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アメリカに住んでいた時に、ドライブのついでに”化石の森”に寄ったことがありました。そこには珪化木(ペトリファイドウッド)と呼ばれる樹木(大木)の化石がゴロゴロと横たわっていました。珪化木けいかぼくというのは、樹幹が珪化した植物化石です。樹木が地中に埋もれ、珪酸分を含む地下水の作用により、木質が珪酸におきかえられるためにできると考えられています。

少しだけ詳しく説明します。大昔、何らかの原因で土砂等に埋もれた樹木が地層からかかる大きな圧力を受けます。そうなると、木の細胞組織の中にケイ酸などを含んだ地下水が入り込みます。長い年月を経ると、樹木が原型を変えずに二酸化ケイ素という物質に変化します。そのため、石英や水晶などの石のように固くなります。

日本でも各地で産出されますが、特に兵庫県加東市東条町ではブナ科・メタセコイア属などの珪化木が多く産出されました。しかし、乱獲のため近年は採取されることが減少しているそうです。また、岩手県一戸町にある根反ねそりの大珪化木は国の特別天然記念物に指定されています。かつての筑豊炭田の炭層中で見つかった松岩(石炭になり損なった木)も、珪化木の一種です。

頭髪が無数の毒蛇になっているメデューサ/メドゥーサは、ギリシア神話に登場する怪物で、宝石のように輝く目を持ち、見たものを”石に変える能力”を持ちます。化石の森は、まるでメデューサが辺り一面を石化したような風景でした。珪化木は見た目は殆ど木のように見えますが、触ると冷たい感触が伝わってくるので、「やっぱり石だ」というのがよくわかります。

化石の森は、現実世界とは思えない不思議な空間でした。

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