるアイドル達もいます。
地下アイドルとはメディアへの露出(地上)よりも、ライブ活動(地下)を中心に行うアイドルのことらしいです。地下アイドルは、ライブが中心なので元々はライブアイドルと呼ばれていました。地下アイドルは、ファンとの距離も近く、最も”会いに行ける”アイドルです。
さらにYouTubeなどで動画を自由に発信できるようになると、自己プロデュースのお家アイドルも可能です。しかし、アイドルがコモディティ化すればするほど、アイドルの(希少)価値は下がっていきました。
会いたければ会いに行けるアイドルたちですが、私はまだ一人もアイドルにあったことがありません。
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